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ドジャース ワールドシリーズ制覇の舞台裏で起きていた“ほっこりする出来事” 日本でも起きるといいな!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

 ロサンゼルス・ドジャースが2024ワールドシリーズを制覇した。

 ドジャースがニューヨーク・ヤンキースに勝利した夜は、ドジャー・スタジアムから遠く離れている筆者の住まいの近くでも、小さな花火があがった。ローカルニュース番組は、ドジャース勝利以外のニュースを排除し、勝利に歓喜する街の人々の様子や試合後クラブハウスでシャンパンを掛け合う選手たちの姿を終始流し続けた。スタジアム近くの通りは祝勝する人々で溢れ、カオス状態に。通りが無法地帯化したのに乗じて店の物品を略奪する者たちも現れたほどだ。近くにあるドジャースの公式ショップは今、いつにない客入りで、店頭には黒いワールドシリーズのTシャツが積み上げられている。通りを歩けば、LAという文字が刺繍されたドジャースのロゴ入りベースボールキャップを被っている人々が目につく。

 日本でも大きく報じられたワールドシリーズ。その舞台裏で起きていたほっこりする2つの出来事を紹介できたらと思う。

ヤンキースからの贈り物

 ワールドシリーズ第4戦で、ムーキー・ベッツ選手が捕球したファウルフライのボールを、フェンス際の席の最前列に座っていた2人のヤンキースファンが、力づくでグローブの中から奪い取ろうとする一幕があった。ベッツ選手のプレイを妨害した彼らはスタジアムから退場処分となったが、空席になってしまった彼らの席はどうなったのだろうか? 

 翌日の第5戦を観ると、その席には少年が座っていた。小児がんと闘っている15歳のカルヴィン・ヤング君だ。昨年6月、線維形成性小細胞腫瘍(DSRCT)肉腫と診断されたカルヴィン君は、9月、「子供限定」の記者会見にがんと闘う80人の子供たちのグループの1人として参加し、ヤンキースの選手たちに質問する予定だった。素晴らしいイベントだが、当日、球場に向かう車中で具合が悪くなったカルヴィン君はそのイベントに参加できず、結局、病院で手術を受けた。ヤンキースは空席になってしまった彼らの席のチケットを、カルヴィン君と彼の母親、彼の2人の弟に贈ったのだ。

寄付した人々やドジャースからの思いやり

 ドジャースもまた、がんと闘う男性とその家族にささやかな贈り物をした。

 アイダホ州に住むゲイブさんはヤンキースのプレイオフの試合を観戦に行くのが夢だった。末期がんと闘っているゲイブさんは家族と思い出作りをしようと、残りの貯金をはたいて試合を観に行くことにした。アメリカの医療費は高額だ。闘病で経済的負担がのしかかっているゲイブさん家族のことを懸念したゲイブさんの妻の友人リサさんが、寄付サイトGoFundMe.comで寄付を呼びかけた

「私は彼らの経済的負担を軽減し、彼らが本当に大切なこと、つまり、残された時間を一緒に過ごすことに専念できるようにしたいと考えています。医療費、旅費、そしてこの困難な時期に彼らが必要としている費用を賄うために、あなたの支援をお願いします」

 リサさんは、その後、ゲイブさんは家族でワールドシリーズの第1戦の試合を観に行くことができ、ディズニーランドにも行く予定だと報告している。

「ヤンキースは勝利を収めることはできませんでしたが、試合を観戦した経験は彼らにとって忘れられないものとなりました。彼らは士気高くチームを応援し、一緒に忘れられない思い出を作りました」

 リサさんは5,000ドルの寄付を集めることを目的としていたが、この記事の投稿時点で、15,000ドル近い寄付が集まっている。

 ドジャースもゲイブさんとその家族に思いやりを示した。GoFundMe.comのスポークスマンによると、ドジャースは彼らにスペシャルギフトと食事券を贈ったという。

 ヤンキースやドジャース、そして、寄付をした人々からカルヴィン君やゲイブさんに贈られた思いやりの気持ちは、闘病している彼らの大きな支えになることだろう。

寄付と人助けの文化

 こういった出来事は、アメリカで寄付文化が定着していることを示している。世界の国々の人助けの状況を毎年分析しているイギリスのチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション」が、8月に発表した報告書「World Giving Index(世界人助け指数)2024」によると、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」という質問に対し、アメリカでは、調査された成人の61%が寄付をしたと回答している。一方、同じ質問に対し、日本では、寄付をしたと回答した成人は17%に留まっている。

 寄付は人助けにも繋がる。「この1ヶ月の間に見知らぬ人を助けたか」という質問に対し、アメリカでは、調査された成人の76%が助けたと回答。一方、日本では、助けたと答えた成人の割合は24%だった。

 ワールドシリーズの舞台裏で起きていた“ほっこりする出来事”から、日本も大切な何かを学ぶことができるのではないか。

(飯塚真紀子・著 人助けランキング関連記事:Yahoo!ニュース エキスパート)

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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