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V・Tポイント統合 SNSでは反発の声も

山口健太ITジャーナリスト
VポイントとTポイントが統合で基本合意(プレスリリースより、筆者撮影)

10月3日、「Vポイント」と「Tポイント」の統合についての基本合意が発表されました。経済圏争いが激化する中、それぞれの強みを活かせるタッグに見えますが、SNSでは反発の声のほうが多いようです。

それぞれの強みを活かす統合か

2003年に始まったTポイントは、提携先の店舗で提示するとポイントがたまるサービスとして、現在の共通ポイントの先駆けといえる存在です。

お店側はTポイントを導入することでリピート客を増やし、客の属性や利用傾向に基づいたマーケティングが可能になるというメリットがありました。

しかし、その後はスマホが普及したことで、財布の中でかさばるポイントカードはアプリに置き換えられつつあります。

たとえばファミリーマートでは、「ファミペイ」のアプリからTポイントを含む複数の共通ポイントを選べるようになっています。

ファミペイのアプリは複数の共通ポイントに対応している(ファミリーマートのWebサイトより)
ファミペイのアプリは複数の共通ポイントに対応している(ファミリーマートのWebサイトより)

アプリがすべての中心になったことで、ポイント経済圏では携帯キャリアが台頭してきました。ソフトバンクヤフーのように、Tポイントから離れる動きも加速しています。

利用者数などの調査でも、かつてはTポイントが1位という時期もありました。しかしMMD研究所による2022年4月の調査では、楽天やdポイントを下回り、PayPayやPontaに追われる立場になっています。

Tポイントの利用者数は楽天やdポイントを下回っている(MMD研究所による2022年4月の調査より)
Tポイントの利用者数は楽天やdポイントを下回っている(MMD研究所による2022年4月の調査より)

一方、これはクレジットカード会社にとっても悩ましい状況です。国内のキャッシュレス利用金額の大半はクレカが占めているものの、日常的な決済ではコード決済や電子マネーが増えています。

このままいけば、クレカの利用明細には「PayPayに3000円チャージ」のような履歴ばかりが並ぶようになり、ユーザーの実像はどんどんぼやけていくでしょう。

そこで三井住友カードは、一部の対象カードをコンビニやマクドナルドで利用した場合、コード決済を上回る最大5%還元を特典として提供しています。

さらに10月からは、カフェや回転寿司のチェーン店にも対象店舗を拡大。もっと日常的にクレカを使ってもらいたいという思惑が感じられます。

一部のカードで最大5%還元。10月から対象店舗を拡大した(三井住友カードのWebサイトより)
一部のカードで最大5%還元。10月から対象店舗を拡大した(三井住友カードのWebサイトより)

もし、日常的な利用データを豊富に持っているTポイントと統合できれば、理論的にはお互いの強みを活かしたデータが完成することになるわけです。

ユーザー視点でも、ポイントの利便性が高まり、一本化できることはメリットといえます。普通に考えれば、いろいろなサービスが乱立するよりも、統合を期待する人のほうが多いはずです。

しかし実際には、SNSでは反発の声が多く上がっています。その背景には、Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が過去に個人情報の扱いを巡ってさまざまな問題を起こしてきたことが挙げられます。

たしかに、ポイントと引き換えにデータを活用する仕組み自体はどの共通ポイントも似たり寄ったりです。また、後発の事業者はTポイントの事例を研究することで「炎上」を回避できた面もありそうです。

しかし直近でも、7月にCCCはTポイント会員のデータを外部に販売するサービスを発表。規約の変更により、提供先の個人データと突合・名寄せできる仕組みに問題があるとの指摘が相次ぎました。

今回の「統合」発表により、実際にカードを解約したりポイントの利用をやめたりする人がどれくらいの数になるかは分かりませんが、両社が想定していた以上に大きな反発になっている可能性があります。

ポイント統合「オプトアウト」はできるか

三井住友カードは「ナンバーレス」や「タッチ決済」など新しい分野にも挑戦しているものの、まだまだ銀行に由来する安心と信頼のイメージが強いようです。

この三井住友のブランドイメージが、CCCの企業イメージと合わないことが、SNSで起きている反発の根底にあるように感じられます。

プレス発表では「ユーザーに不利益がないよう協議する」とはしているものの、両社が過去に蓄積してきたデータがどのように扱われるのか、丁寧な説明が期待されるところです。

また、それを待たずに解約する人が増える可能性もあるので、統合を望まない人が自分で拒否できる「オプトアウト」の仕組みを提供する予定があるならば、早めに告知したほうがよさそうです。

追記:

2023年6月13日、VポイントとTポイントを統合し、新しい「Vポイント」として2024年春から提供開始するとの発表がありました。

https://www.ccc.co.jp/news/2023/20230613_002532.html

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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