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災害後に生活を取り戻すために~『熊本県弁護士会ニュース』(第1弾・2016年4月21日版)発行

岡本正銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)
「熊本県弁護士会ニュース」(2016年4月21日版)

熊本及び大分を震源とする地震により被災された方に心よりお見舞を申し上げます。

熊本県弁護士会ニュース第1弾がリリース

熊本県弁護士会は『熊本県弁護士会ニュース<災害Q&A>』(第1弾・2016年4月21日版)を作成・公表しました。被災された方の生活再建に役立つ法制度や知識を2ページのチラシに凝縮しています。被災者支援・災害復興支援に関わる方には、職種や専門分野を超えて、是非とも知っていただきたい情報です。また、企業のご担当者においても、従業員やその家族のために、是非知っていただきたいと考えています。

4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方を震源とするM6.5の地震が発生し、益城町は震度7を記録しました。4月16日午前1時25分、M7.3という14日を遥かに上回る地震が発生し、益城町と西原村で、再び震度7を記録しました。その後も大分県を震源とする震度6弱の地震が発生し、各地で震度5を超える余震が何度もおきています。4月22日時点では、地震等で亡くなった方48名、全壊家屋1495棟と甚大な被害が報告されました(内閣府「平成28年(2016年)熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について」より)。災害関連死も11名と報告されました。

過去の大災害の教訓から

過去の大災害においても、弁護士は発災直後から、無料法律相談活動をしてきました。法律相談といっても、その実質は、被災された方の生活再建や、企業の維持・再生に役立つと思われる情報を伝達することを内容とするものです。行政職員への支援も同時に行ってきた実績があります。混乱のなかにあっても、救助されたのちには、その後の生活の不安と悩みが押し寄せてきます。当たり前の生活の繋がりや契約や取引が、悩みと紛争に変わり果ててしまいます。新たな一歩を、家族のため、自分のため、従業員のため、事業継続・再開のために踏み出そうとすると、多くのリーガル・ニーズが発生します。東日本大震災では、日本弁護士連合会が、1年余りで4万件以上の無料法律相談事例をデータ・ベース化しました。そこから浮かび上がったのは、生活を取り戻そうと悩み、あるいは想像すらできなかったほどに困難を抱えた被災者の声でした。同時に、少しでもこれに応え、希望を届けようとする法律家の努力の跡でした。

このような経験から、被災された方が生活を取り戻すために役立つと思わる情報をまとめたのが、『熊本県弁護士会ニュース<災害Q&A>』(第1弾・2016年4月21日版)です。日本弁護士連合会災害復興支援員会のメンバーをはじめとする全国各地の被災経験・支援経験がある弁護士たちも協力しました。過去の災害時に作られ、今現在も支援活動に使われている「岩手弁護士会NEWS」(東日本大震災)や「広島弁護士会ニュース」(豪雨災害)をベースにしたものです。筆者も及ばずながら、災害直後から熊本県弁護士会の準備が整うまでの繋ぎ役になろうと考え、暫定メモとしてではありますが、生活を取り戻すための再建情報を整理してきました。

家屋損壊に伴う法的課題をどう解決するか

損壊家屋が多く、住まいを失った方が多いため、生活再建に繋がる制度の徹底的な利活用が求められます。利用できる支援制度としては、「り災証明書」の取得に始まり、「被災者生活再建支援法」や「災害弔慰金」などが主なものとして考えられます。また、住宅ローン等の返済が困難となった方への「支払猶予」措置や「自然災害債務整理ガイドライン」の徹底周知と活用は、再建のカギとなる大切なプロセスです。全国銀行協会による積極的な情報発信が各地で実ることを祈ります。

そのほか、賃貸借契約に関わる紛争や隣接住居間の紛争(相隣関係)が頻出するであろうことが、過去の支援実績から推認されます。保険会社への保険金請求、保険料の支払猶予なども相談が必要になると考えられます。再雇用が予定されている場合でも雇用保険失業給付を受けられるという特別措置なども周知したいところです。

「熊本県弁護士会ニュース」が被災地に浸透することで、生活再建の一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。

今後の弁護士による支援活動については、'''熊本県弁護士会のウェブサイト'''をご確認いただければと思います。

なお、本記事は、あくまで熊本県弁護士会ニュース発行時点の情報に基づき作成されたものであり、今後情報は変わる可能性があることにご留意ください。

『熊本県弁護士会ニュース<災害Q&A>』(第1弾・2016年4月21日版)掲載項目

1 支援制度

○り災証明書とは何か。これがあるとどうなるのか。

○当面の生活費をどうにかしたい。

○災害弔慰金

○災害障害見舞金

○被災者生活再建支援制度

2 支払い関係

○住宅ローン、事業ローン等を支払う余裕がない。

○税金の支払はどうなるか。

○年金や健康保険料の支払いはどうなるか。

○公共料金はどうなるか。

3 保険・共済の問題

○地震による免責条項があるから、生命保険金は出ないか。

○火災保険だけで地震保険に入っていないから、保険金はもらえないか。

○地震で自動車が壊れてしまった。

○地震保険の内容を確認したい。相談したい。

○どこの保険に入っていたかわからない。

○その他(保険料の猶予など)

4 紛失関係

○銀行の通帳などがなくなってしまって、お金がおろせない。

○クレジットカードがなくなってしまった。

○権利証がなくなってしまった。土地の権利がなくなるのか。

○実印や印鑑登録カードがなくなってしまった。

○身分証明証がなくなってしまった。住民票はとれるか。免許証は。

○亡くなった方の口座がどこにあるかわからない。

○病院に行きたいが健康保険証がなくなってしまった。

5 収入の関係

○会社が被災したため、失業し、収入がなくなった。

○会社が閉鎖されたが、もらっていない給料がある。

○避難先で生活保護を受けることができるのか。

6 その他色々

○会社を経営していたが、地震でやっていけなくなった。

○免許証の有効期間が迫っている。

○車検の有効期間が迫っている。

○住宅を修理して帰りたい。

銀座パートナーズ法律事務所・弁護士・気象予報士・博士(法学)

「災害復興法学」創設者。鎌倉市出身。慶應義塾大学卒業。銀座パートナーズ法律事務所。弁護士。博士(法学)。気象予報士。岩手大学地域防災研究センター客員教授。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。医療経営士・マンション管理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)・防災士。内閣府上席政策調査員等の国家公務員出向経験。東日本大震災後に国や日弁連で復興政策に関与。中央大学大学院客員教授(2013-2017)、慶應義塾大学、青山学院大学、長岡技術科学大学、日本福祉大学講師。企業防災研修や教育活動に注力。主著『災害復興法学』『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』『図書館のための災害復興法学入門』。

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