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日本でも韓国でも期待外れのスラッガーは「縁故採用」でMLB復帰をめざす!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケビン・クロン Feb 21, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 先月上旬、ケビン・クロンは、オークランド・アスレティックスとマイナーリーグ契約を交わした。

 ここ2シーズンは、アジアでプレーした。昨シーズンは広島東洋カープ、今シーズンは韓国のSSGランダーズだ。それぞれ、42試合で6本塁打と67試合で11本塁打。両シーズンとも、出塁率は.275に届かなかった。打率ではなく、出塁率だ。

 アスレティックスでは、父のクリス・クロンがアシスタント打撃コーチを務めている。

 この親子が同じ球団に在籍するのは、今回が初めてではない。

 父は、2014年から2021年までアリゾナ・ダイヤモンドバックスにいた。2014~18年がマイナーリーグの打撃インストラクター、2019~20年がAAAの監督(2020年はマイナーリーグのシーズンが中止)、2021年はフィールド・コーディネーターだ。息子は、2014年のドラフトでダイヤモンドバックスに14巡目・全体420位指名を受け、プロ入りした。2020年のオフに広島東洋と契約するまで、移籍することなく過ごしてきた。

 2019年にAAAの82試合で38本のホームランを打ち、出塁率.449を記録した当時、チームの監督は父だった。

 2019年ほどではないものの、その前の2シーズンも、好成績を残している。2017年はAAで25本塁打と出塁率.357、2018年はAAAで22本塁打と出塁率.368だ。さらに、その前の2シーズンは、出塁率こそ低かったものの、2015年はA+で27本塁打、2016年はAAで26本塁打を記録している。これらは、父が打撃インストラクターを務めていた時期と重なる。

 ただ、スプリング・トレーニングにはノン・ロースター・インバイティー(キャンプ招待選手)として参加し、父とともに過ごすが、開幕ロースターに入れなければ、メジャーリーグに昇格しない限り、父とは別々の「チーム」となる。父の指導を受ける機会は、あまりないだろう。今回の契約は、父が理由、言ってみれば、縁故採用のようなものかもしれない。マイナーリーグ契約なら、アスレティックスにリスクはない。

 仮にそうだとしても、メジャーリーグでプレーするチャンスはあるはずだ。今シーズン、アスレティックスで15本塁打以上は、25本のセス・ブラウンと18本のショーン・マーフィーだけ。今オフ、マーフィーは、トレードでアトランタ・ブレーブスへ移籍した。

 なお、父は、1991~92年にメジャーリーグで計12試合に出場し、25打数2安打。ホームランはなかった。息子は、2019~20年の計47試合で6本塁打だ。デビューから34試合で6本のホームランを打った。コロラド・ロッキーズにいる兄のC.J.クロンは、通算175本塁打。2018年に30本のホームランを打ち、昨シーズンは30本塁打まで2本、今シーズンはあと1本に迫った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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