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成立したGX法の「亡国の法」ぶりが酷すぎる

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
GX関連法の採決に抗議する環境団体のメンバーら 筆者撮影

「GX脱炭素電源法案」が、本日(5月31日)に参院の本会議で採決された。GXとは、「グリーントランスフォーメーション」、つまり、化石燃料中心の経済・社会をグリーン=より環境負荷の少ないエネルギーを中心とした経済・社会へと移行するための変革を意味するのであるが、今国会で成立したGX推進法およびGX脱炭素電源法は、むしろ原発の推進・延命のための法律としての要素が強い。このGX関連法に反対するNGOや市民らが、今月23日に都内で集会を行った。本稿では、同集会の内容を中心に、GXとは名ばかりの原発延命法の問題点をあげていく。

〇GX関連法とは?その問題点は?

 GX関連法に反対する集会は、複数の環境保護団体による「ワタシのミライ」(「再エネ100%と公正な社会を目指す私の未来」)の主催。衆議院第一議員会館で行われ、会場に約100人、オンラインで150人が参加した。

 GX関連法は、昨年7月に岸田文雄首相の音頭取りで発足したGX実行会議が、昨年末にまとめた「GX基本方針」を実行するための法律だ。具体的には、GX推進法と、GX 脱炭層電源法がある。上述の集会で、環境NGO「FoE Japan」の満田夏花さんは、これらの法律を解説。前者のGX推進法については「GX推進法は、経済産業省がこれはGX、脱炭素だと決めたものに対してお金をどんどん流していく、そのために国債の発行していくというもので、GXへの150兆円規模の官民の投資を実現するとあり、その中に原発も含まれています」と言う。もう一つのGX脱炭層電源法案は、原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもので、その最大の問題点として、満田さんは、「原子力基本法に国の責務として原子力の活用等々を入れ込むこと、そして運転期間の延長を含む法改悪です。今まで原則40年、原子力規制庁の許可を得て、1回限り20年延長できるとした原発運転期間を、経産省が決め、やろうとすれば、申請する限り何回でも延長できるということ。ザル法案すぎて言葉もありません」と語る。

 事故リスクを高めることになる老朽原発の運転延長を、原子力規制庁ではなく、原発推進の経産省が行うことの問題について、集会冒頭で発言した辻本清美参議院議員(立憲)は、「20 カ国世界で原発を動かしておりますけれども、主流G7をはじめ全部、規制委員会がやっているんです。それをわざわざ福島の事故を経験した日本が電力会社の申請の窓口をですね、運転延長の窓口を、規制委員会から切り離して 推進側に移し替えるこんなことですね、国際的な主流からもおかしいじゃないか、と(国会で)質問しました」と報告。また、老朽原発の圧力容器が脆くなっていないかの検査(脆化検査)で、検査で使う試験片が、運転40年から60年へと延長する際、適切に検査できない恐れがあるとして、この点を「今後の国会でも追及していく」と述べた。

〇「原発による安価な電力」という幻想

松久保さんのスライド資料より 筆者撮影
松久保さんのスライド資料より 筆者撮影

 原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、「安価な電力を供給する」という原発に対する日本でのイメージは既に世界の状況の変化から取り残された、時代遅れのものとなっていることを指摘。「2030年に原発を新設した場合の(キロワット時あたりの)コストはもともと8.9円だったのが10.3円11.7円と、どんどん値上がりしている。建設費や人件費がかさんだほか、福島第一原発事故の損害賠償費用で値上がりをしている」と語った。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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