弱いメンタルにさよなら!「変化に強くなる」2つの方法
メディアとの温度差
昨今、メディアの取材を受けるとき、必ずといっていいほど強い違和感を覚えます。メディアの多くの方が、現場を正しく知らないからだ、と私は受け止めています。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。単なる研修講師ではなく、「絶対達成」をテーマに企業を支援します。ですから、現場の本当の姿を知っています。これだけ外部環境が猛スピードで変化しているにもかかわらず、現場における変化スピードはきわめて遅い。メディアの方々は変化に対応している先進的な企業にばかり取材をしているから、感覚がマヒしているのでしょう。
「いまだにそんな会社があるのですか?」
と質問されることが多いのです。「そんな会社しかありませんが」と私は言いたいし、確かめたいなら一緒に現場へ来ますか? とも促したい。
外部環境の変化スピード
「グローバル化」「少子高齢化」などといった環境の変化要因について、知らない人はいないはずです。誰もがずっと意識してきたキーワード。変わらなければいけない、誰もがそう思いながら過ごしてきた。しかし誰も変わらなかった。「なんだかんだと世間では騒がれてきたが、変化に対応しなくてもなんとかなっている」というのが、正しい現場感覚です。
おそろしいほど現場は変わっていません。いまだ変わろうともしていません。
しかし現在、外部環境の変化スピードはすさまじい勢いで上昇しています。本国会に提出された「働き方改革関連法案」、そして「70年ぶりの大改革」をめざすと宣言した安倍首相の強い口調にもあらわれています。
AIやロボット技術の進化も、無関心でいられないほど産業構造に影響を及ぼすようになってきました。野村総研が、日本の労働人口の約5割が、AI(人工知能)やロボット技術によって置換可能、と発表したのは有名な話。オックスフォード大学が公表した、「今後10年で消える職業」という記事と相まって、多くの人を不安にさせています。
変化の強さをあらわすファクターとして取り上げたいのは、メガバンクの反応でしょう。
みずほフィナンシャルグループは、2026年度末までにグループの従業員を1万9000人減らす方針を打ちだしました。また、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループも大幅に人員を減らす方向で話が進んでいます。
景気の影響ではなく、産業の構造に起因する不況――「構造不況」が原因であるため、問題は深刻。「大規模リストラ」の真因を、多くの人が理解しづらいからです。
川の流れでたとえてみる
川の流れでたとえてみましょう。
水深の浅いところでは流れが速くても、水深の深いところでは、流れは遅くなります。川底にある石や岩、ゴミなどによって運動エネルギーの損失抵抗が最大になるからです。
メディアが日々取り上げていることは「水深の浅いところ」。ですから、とても流れが速い。いっぽう現場は「水深の深いところ」。とても流れが遅い。現状を現状のままにしたいという心理欲求――「現状維持バイアス」を、多くの方がはずせないからです。
さて、川底にしがみつき、変化を拒んでいるのは、どんな方でしょうか。答えは、ミドル層――企業の中間管理職です。経営者は常に外部環境をウォッチしています。若い人たちも、環境の移り変わりには敏感です。しかし、過去にいい時代を経験した中間層は、外部よりも内部にばかり目を向けています。
先述したとおり、「なんだかんだ言われてきたが、変わらなくても結局は何とかなった」と、身をもって体験した中間層は、「成功の呪縛」を断つことができません。流れに逆らうつもりはないですが、流れに乗るつもりもないのです。
恐ろしい自信過剰バイアス
「成功の呪縛」を断つことができない人たちは、頭でわかっていても変化を拒みつづけます。理由は、変化に対するストレスを甘く見ているからです。
「本当に変化すべきときがきたら、そのときは変化するから」
とたいてい口にします。あきらかに「自信過剰バイアス」。
「私は、やるときはやれるんだ」と言っていても、やれないのです。私は現場で、このような方々をかぞえきれないほど目にしてきました。
社長の厳命で、組織改革を託されても、何をどうしたらいいのかわからずパニックになる方があとを絶ちません。私と社長とでプランニングしても、現場を取りしきる部長や課長たちが思考停止状態になって動けないことも多々あります。
その実態を13年近く見てきて断言できるのは、どんなに外部環境が変化しても、現場を任されているマネジャーたちが、おそろしいほど変化していない、ということです。
川底の石にへばりつくように泳いでいる魚が、少しばかり泳ぎ方を変えてもダメ。前述したとおり、川底の石や岩までさらっていきそうな激流が、今まさに押し寄せてこようとしています。流れの速い、水深の浅いところでも溺れないぐらいにタフに変化できているか、が問われているのです。
長年、変化の少ない場所にいつづけ、変化に対するストレス耐性――「変化耐性」が衰えていると、大変なことになります。私どもが現場でコンサルティングをはじめると、若い人たちではなく、30代後半から40代、50代の人が辞めていくことも珍しくありません。ちょっと行動を変えるだけなのに、精神的に参ってしまった、と訴える人も多いのです。
現状維持バイアスをはずすために
思考プログラムは過去の体験の「インパクト×回数」でできあがっています。頭でわかっていても、カラダが動かないのは、この思考プログラムが強く影響をしています。したがって、変化のない体験を繰り返し受けていると、思考プログラムはどんどん凝り固まっていきます。変化耐性が弱くなり、変化に強くなれないのです。
変化に強くなるためには2つの方法があります。
ひとつ目は「過去の体験を変えて、できあがっている思考プログラムそのものを変えること」。これは外科手術のようなものです。過去の体験そのものは変えられませんが、認識を変えることはできます。この方法であれば、今の思考プログラムを劇的に変えることはできるでしょう。
ふたつ目は「日々の体験を変えて、できあがっている思考プログラムを徐々に書き換えていくこと」。これはトレーニング、ストレッチのようなものです。固いカラダをほぐし、身体の柔軟性を高める努力と似ています。
人が大きく変わる53種類の「きっかけ」とは?で書いた「きっかけ」を意識しつつ、何か新しいこと(サムシングニュー)を常に心掛け、やりつづけることです。
どんなことでもかまいません。目的は「変化」だからです。葛藤を覚えるような「何か新しいこと」に挑戦してみましょう。少しずつ現状維持バイアスがはずれ、変化耐性もついてきます。水深の深いところから、水深の浅いところへと徐々に顔をだしていくのです。
私と同世代の40代、50代の人なら、自分よりも10歳、20歳以上、若い人と積極的に交流してはいかがでしょうか。若者が集まる場所へ顔をだすのです。苦手でも、スマホやSNSに触れてみましょう。ファッションにも流行を取り入れるのです。居心地のいいところに安住していてはいけません。変化に強くなるための、日ごろからのサムシングニューが大事なのです。