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2015年期待の天文イベント

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
水星を見るチャンス!1月18日ごろまで夕方、西の低空で金星と接近中(国立天文台)

2015年期待の天文イベント

2015年の主な天文現象を地球全体で見ると、皆既日食と部分日食がそれぞれ1回と、皆既月食が2回あります。このうち、日食はいずれも日本では見られませんが、4月4日(土)の皆既月食は、全国で楽しめる好条件の月食です。

惑星現象としては、木星が2月7日(土)にかに座で衝を迎え、土星は5月23日(土)にてんびん座で衝を迎えます。金星は夕方西の空で6月7日(日)に東方最大離角となり7月10日(金)に最大光度(-4.5等)。その後、明け方の東の空に移り10月26日(月)に西方最大離角となります。

今年の注目すべき流星群は、夏のペルセ群と冬のふたご群。ペルセウス座流星群は8月13日(木)が極大予想日。今年は月明かりがなく観測には最高の条件です。また、ふたご座流星群も12月15日(火日)早朝が極大予想となっており、こちらも月明りがなく好条件での観測が期待されます。

2015年の天文現象については、国立天文台ウェブコンテンツの一つ「ほしぞら情報」をご活用ください。

国立天文台 ほしぞら情報2015年

もう一つ、注目しているのは、米国NASAの太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」が、2015年2月~8月にいよいよ冥王星に到達することです。

2006年、プラハで開催された国際天文学連合(IAU)の総会にて、惑星から準惑星に降格された冥王星。冥王星は太陽系外縁天体の代表として、彗星同様、太陽系の誕生の秘密を知る天体としてその探査が期待されています。

時を同じくして、2006年に打ち上げられた米国NASAの太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」は、2015年2月~8月にいよいよ冥王星に到着する予定です。探査機には1930年に冥王星を発見したクライド・トンボー(米国)の遺灰が積まれています。

冥王星を探査するのは史上初なので、どんなニュースが飛び込んでくるかが楽しみですが、太陽系の形成に関しての手がかりが得られるのかもしれません。

ニューホライズンズは、冥王星を詳しく調査した後、2016年から2020年頃まで、エッジワース・カイパーベルト内に存在している他の太陽系外縁天体も可能なら観測しようと予定していますが、まだ、詳細は決まっていません。その後は、パイオニアやボイジャー同様に太陽系を脱出する軌道を描き、遠い宇宙に旅立っていきます。

ところでなぜ、冥王星は惑星ではなくなってしまったのでしょう?

冥王星そのものがなくなった訳でも変化した訳でもありませんが、惑星の定義として、どうしてそうなったかを少し説明しておきましょう。

2006年8月、プラハで開催されたIAUの総会で、「惑星の定義」が採択されました。

その定義によると、惑星とは

(1)恒星(太陽)の周りを公転していること

(2)自己重力の影響でほぼ丸い形状をしていること(一定の重さ以上であること)

(3)その軌道上に衛星を除いて他に天体がないこと

の3つの条件がすべて当てはまる天体と定まりました。

冥王星の周りには、同じような軌道を回る太陽系外縁天体がいくつも存在しているため(3)の条件が満たされません。(1)と(2)は満たしますが、(3)を満たさない場合は「準惑星」と呼ぶことになりました。

この惑星定義によって太陽系の場合では、水星から海王星までが「惑星」で、それより外側にある冥王星のような丸い天体たちは、別名「冥王星型天体」と呼ばれるようになったのです。冥王星型天体で今現在わかっているのは、冥王星とさらに外側に位置するエリス、ハウメア、マケマケの4つのみですが、丸いと思われる候補天体がたくさん見つかってきていて、今後増えていくことは間違いありません。

なお、IAUの決議に従い、小惑星帯を回っている小惑星ケレスも「準惑星」と呼ばれます。しかし、岩石でできたケレスと氷の天体である冥王星型天体を一緒にするのは抵抗があります。小惑星はいままで通り、小惑星のままの方がわかりやすいことでしょう。

冥王星に近づくのは人類史上初めて。どんな姿を見せてくれるか楽しみです。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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