人が大きく変わる53種類の「きっかけ」とは?
人を変える「きっかけ」を知る
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。企業の現場に入り、人を変え、組織を変えるのが仕事です。年間100回以上、講演やセミナーの講師として全国をまわりますが、テクニックを伝えるだけで目標は達成しないため、実際に現場での指導がメインです。
12年以上、このような仕事をしてきて思うことがあります。それは、人を変える「きっかけ(トリガー)」は、人それぞれである、ということ。そして決して1回の「きっかけ」で劇的に変わるわけはない、ということです。
自分のペースで、何となく日常を過ごしていても、偶然自分を変える何らかの「出来事(イベント)」があり、それが「きっかけ」となって突然視野が広がったり、挑戦しよう、行動を変えようという考え方に変わったりすることもあります。
人を変える「きっかけ」は多種多様にあります。そしてその「きっかけ」は必ず、いくつかの「要素(ファクター)」が組み合わさってできあがっています。それでは、以下に53種類の「要素」を紹介していきましょう。
「人」というファクター
人を変えるのは「人」である……これは、紛れもない事実だと思います。直接会って話を聞いたりすることで、自分を変える「きっかけ」をもらうこともあるでしょうし、本やテレビといった「媒体」を通じてその「人」を知り、自分を変える「きっかけ」を手に入れることもあります。
「人」を、さらにいくつかの種類に分解してみましょう。
●家族・親族(親、兄弟、子ども、親戚など)
●恋人・配偶者
●友人
●先生・講師
●先輩・上司
●著名人
●仲間(同じ目的を共有する者)
●架空の人物(映画や小説、マンガ等の登場人物)
●巡り合わせによって知り合った人
●その他(名も知らぬ通りすがりの人、テレビで見かけた人等)
この中で、日常的に顔を合わせる人(家族や友人、上司など)が「きっかけファクター」になることもありますが、多くのケースで何らかのイベントとの組合せが必要と言えるでしょう。たとえば「恋人との別れ」「子どもの誕生」「先輩からの叱責」……などです。
いっぽう日常的に会わない方(著名人、テレビで見かけた人等)、特に旅先で偶然知り合った人、通院していた先の医師との出来事は、それそのものが「イベント」ですから、自分を変える「きっかけ」になりやすいとも言えます。
「イベント」というファクター
次に、どのような「イベント」によって人は変わるのか。変わる「きっかけ」になり得るのか列挙していきましょう。
●入学
●卒業
●就職・転職
●退職
●就任(リーダーやマネジャー等)
●昇進
●結婚
●出産
●旅行
●期間限定のプロジェクト
●離婚
●死別
大きく分けると、「出会い」と「別れ」。大学や資格学校に入学したり、会社に就職したり、新たなプロジェクトを任されたり、旅行したりすることで、誰かとの「出会い」があります。そして卒業や退職、離婚や死別によって、誰かとの「別れ」があります。これらのイベントによって人が大きく変わる「きっかけ」をもたらされることがあります。
「体験」というファクター
次に、どのような「体験」によって人は変わるのか。変わる「きっかけ」になり得るのか列挙していきましょう。
●成功
●失敗・挫折
●発見
●消失
成功や失敗、挫折の体験によって、人は大きく変わると言います。ただ何らかのプロジェクトを任されたからといって人が変わるわけではなく、そこでの成功や失敗があったからこそ、それが変わる「きっかけ」になることがあるのです。テレビから流れてくる世界の惨状、戦争で苦しむ人たちを見て何かに気付く(発見)こともあります。自分の責任ではなくとも、お金や大事なものを失うことで変わる「きっかけ」を手に入れることもあります。
「対象」というファクター
次に、どのような「対象」を手に入れること(失うこと)で人は変わるのか。変わる「きっかけ」になり得る対象を列挙していきましょう。
●お金
●モノ
●サービス
何らかの行動をして成功し、お金を手にすることが「きっかけ」で、大きく自分を変える人がいます。また、何もしなくても幸運にもお金に恵まれて変わる人もいれば、逆にお金を失ったことが「きっかけ」で変化する人もいます。同じように、形あるモノを手に入れること、失うことで変わる人もいます。無形のサービスに触れることが「きっかけ」になる人もいるでしょう。
多くの人にインパクトがあるのは、やはり「お金」です。その額が大きければ大きいほどインパクトが強いと言えるでしょう。無視できないファクターです。
「場所」というファクター
次に、どのような「場所」にいることで人は変わるのか。変わる「きっかけ」になり得るのか列挙していきましょう。
●家族の場所(家など)
●学ぶ場所(学校や研修所など)
●働く場所(オフィス、店舗、工場など)
●エンターティメントの場所(コンサート、スポーツ観戦の場所など)
●仲間との場所(ボランティアや社会活動をする場所など)
●非日常の場所(旅行先など)
日常的な場所では、何らかの「イベント」や「体験」が組み合わさることで、変わる「きっかけ」を運んでくれることでしょう。そのようなイベントがなければ特別な場所へ行かない限り、何らかの「きっかけ」と出会うことは難しいかもしれません。
「媒体」というファクター
次に、どのような「媒体」を通して人は変わるのか。変わる「きっかけ」になり得る情報が入ってくるのか列挙していきましょう。
●本
●テレビ、ラジオ
●新聞、雑誌
●ネットの情報
●ブログやSNS(フェイスブック、ツイッター)
●講演など
何らかの具体的な「情報」を手にすることで、人は大きな気付きを得るものです。一番インパクトのある媒体は「人」であり、その「人」が発する言葉や姿勢から、多くの人は強い影響を手にします。影響力が高い「人」の言葉ほど、変わる「きっかけ」をもらえる可能性が高いですから、その「人」が書いた本や出演しているテレビ、雑誌やネットの情報に触れることで、人生を変えるほどの「きっかけ」を手にすることができるかもしれません。
「情報」というファクター
次に、どのような「情報」に触れることで人は変わるのか。変わる「きっかけ」になる情報そのものの属性を列挙していきましょう。
●テキスト、言葉
●イメージ画像、映像
●音、音楽
●感覚(味覚、嗅覚、触覚など)
情報というのはいわゆる「五感」で大別できます。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚です。人間が知覚できる「感覚」で、情報を区分するとわかりやすいでしょう。誰かが発する言葉や、本やネットに書かれているテキストと出会って、変わる「きっかけ」をもらう人は多いでしょう。しかし絵や音楽、食べ物など、言葉にできない別の感覚に強い影響を受ける人もまた多いのです。
旅先の風景や川のせせらぎ、直接的な体の痛み、快楽によって、変わる「きっかけ」を手に入れることもあります。
「タイミング」というファクター
次に、どの「タイミング」が人を変えやすいのか。変わる「きっかけ」を得やすいタイミングについて列挙していきましょう。
●朝
●休日
●月のはじめ
●一年や年度の切り替わり
●春夏秋冬
外部環境が変化することによって、変わる「きっかけ」を手に入れやすいでしょう。したがって、何もイベントを絡めないなら一日の中で一番変わりやすいのは「朝」と言えます。「月のはじめ」もそうですし、「正月」「新年度」なども重要なファクターです。何もイベントを絡めなくても、「新しい年を迎えるわけだし、来年こそは変わろう」と決意しやすいタイミングと言えます。
自分が好きな季節に変わりやすい人もいることでしょう。毎年定番のイベント……たとえばスキーやマラソンなどを毎年されている人は、冬が近づくと、新しい出会いがあったり、何か新しい発想が芽生える予感を持てるかもしれません。
「コンディション」というファクター
最後に、どの「コンディション」が人を変えやすいのか。変わる「きっかけ」を得やすいコンディションについて列挙していきましょう。
●体のコンディション
●心のコンディション
●環境のコンディション
体調が良いことが普通だとすると、体の調子を落としているときのほうが、変わる「きっかけ」を得やすい人は多いでしょう。病気をして「もうこのままではいけない」「病気が治ったら、あれをしよう、これをしよう」と誓ったりする人は決して少なくないはずです。心の状態も同じです。
環境のコンディションも重要です。職場の雰囲気が悪くなってきた。関わっているプロジェクトの状態がすごく良くなってきた。このような状態の変化によって変わる「きっかけ」を手にすることも多いでしょう。
以前、同じような本を読んでも何とも思わなかったのに、体調がすごく悪いとき、心の状態が貧しいときに読んだら、ものすごく感銘を受けた。涙が出て止まらなかった。もう今までの自分とは決別して、新しい自分に生まれ変わろう。このように決心することもあります。「コンディション」は極めて重要なファクターですが、見落としがちです。
他者がどのようにして変わったのか。その「きっかけ」を聞いてもあまり参考にならないのと同じ。自分の過去と照らし合わせても、参考にならないのはコンディションが違うせいかもしれません。
「あのときは、こうすることで自分の決心が固まったのに、今は何度同じことをしても気持ちが揺らいでしまう。どうしてだろう」
このような疑問を覚えたら、自分や周りの「コンディション」について観察してみましょう。
自分を変える「きっかけ」を見つける
どんな「きっかけ」があると人は変わるのか? ……これを考えたとき、たった一つのファクターで人が変わることはない、と覚えておきましょう。必ず複合的に組み合わさって「きっかけ」はできあがっているのです。
友人が「旅に出るといいよ」と言っても、さまざまな「旅」の種類があります。旅に出かけるタイミング。コンディションを考えなければなりません。何か大きなイベントも組み合わさった旅なのか。見知らぬ誰かと出会うための旅なのか。過去に思い出を共有した人に会いに行くための旅なのか。美しい景色に身を委ねて自分と向き合うための旅なのか。
これまでどんな「きっかけ」で自分が変わってきたのか、過去を振り返り、自己分析してみましょう。そしてその傾向を探るのです。いくつかのパターンがあると言えるでしょう。人生を大きく変えるほどの「きっかけ」を探すのはやめましょう。それは偶然でしかた狙えません。小さな「きっかけ」をたくさん手にして、自分を変えていくのです。
私の場合は圧倒的に「本」か「セミナー」です。面白いことに、ベストセラーの本よりも、小さな本屋さんで何気なく買った本を読んだときに大きな気付きを得ることが多いのです。ですから、出張先で小さな本屋さんにより、目についた本を2~3冊まとめ買いすることはよくあります。
セミナーでも、これまでたくさんの「きっかけ」をもらいました。厳しい講師のほうが、私は大きな気付きを得やすいようです。高額の、緊張感のあるセミナーに参加して自分を追い込んだほうが私はいいですね。しかも1回で終わるようなセミナーではなく、10回コースとか、半年コースとかのほうが私には向いています。受講者同士が団結し、良い雰囲気(コンディション)になりやすいからでしょう。講師からだけでなく、同じ受講者からも、いろいろな「きっかけ」をいただきます。
自分を変えたい。もっと自分の人生を良くしたい、と真剣に考えている人は多いでしょう。
どうすればいいかわかっているのだけれど、なかなか自分を変えることができない。何かいい「きっかけ」さえあれば……。と、変わる「きっかけ」を求めている人は、どんな「きっかけ」が自分を変えてくれるのか、自己分析して「きっかけ」の要素分解をしてみましょう。そして実験を繰り返すのです。
待っていても、時間ばかり過ぎてしまいます。他者の意見もあまり参考にならないので、変わるために自分と向き合うことが大切です。