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消えた東日本の梅雨前線による暑さと、九州での梅雨前線による警報級の大雨

饒村曜気象予報士
日傘をさす日本人ビジネスマン(写真:アフロ)

令和6年(2024年)の梅雨

 令和6年(2024年)は、春先から太平洋高気圧の北への張り出しが弱く、各地で梅雨入りが遅れて、梅雨がないとされる北海道を除く全国で梅雨に入ったのは、梅雨前線上で発生した低気圧が日本海から東北地方に進み、ほぼ全国的に雨が降った6月23日になってからです(表)。

表 令和6年(2024年)の各地の梅雨入り・梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け
表 令和6年(2024年)の各地の梅雨入り・梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け

 一方、東北地方が梅雨入りした6月23日に、鹿児島県奄美地方が梅雨明けしました。3日前の6月20日に梅雨明けしていた沖縄地方とあわせ、南西諸島が梅雨明けとなっていますが、いずれも平年より早い梅雨明けでした。

乾いた暑さから熱中症の危険がある湿った暑さへ

 6月24日は、東北に遅い梅雨入りをもたらした梅雨前線が西日本まで南下し、西日本の太平洋側を中心に大雨となリました。

 しかし、東日本に南下した梅雨前線は、関東を通り越して、関東の南海上に達しましたので、関東を中心として晴れて強い日射が降り注ぎ、今年一番の暑さとなりました。

 6月24日に栃木県・佐野で観測した36.8度は、今年の全国一番の高温です。

 6月25日以降は、梅雨前線が西日本に停滞したものの、東日本付近の梅雨前線が天気図上から消えています(図1)。

 このため、西日本では曇りや雨となっており、雷を伴って激しい雨の降る所もありますが、東日本から北日本は大気が不安定で雲が広がりやすく、にわか雨や雷雨となる所がありますが、晴れて気温が上昇している所も多くなっています。

図1 東日本で消えた梅雨前線(6月26日9時)
図1 東日本で消えた梅雨前線(6月26日9時)

 6月26日に全国で一番気温が高かったのは、静岡県・静岡の35.8度、次いで、静岡県・清水の35.3度で、この2地点で最高気温が35度以上の猛暑日となりました。

 また、最高気温が30度以上の真夏日は134地点(気温を観測している全国914地点の約15パーセント)、25度以上の夏日は523地点(約57パーセント)でした(図2)。

図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(6月27日以降は予想)
図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(6月27日以降は予想)

 今年は、6月14日に真夏日418地点(約46パーセント)、6月12日に夏日825地点(約90パーセント)を観測していますので、真夏日と夏日はその時に比べれば少ないといえます。

 しかし、6月12日から14日の暑さは、大陸育ちの高気圧におおわれた所に、強い日射が加わってのものですので、湿度が比較的低い暑さです。

 今の暑さは、北上してきた太平洋高気圧におおわれる湿った暑さです。

 曇りや雨で日射がなくても気温が高くなり、熱中症になりやすい湿った暑さとなりますので、これまでの真夏日と、これからの真夏日は違うという意識で、熱中症対策を行うことが大切です。

東京の気温の推移

 令和6年(2024年)3月下旬以降の東京の最高気温と最低気温は、平年より高い日が多く、気温が下がっても平年並みでした(図3)。

図3 東京の令和6年(2024年)の最高気温と最低気温の推移(6月27日以降はウェザーマップの予報)
図3 東京の令和6年(2024年)の最高気温と最低気温の推移(6月27日以降はウェザーマップの予報)

 そして、6月23日に観測した33.4度が、今年、これまでの最高気温で、猛暑日はありません。

 しかし、真夏日と夏日は平年より多く、このまま予報通りだとすると、今年は6月末までに、真夏日が9日、夏日が50日を観測することになります。

 東京では、平年の6月末までの真夏日は4.2日、夏日は33.7日ですので、平年の1.5倍から2倍のペースで暑い日が多いということができます。

「梅雨の長い中休み」か「梅雨明け」か

 関東甲信地方は、6月21日に梅雨入りしましたが、梅雨入り後の東京は、雨の日が少なく、晴れて気温の高い日が多くなっています。

 ウェザーマップが発表した16日先までの天気予報によると、今週末は傘マーク(雨)と黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)です(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 東日本から一旦消えた梅雨前線が顕在化し、前線上に発生した低気圧が通過するからですが、その後は、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が続く予報です。

 降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEや、二番目に低いDが含まれている予報ですが、この予報では、「7月に入ると梅雨の長い中休みに入る」と捉えるのがいいのか、「7月早々に早い梅雨明けとなる」と考えるのがいいのか、気象庁の関東甲信の梅雨を担当する予報官は、非常に難しい判断を迫られると思います。

 これは、太平洋高気圧が7月上旬に強まり、梅雨前線を東北地方まで押し上げる予報となっているからです。

 梅雨前線が再び消えるわけではありません。

 仙台と福岡の16日先までの天気予報をみると、このことが良くわかります(図5)。

図5 仙台と福岡の16日先までの天気予報
図5 仙台と福岡の16日先までの天気予報

 仙台では、6月28日まではお日様マーク(晴れ)がありますが、6月29日以降は傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が続く予報となっています。

 これに対し、福岡では、6月28日に大雨となるなど、6月29日までは傘マーク(雨)がありますが、6月30日以降はお日様マーク(晴れ)の日が続く予報となっています。

 梅雨明けの平年は、関東甲信と東海、近畿、中国、九州北部は、ともに7月19日ですが、太平洋高気圧が強くなって梅雨前線を東北地方に押し上げたままになると気象庁の予報官が判断できれば、記録的に早い梅雨明け(遅い梅雨入りに早い梅雨明け)になると思います。

 また、東北地方に押し上げられた梅雨前線が南下してくると判断できれば、梅雨明けの発表はなく、梅雨の長い中休みになると思います。

 今年の梅雨は、全国的に梅雨入りが遅いなど、例年と違った様相を示しています。

 そして、梅雨明けも、例年と違った様相を示しそうですので、最新の気象情報に注意してください。

 中でも、気になるのは、梅雨末期の大雨、6月28日にかけての九州の警報級の大雨です。

九州で警報級の大雨

 東日本で消えた梅雨前線は、6月28日には、再び顕在化し、前線上で低気圧が発生する見込みです(図6)。

図6 予想天気図(6月28日9時の予想)
図6 予想天気図(6月28日9時の予想)

 低気圧や前線に向かって、太平洋高気圧の周辺を回るように、南海上から暖かくて湿った空気が北上してきますので、九州では、6月27日から28日にかけて雷を伴った非常に激しい雨が降る見込みです。

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに大雨警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で示しています。

 これによると、6月27日は鹿児島県(奄美を除く)で、28日は九州北部で「高」となっている他、西日本を中心に広い範囲で「中」があります(図7)。

図7 大雨に関する早期注意情報(上段は6月27日、下段は6月28日)
図7 大雨に関する早期注意情報(上段は6月27日、下段は6月28日)

 九州を中心として、警報級の大雨が降りますので、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水やはん濫に警戒してください。

図1、図4、図5、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

図6、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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