2024年1月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート
2023年12月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポートに引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、その他の調査機関の数字なども加味した内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。
能登半島地震対応の評価で内閣支持率は底打ち気配も
内閣支持率は昨年末で一度底を打ち、年始はやや持ち直しました。1月1日に発生した能登半島地震に対する政府や官邸の対応が注目されていましたが、国会閉会中ということもあり地震対応について野党から大きな攻撃を受けることもなかったため、支持率の下落要因にはなりませんでした。
一方、岸田内閣は今年の通常国会、2つの大きな不祥事を抱えたまま走り出す形となりました。1つは、盛山文部科学大臣にまつわる旧統一教会の問題が再燃したこと、そしてもう1つは、派閥パーティー券問題など自民党にかかわる政治汚職のトピックです。
盛山文部科学大臣にまつわる旧統一教会の問題は、これまでの旧統一教会に関連する問題の延長線上ではあるものの、①旧統一教会に解散請求をする文科大臣自らにかかる疑惑であること、②議会答弁が二転三転するなど野党の攻撃材料になっていること、③これまでと異なり旧統一教会側からのカミングアウトもあり火消しの目処が立たないこと、などが昨年と違う様相を呈している理由です。岸田総理も一度は続投を決めましたが、今週以降も議会答弁などが同様の対応となれば、新たな過去の発覚を前に「説明責任」を理由に更迭する可能性もあるとみられます。
そして派閥パーティー券問題です。野党からの要求により行われた「リスト」提出後も、未計上だった金額についての使途などについて指摘が相次いでおり、現在も野党が政治倫理審査会の開催を求めるなど、幕引きにはほど遠い状況です。野党は政治倫理審査会の後に、参考人招致や証人喚問といった更に厳しい場を要求することも展望としては描いていると考えられますが、与党は拒否するとみられます。
興味深いのは、49歳以下と、50歳以上では、内閣支持に対するトレンドに違いがあることです。昨年の春までは両者は概ね同じ傾向を示していましたが、50歳以上はもともとの支持率が高く、昨年5月以降一貫してダウントレンドが続き、ようやく年末に少し待ち直した形です。一方、49歳以下はもともとの支持率が低く、昨年7月以降、ほぼ支持率は横ばいです。49歳以下の内閣支持率が16〜17%程度で横ばいで続いていたのは、ここが「内閣支持率の底辺」(=言い換えれば、鉄板支持層がこれぐらいいる)とも言えるでしょう。
立憲民主党の支持率が持ち直し傾向へ
続いて政党支持率です。政党支持率は、日本維新の会の支持率が下落傾向、立憲民主党の支持率が上昇傾向と対照的です。与党を取り巻く政治とカネの問題に関して明確なメッセージを打ち出していたのが立憲民主党と捉えられた可能性があります。ただ、政党支持率は内閣支持率以上に世代間ギャップが大きいことにも留意しなくてはなりません。以下は、シニア世代(60代以上)、中年世代(40代・50代)、若者・青年世代(40歳未満)に分解したグラフです。
政党支持率(2023年1月〜)、60代以上
政党支持率(2023年1月〜)、40代・50代
政党支持率(2023年1月〜)、40歳未満
このことから、立憲民主党の支持率の上昇は、ここ2〜3ヶ月におけるシニア層による支持の獲得(再獲得)なのに対し、日本維新の会の支持率低下は、特に中年世代を顕著とした、昨年5月をピークとしたダウントレンドの一環であることが言えます。
また、ここまで政党支持率を因数分解すると、自民党に次ぐ支持率第2位・第3位政党が、60歳以上では「2位・立憲民主党、3位・日本維新の会」、40代・50代では「2位・日本維新の会、3位・れいわ新選組」、40歳未満では「2位・日本維新の会、3位・国民民主党」と、組み合わせが異なることがわかります。
日本維新の会は広い世代で支持を獲得できているのに対し、立憲民主党はシニア層に、れいわ新選組は若年層〜中年層に、国民民主党は若年層から支持を受けている様子が、一目瞭然となりました。
2月の内閣支持率・政党支持率の展望
通常国会は始まったばかりですが、盛山文部科学大臣にまつわる旧統一教会の問題と、派閥パーティー券問題など自民党にかかわる政治汚職のトピックがどのような方向性に向かうかによって、当面の内閣支持率は決まりそうです。
派閥パーティー券の問題で政務官が2人辞任しましたが、もう「政務官辞任」程度では(内閣支持率が低すぎて)悪影響を及ぼすような状況ではありません。一方、宗教法人を主管する文部科学大臣にまつわる旧統一教会の問題は、現時点で対応が後手に回っていることにくわえて、旧統一教会関係者が過去の情報を暴露する様相となっていることから、政府としては更迭せずに防戦できるのかが今週、来週の焦点となるでしょう。
派閥パーティー券の問題については、政治倫理審査会の開催となった場合に、新たな問題が発覚するかどうかが当面の焦点です。その後野党が求めるであろう参考人招致や証人喚問までは成立しないとしても、不記載だったお金がどこに消えたのかというトピックは、当面尾を引くとみられます。
これらの問題を含む政治改革については、日本維新の会よりも立憲民主党の方がメッセージの打ち出しが強いように思います。これは政治改革の具体的な案について維新よりも先に立憲が出したことにくわえ、現時点で野党第一党である立憲のメッセージがメディアでは大きく取り上げられることにあります。更に、大阪万博の開催について、能登半島地震との兼ね合いから延期や中止論も出るなか、大阪を一大拠点とする日本維新の会が「万博延期・中止論」が政治トピックになった場合には、政党支持率に大きな変動をもたらす可能性もあるでしょう。
※昨年より連載している当記事では、「モーニングコンサルト社の調査」も扱っていましたが、昨年末にモーニングコンサルト社の調査が有料配信となったため、今回の記事より引用を取りやめております。