その副業ちょっと待った!お小遣い稼ぎのつもりが悪質な行為への加担の恐れ 転売業者の二重のカラクリ
お小遣い稼ぎをしたいと思い、ネットでみつけた求人情報に連絡する方も多いことでしょう。しかも実際に仕事をしてみて、求人内容通りにお金が稼げたとすれば、とても良い副業になったと満足するかもしれません。しかし時に、悪質な手段でお金を稼ごうとするグループの行為に加担してしまっていることもあります。
スマホで見つけた副業先に連絡すると
「まさかそんなグレーな行為に手を貸していたとは、思いもしませんでした」
20代女性(仮名・山田さん)はスマホでみつけた副業の広告先に連絡して、気軽に仕事を始めます。しかしその後、知人からそのグレーな仕事のカラクリを知らされて驚きます。
山田さんによると「応募先に連絡すると、ラインでの友達追加を促されました。そこで友達登録をすると、次のようなメッセージが送られてきた」と話します。
仕事の内容は「軽作業 商品の受取返送」「広告料(メーカーからの紹介料)をいただいて運用しているので、お金が払えます」「自分から持ち出すお金は0円で、13000円をGETできる」「アマゾンで本を買うような作業のイメージになります」といったものです。
手順も書かれています。
要約すると「案内された商品を注文してもらい、自宅に商品が到着して、件数分の商品が揃ったら、段ボールにまとめて着払い発送。以上が一連の作業となりますが、大丈夫そうでしょうか?」というものでした。
山田さんは「自宅にいながらできる手軽な作業だ」と思いやってみることにします。
注文の指示のメッセージが届く
一回目の注文の指示がメッセージできます。
大手の健康食品名Aが書かれており、お試し価格1000円で購入できるとあります。そして注文先のリンクも貼られており、注文の仕方も細かく指示されます。
「最初に『1000円お試しモニターに申し込みたい』と電話でお伝えください。次に、申し込み番号(クーポン番号***)をお伝えください。そして、お名前や電話番号などの必要情報を伝えて、支払い方法は『コンビニ後払いでお願い致します』とお伝えください。最後に、定期購入を勧められますが『お試し商品で良い』とお伝えください」
山田さんは手順通りに注文をします。
嘘の解約理由も指示される
その後も、大手企業の健康食品の「無料モニター抽選で10000名様」のサイトにアクセスして「今すぐ申し込む」をクリックするように指示されて商品を手にします。
「商品のなかには、定期購入となっていて、解約が必要なものもありました。それについても細かい指示がありました」(山田さん)
ある商品を解約する時の理由について「『一度試してみようと思いましたが、解約致します』と答えてください」といったものや、「どこがダメだったでしょうか?」という問いに対しては「経済的に厳しいため」や「肌がかゆくなりにあわない感じがした」と回答するようにとのメッセージがあったそうです。
こうして山田さんは大手企業のサプリメント・化粧品・育毛剤の商品15個ほどを購入します。すべて終わった頃に、すべての商品を段ボールに詰めて、相手の指示する場所へ郵送しました。
報酬は振り込まれる
「商品代金と報酬額は振り込まれました。そのお金から、商品代金などをコンビニ後払いで支払いました。一部、期限が迫っていて事前に払ったものもありましたが、この代金にて補填できました。求人の内容通りに13000円と商品代金がバイト代として手に入りました。2週間ほどで仕事は終わりで、その後の連絡は一切ありません」(山田さん)
もしかすると、不正なカラクリを知らない人は、この時点で「良いバイトだった」という感覚で終了となってしまうかもしれません。
悪質なスキームのカラクリ
では、どのような形で山田さんは悪質な行為に加担していたのでしょうか。
不正購入対策サービスを提供する、株式会社Spider Labs(スパイダーラボズ)の小沢さんは「これは初回限定で購入できる”お試し商品”を転売するという悪質な行為です」と話します。
「山田さんは、女性向けの化粧品を定価よりもかなり安い1980円で購入していますが、業者にその商品を送ってしまうと、フリマサイトなどで定価より安い値段で転売されてしまいます。これは初回のみ安い値段で利用者に提供している大手企業のサービス・善意を悪用したもので、多くの企業が被害を受けています」
しかし、業者には、もう一つの狙いがあるとも、小沢さんは指摘します。
二重取りのカラクリとは?
山田さんが業者に指示されてアクセスしたウェブサイトのアドレスを指して、小澤さんは「よく見て頂くとわかるのですが、タップするように指示されたアドレスには、アフィリエイト(成果報酬形広告)のアドレスも加えられています。つまり、商品購入者である山田さんが、訪れたところはアフィリエイト広告になっており、この広告を経由して商品を注文することで、広告を表示したアフィリエイター(この場合転売業者)に企業から報酬が振り込まれるようになっているのです。つまり、企業は商品を安く買い取られた上に、さらに広告費も取られているという利益の二重取りに遭っているわけです。しかも、定期購入での注文となると、アフィリエイターの懐には数万円が入ることもあります」といいます。
これまで見てきたように、定期購入の解約について、購入者に嘘をつかせているわけですから、企業を騙して、広告費用を騙しとっている行為といえるでしょう。
被害を防ぐために
被害を防ぐには、どうすればよいのでしょうか。
「やはり転売目的で不正に購入しようとするユーザーを事前に検知して、商品を買わせない。転売させないことが必要になります」
しかし、人の目で一つ一つ不正購入をチェックすることは極めて難しいことです。同社では長年培ってきた端末特定、データ分析技術により、転売ヤーの一定の特徴をつかみ、不審な購入を高い精度で検知しています。それにより、初回購入のサービスを悪用した購入をさせず、また不正な手段でアフィリエイト報酬を企業から得ることを防ぐ取り込みをしています。企業側も、こうした不正チェックの仕組みを導入して転売行為を行わせないことが何より、大事になります。
利用者の側が、悪質な行為のスキームに取り込まれないこと
しかしこうした企業の取り組みの前に、ネット利用者がこの手口を知り、不正行為に加担しないことが大事になります。
考えてほしいのは、こうした転売行為がネット上で応募されていること自体、組織的スキームで行われています。つまり、不正な手段で商品を購入している人は、転売を行うグループの手足となる「買い子」をしていることになります。もっといえば、組織的転売グループの実行役を担っているわけです。
実行役といえば、最近起きている闇バイトで集められて、強盗や詐欺などを行う、詐欺や組織的犯罪グループを思いだす方もいるかもしれません。手足となって実行役を担うという観点からみれば、今回の「買い子」もほぼ同じ立場といえます。
時に、こうした転売行為の手伝いの募集は、副業支援サイトでも行われていることもあるといいます。
私たちの身の回りには、様々なグレーな商法がはびこっています。それに巻き込まれないためにも「副業・簡単なおこづかい稼ぎ」に潜む手口を知り、身元のわからない相手に対して安易な応募はしないようにしてください。