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被災時にもらえるお金は? ローンの免除は? 生活再建へ知っておきたい公的支援制度

岡本正銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)
提供:Nobuyuki_Yosihikawaイメージマート

「仕事ができなくなって収入もなくなってしまった。しかし住宅ローンはまだ数千万円残っており、支払いを続けなければならない。貯金も残りわずかで、これから先どうやって生きていけばよいのかわからない」

災害が原因で収入が途絶え、生活費やローンの支払いに困窮し、経済的困難に陥る可能性は誰しも等しく訪れます。このような状況で役立つのは、お金の給付や支払いの減免を支援する制度があることをあらかじめ知っておくことです。実際に被災してしまう前の「知識の備え」として、ここでは特に知っておいてほしい支援についてご紹介します。

被災者のための主な支援制度
被災者のための主な支援制度

■被災したときにもらえるお金がある

① 被災者生活再建支援金

法令で定められた一定の被害(例えば一つの市町村で全壊住家が10以上等)が発生した自然災害で、自宅が全壊(損壊割合50%以上)するなどの著しい被害を受けてしまった場合に利用できる支援として、「被災者生活再建支援金」があります。「被災者生活再建支援法」に基づき、被災世帯へ「基礎支援金」「加算支援金」が合計で最大300万円支払われる制度で、自治体の窓口に申請をすることで、お金の支払いを受けることができます。所得要件などはありません。災害が支援金の対象になった場合は、国や自治体のホームページに案内が出ますので、期限、必要書類、窓口などを忘れずにチェックしてください。

「基礎支援金」は、最大100万円で、使途は自由です。被災者にとってはとても使い勝手のよい給付金支援だと言えます。「加算支援金」は、最大200万円で、家の建築・購入、修繕、賃借等の再建手法に応じて金額が変わってきます。基礎支援金の申請との間にはかなりの期間が空いてしまうことになりますので、忘れないようにしてください。

ただし、この被災者生活再建支援金は被災者が何もアクションしなければ支払われません。自ら申請する必要がありますので、是非知っておいてください。

② 災害弔慰金・災害傷害見舞金

法令で定められた一定規模以上の自然災害により、亡くなってしまった方のご遺族(配偶者、父母、祖父母、子、孫。不在の場合は一定条件を満たした兄弟姉妹)に対して、「災害弔慰金」(さいがいちょういきん)という見舞金が支払われる制度です。「災害弔慰金法」が根拠です。金額は、亡くなった方お一人につき、250万円又は500万円で、ご遺族の方の一人が受け取ります。金額がどちらになるかは、亡くなった方とそのほかの家族の方の収入のバランス等を考慮して決定されます。

災害弔慰金は、直接死(倒壊、火災、津波等によって直接亡くなってしまうケース)のみならず、「災害関連死」の場合も対象になりますので、忘れないようにしてください。「災害関連死」とは、直接死以外で災害と相当因果関係が認められる死亡のことを言います。該当するかどうかは、災害弔慰金申請の際に、自治体の設置する災害弔慰金審査委員会の専門家(弁護士ら)が判断してくれますので、迷うような事案なら、躊躇なく申請をしてください。

同じく、災害によって重度の障害を負ってしまった場合には、「災害障害見舞金」が支払われます。金額は、125万円又は250万円です。

③ 義援金

義援金とは、被災者やご遺族を慰謝するために一般の市民らから集められた寄付金で、自治体を通じて被災者へ配分されるお金のことを言います。1回だけではなく何度も配分されることもあります。義援金が配分される場合は、市町村や都道府県のホームページに情報が発信され、かつニュースになることも多いので、ぜひ定期的に問い合わせなどをしてください。

■知ってほしい自然災害債務整理ガイドライン

個人や個人事業主の方で、「災害救助法」が適用された自然災害の影響で既存の債務が支払えなくなってしまった方は、「自然災害債務整理ガイドライン」(被災ローン減免制度)を利用できる場合があります。まずは債務の支払いに困ったら、被災者・支援者向けの弁護士無料法律相談を受け、自然災害債務整理ガイドラインが使えないかどうか確認してください。この制度は、法律ではありませんが、公的機関や金融業界のステークホルダーが合意してつくられた準則ですから、条件を満たせば利用できる制度だと考えてください。収入や資産が十分ある方は利用できない場合があります。それでも、まずは利用できるかどうか相談してみてください。

自然災害債務整理ガイドラインは、住宅ローン、個人事業のローン、奨学金、その他の借入金の一切について、これらが支払えなくなって、いわば破産状態となってしまった場合に、債権者(金融機関等)と合意をして、最終的には支払えない分の債務免除を行う手続きです。破産しなくても債務の減免ができ、かつブラックリスト(信用情報)登録されないという大きなメリットがあります。手元に残すことができる(返済に充てなくてもよい)財産も、現預金500万円や一定の損害保険金等、幅広くあります。連帯保証人への請求もなされません。

手続きの際には、メインバンクなどの債権者に利用したいと希望を伝える必要がありますが、先に述べたように弁護士の無料法律相談などを経て情報収集をしておくとよいでしょう。また、手続きが開始されると、登録支援専門家(弁護士が就任します)が無料で手続サポートをしてくれるので安心です。

■公共料金などの減免措置がとられることも

携帯電話料金、固定電話料金、電気料金、ガス料金、上下水道料金、NHK受信料、その他の通信費・放送料などの各種料金は、大きな災害があった場合には、猶予措置、サービスの付加、減額措置、免除措置などが行われる場合がほとんどです。災害の規模や地域によって支援の内容には差が出ますが、何らかの支援が行われるのが通常です。災害が起きたら、すぐに事業者のホームページをチェックしたり、窓口へ問い合わせたりしてください。

大きな災害といえる一つの基準は、「災害救助法」という法律が適用され、その対象地域になっている場合などです。月末などが到来して、従来通りの契約に基づき支払い手続が終わってしまう前に、いろいろな手続きをしておくことが重要です。

■被災者向けの貸付制度もあるが利用は慎重に

被災された方によく利用されている借り入れの制度もあります。ただし、あくまで借金ですから、利用は慎重に判断してください。

「災害援護資金」は、一定規模以上の自然災害があったときに、最大350万円の借り入れをすることができる制度です。「災害弔慰金法」が根拠です。負傷、住宅被害、家財被害等がある被災者が利用できます。家財には自動車も含まれます。利率は3%以内で、市町村の条例で決定されています。償還期間は10年間ですが、最初の3年は据え置き期間でかつ利息がつきません。

「緊急小口資金」は、社会福祉協議会が実施している融資制度です。当座の生活費を必要とする世帯が利用できます。災害時には、平時よりも要件が緩和され、窓口も柔軟な対応を行うのが通常です。連帯保証人も必要ありません。金額は10万円(災害時の特例で20万円になる場合もあります)で、据置期間1年、返済期間2年間、無利息という条件です。

■弁護士の無料法律相談窓口を活用して

災害時の生活再建に役立つ制度として、「もらえるお金」「支払いへの対応」「借りられるお金」についてご紹介しました。とはいえ、実際に被災してしまったときに、これらの制度を駆使して適切な手続きを漏れなく行うことは、やはり難しいという印象もあるのではないでしょうか。

そのようなときには、弁護士の無料法律相談窓口を活用してください(被災者だけではなく、被災者支援をする方も活用してください)。これまでの大規模災害時には、弁護士が被災地で無料相談活動を行い、支援制度を紹介し、窓口へ案内してきました。「法律相談」というイメージよりは、「なんでも情報屋さん」のような役割を果たしてきたのです。ぜひ弁護士の窓口も頼ってみてください。

〈参考文献〉

岡本正『被災したあなたを助けるお金とくらしの話 増補版』弘文堂

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)

「災害復興法学」創設者。鎌倉市出身。慶應義塾大学卒業。銀座パートナーズ法律事務所。弁護士。博士(法学)。気象予報士。岩手大学地域防災研究センター客員教授。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。医療経営士・マンション管理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)・防災士。内閣府上席政策調査員等の国家公務員出向経験。東日本大震災後に国や日弁連で復興政策に関与。中央大学大学院客員教授(2013-2017)、慶應義塾大学、青山学院大学、長岡技術科学大学、日本福祉大学講師。企業防災研修や教育活動に注力。主著『災害復興法学』『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』『図書館のための災害復興法学入門』。

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