【九州北部豪雨】生活再建の支援情報「福岡県弁護士会ニュース」(2017年7月10日版)発行
水害からの『生活再建』のために
2017年7月5日以降の九州北部を中心とした記録的豪雨により、深刻な水害が発生しています。災害救助法が福岡県朝倉市、東峰村、添田町、大分県日田市、中津市の5自治体に適用されました(2017年7月7日時点・内閣府防災担当)。被害を受けられた皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。また、現場の救助活動や復旧に尽力されている方々に敬意を表します。
被害を受けた方の「生活再建」の支援のため、7月10日、福岡県弁護士会は、「福岡県弁護士会ニュース<災害Q&A>」を発行しました。被災された方の生活再建にとって必要な支援制度や、災害直後の悩み事などへの対応がコンパクトにまとめられています。
災害後の生活を立ち上げるため、自らや家族の生活のこれからに少しでも希望を持っていただくため、「弁護士会ニュース」をきっかけとして生活再建支援情報を入手していただきたいと思います。なお、今後の国や自治体の支援の進展により状況や使える制度は変わっていきますので、その点はご留意いただければと思います。
「福岡県弁護士会ニュース(2017年7月10日発行版)」の項目
1 支援制度関係
○家屋の被害がある場合に緊急でしておいた方がよいことはありますか。
○当面の生活費をどうにかしたいのですが。
○写真の撮り方で注意することはありますか。
○災害弔慰金(災害弔慰金の支給等に関する法律)
2 支払関係
○住宅ローン、事業性ローン等を支払う余裕がありません。
○年金や健康保険料の支払はどうなりますか
○公共料金はどうなりますか。
○税金の支払はどうなりますか
3 保険・共済の問題
○どこの保険に入っていたかわからなくなりました。
○保険の内容を確認したいのですが。
○その他(継続契約の手続期間や保険料の払込期間について猶予など)
4 紛失物関係
○銀行の通帳などがなくなってしまって、お金がおろせません。再発行してくれるのでしょうか。
○権利証がなくなってしまいました。土地の権利はどうなりますか。売買などはできますか。
○クレジットカードがなくなってしまいました。
○実印や印鑑登録カードがなくなってしまいました。
○身分証明証がなくなってしまいました。住民票はとれますか。免許証は再発行できますか。
○病院に行きたいが健康保険証がなくなってしまいました(家に置いてきてしまった。)。
5 収入の関係
○会社が被災したため、失業し、収入がなくなりました。
○会社が閉鎖されてしまいましたが、もらっていない給料があります。
○避難先で生活保護を受けることはできますか。
6 その他色々
○会社を経営していましたが水害でやっていけなくなりました。
○免許証の有効期間が迫っています。
○住宅を修理して帰りたいのですが。
大きな災害後に配布されてきた「弁護士会ニュース」とは?
東日本大震災では、弁護士が災害発生直後から無料法律相談・情報提供支援活動を開始し、日本弁護士連合会が集約分析しただけでも、1年余りで4万件以上の相談を実施しました。相談の際に情報提供支援ツールとなったが、「弁護士会ニュース」です。当時の岩手弁護士会がはじめて作成しました。それ以降、全国各地で起こった水害、土砂災害、雪害、竜巻被害等で発行されてきました。2016年では、熊本地震や糸魚川大規模火災でも発行されました。(災害後に生活を取り戻すために~『熊本県弁護士会ニュース』(第1弾・2016年4月21日版)発行」)。今回の「福岡県弁護士会ニュース」も、全国各地の弁護士による災害復興支援経験を活かして第1弾の発行に至ったものです。
福岡県弁護士会では面談や電話による無料相談窓口を開設
福岡県弁護士会では、面談と電話による無料法律相談窓口を当面実施します。特に「災害救助法」の適用によって、一定の条件でローンの支払減免ができる「自然災害債務整理ガイドライン」や災害救助法のメニューの一つである「住宅応急修理制度」が使える場合があるので、まずはどのような支援が使えそうなのかを、直接専門家に相談してみるのはいかがでしょうか。
【電話相談】
◆実施期間 7月11日(火)~7月24日(月)の毎日
※期間延長の際はお知らせします
◆実施時間 10時~16時
【面談相談】
◆開始日 福岡地区:7月7日(金)~
北九州地区:7月10日(月)~
筑後地区:7月7日(金)~
筑豊地区:7月10日(月)~
◆場所 福岡県弁護士会の法律相談センター(県内17カ所)
◆相談時間 60分
支援者の方にも弁護士会ニュースを見てほしい
7月9日に開催された「特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)が主催する「平成29年7月九州北部豪雨支援者情報共有会議」(福岡県吉塚合同庁舎にて開催)では、公開に先立って「福岡県弁護士会ニュース」が配布されました。災害時の被災者支援相談や相談内容の分析にかかわってきた経験からすれば、被災された方や家族が、国や自治体の支援制度を正確に把握し、支援にたどり着くまでは大変な苦労を必要とします。知らない・届かない情報は、どんなに便利な制度であっても、ないのと同じです。弁護士だけではなく、行政機関、専門職、ボランティアの方々、あらゆるセクターの方々に、被災者の生活再建支援に関わる情報を知っていただき、窓口誘導などのコーディネーターとして活躍していただきたいと願っています。
大分県弁護士会も「弁護士会ニュース」発刊(7月13日追記)
大分県弁護士会は、7月12日に「大分県弁護士会ニュース<災害Q&A>」を発刊しました。弁護士会のウェブサイトからPDFのダウンロードも可能です。内容は「福岡県弁護士会ニュース」とほぼ同一になっています。今後「被災者生活再建支援法」が適用された地域についての支援情報も重要になってきます。弁護士会ニュースをはじめ、支援情報を的確に入手していただければと思います。
(参考情報・文献)
・岡本正「東日本大震災を教訓とした弁護士の防災・減災活動―災害復興法学の展開と災害派遣弁護士の浸透に向けて」(ぎょうせい「法律のひろば」2016年3月号 43-51頁)