AIカンファレンス、生成AIを活用した映画制作へ警鐘と推奨 釜山映画祭ACFM
アジア最大級の映画祭『第29回釜山国際映画祭』に併設される映画マーケットACFM(Asian Contents & Film Market)。映画産業に関する各種フォーラムが開催されたなか、今回のフォーラムのメインになったのは、映画界でもホットなテーマである生成AIに関する「AIカンファレンス」。マーケットのメインステージで半日かけて実施され、満席となった会場で講演とパネルディスカッションが行われた。
生成AIによるVFX映像はすでに多くのシーンで使用されている
Stability AI社のジェリー・チー氏によるキーノートスピーチでは、2023年からはじまった本格的な生成AIの活用による、アジアのコンテンツ産業のイノベーションをテーマに、従来の映画制作ワークフローに起こす革命、それによる国際的なIPビジネスの流れ、および新たなビジネス戦略などが全般的に語られた。
続くセミナーに登壇した韓国のクリエイターや技術開発者らは、それぞれの立場から生成AI活用の実例を紹介。すでにVFXにおける生成AI活用は進んでおり、映画やドラマ、ミュージックビデオ、ゲームなどの背景映像のほか、ミュージカルなどの舞台映像といった多くのシーンで生成AIによる映像は使用されている。
さらに、広告やファッション業界での活用も進んでいるとし、その事例となる作品映像をスクリーンに映しながら、キャラクター生成や映像エフェクトなど制作面におけるさまざまな生成AIのクリエイティブ活用パターンのケーススタディを行った。
一方、CJ ENM・知的財産法部門ゼネラルマネージャーのファン・ギョンギル氏は、EU、韓国、台湾、日本それぞれの著作権管理や補償制度の法整備の現状をパネルで示し、「いままさに生成AIにまつわる権利に関する戦争が世界で起こっている」。韓国では法制化の過程にクリエイターが参加していないことを課題として挙げ、この先3~4年が非常に重要な年になると言明した。
クリエイターのコントロールとエディタビリティが重要
制作面で彼らが声を揃えるのは、生成AIだけで映画をすべて作れるわけではないということ。
そして、生成AIによる新しいクリエイティビティとクリエイティブワークには、それを扱うクリエイターのコントロールとエディタビリティが極めて重要であり、すべてはクリエイター次第とし、彼らおよび企業には他者の権利や法律を遵守する責任がともなうことも説いた。
生成AI自体は、クリエイターの作業負荷を軽減させることでクリエイティブワークをサポートし、表現の幅を拡張するものとして、積極的な活用を推奨した。
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