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東北南部と東北北部も梅雨入りへ・50年位前まで北海道も梅雨入りの情報を発表していた

饒村曜気象予報士
豪雨災害(提供:イメージマート)

令和6年(2024年)の梅雨入り

 令和6年(2024年)6月23日は、梅雨前線上で発生した低気圧が日本海から東北地方に進みました。

 このため、西日本から東北の広い範囲で雨となり、西日本を中心に雷を伴って非常に激しく降りました(図1)。

図1 東北地方を梅雨入りさせた日本海の低気圧に伴う雲(6月23日9時)
図1 東北地方を梅雨入りさせた日本海の低気圧に伴う雲(6月23日9時)

 この雨で、東北南部、東北北部ともに梅雨入りしました。

 これで、今年、令和6年(2024年)は、梅雨がないとされる北海道を除く全国で梅雨に入ったことになります。

 今年は、春先から太平洋高気圧の北への張り出しが弱く、各地で梅雨入りが遅れており、近畿から東海地方で6月21日、中国、北陸地方で6月22日と11日以上遅い梅雨入りでした。

 そして、6月23日に東北南部と東北北部で、平年より8日から11日遅い梅雨入りをしたのです(表1)。

表1 令和6年(2024年)の各地の梅雨入り・梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け
表1 令和6年(2024年)の各地の梅雨入り・梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け

 一方、東北地方が梅雨入りした6月23日に、鹿児島県奄美地方が梅雨明けをしました。3日前の6月20日に梅雨明けしていた沖縄地方とあわせ、南西諸島が梅雨明けとなっていますが、いずれも平年より早い梅雨明けでした。

 つまり、沖縄・奄美地方の梅雨は、遅く始まって早く終わるという短い期間の梅雨でした。

 しかし、短期集中型の雨が降ったことにより、梅雨期間の雨量は平年より多くなりました。

乾いた暑さから熱中症の危険がある湿った暑さへ

 6月23日に全国で一番気温が高かったのは、鹿児島県・屋久島の34.6度で、最高気温が35度以上の猛暑日を記録した所はありませんでした。

 また、ほぼ全国的に雨となったことで、最高気温が30度以上の真夏日は86地点(気温を観測している全国914地点の約9パーセント)、25度以上の夏日は483地点(約53パーセント)でした(図2)。

図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(6月24日以降は予想)
図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(6月24日以降は予想)

 6月24日は、梅雨明けした南西諸島は晴れるものの、全国的に雨が降りやすい天気の見込みですが、南海上から暖かくて湿った空気が北上してきますので、気温は上昇する見込みです。

 特に関東北部は気温が高くなり、群馬県・前橋で38度、茨城県・土浦や埼玉県・熊谷で36度という最高気温の予想です(図3)。

図3 予想最高気温の分布(6月24日の予想)
図3 予想最高気温の分布(6月24日の予想)

 今年のこれまでの最高気温は、6月14日に京都で観測した35.9度ですので、今年一番の暑さを更新しそうです。

 また、猛暑日は今年最多も41地点(約4パーセント)、真夏日は321地点(約35パーセント)、夏日が675地点(約74パーセント)に達すると予測されています。

 今年は、6月14日に真夏日418地点(約46パーセント)、6月12日に夏日825地点(約90パーセント)を観測していますので、真夏日と夏日はその時に比べれば少ないといえます。

 しかし、これまでの暑さは、大陸育ちの高気圧におおわれたところに、強い日射が加わってのものですので、湿度が比較的低い暑さです。

 これからの暑さは、北上した梅雨前線にともなって北上してきた太平洋高気圧におおわれる湿った暑さです。

 曇りや雨で日射がなくても気温が高くなり、熱中症になりやすい湿った暑さとなりますので、これまでの30度と、これからの30度は違うという意識で、熱中症対策を行うことが大切です。

昔は北海道も梅雨の情報

 蝦夷梅雨(えぞつゆ)という言葉があります。

 5月下旬から6月上旬にかけ、オホーツク海高気圧の影響を受け、湿度が高くて小雨や曇りの日が10~15日ほど続き、日照不足になる現象です。時には急に冷え込み、肌寒くなるので、「リラ冷え」とも言われます。リラ(ライラック)の花が咲く頃の現象だからです。

 梅雨と蝦夷梅雨(リラ冷え)は違うものです。東北北部まで梅雨に入ったから、そろそろ北海道も蝦夷梅雨に、ということにはなりません。

 北海道には梅雨がないといわれ、現在の気象庁の梅雨入り・梅雨明けのリストには北海道は入っていません。

 北上する梅雨前線が北海道を通る頃には弱まったり、しかも足早であることから北海道では、梅雨と呼ばれる現象が顕著ではないことが多いからですが、昔は、気象庁でも北海道の梅雨入りや梅雨明けを発表していました。

 新聞等でも、北海道の梅雨入りの記事等が掲載されていました。

引用:昭和44年(1969年)6月17日読売新聞夕刊
全国シトシト
本格的ツユ入り
「早すぎたツユ入り宣言」から11日目の17日、ようやく北海道から九州北部までほぼ全国的に本格的にツユ入りを迎えた。
気象庁の観測によると、きのう本州ひがし海上にあった高気圧が東に移動したのにともなって梅雨前線がぐっと北上。さらに…

 日本気象協会が毎年発行し、気象庁が監修していた気象年鑑から、北海道の梅雨入りに関する資料を抜粋すると表2のようになります。

表2 気象年鑑に記載された北海道の梅雨
表2 気象年鑑に記載された北海道の梅雨

 気象年鑑には、昭和44年(1969年)について、北海道の記述はありませんが、新聞記事から6月17日に梅雨入りしたことがわかります。

 北海道の梅雨について言及がない年は、北海道で梅雨があった可能性が高いのですが、昭和45年(1970年)と昭和47年(1972年)から昭和49年(1974年)は北海道で梅雨がありません。

 そして、昭和50年(1975年)以降は、「北海道に梅雨」がないという前提で梅雨に関する情報が発表となっています。 

 つまり、「北海道には梅雨がない」といわれて約50年ということになります。

図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表1の出典:気象庁ホームページ。

表2の出典:「気象年鑑(気象庁監修、日本気象協会)」をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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