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鴻海がシャープを実質的買収するとはいえ、いまや「日の丸」製造業ってそもそも存在するのか

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
鴻海によるシャープの実質的買収は「日の丸」製造業の終わりといわれたが……。(写真:長田洋平/アフロ)

鴻海のシャープ買収と「日の丸」製造業の危機

鴻海のシャープ買収について、寂しさも手伝って「日の丸」製造業が終焉するように述べるひとたちがいます。

日の丸家電、外資の軍門に下る

出典:産経ニュース

または、このような感じです。

シャープ再建、鴻海軸に 追いつめられた「日の丸」

出典:日経新聞 電子版

ニュースを引用するまでもなく、一般人の感覚からしても「日本メーカーがなくなるのか」と、気持ち良いものではありません。むしろ暗いニュースとさえ感じる人が多いはずです。

その感情にたいして私はおおいに共感するものの、同時に違和感も抱きます。そもそもグローバル化している時代にあって、日本メーカーとはそもそもどういう意味をもつのでしょうか。さらに、進んで考えると、すでに、純粋な日本企業(ステークホルダーがすべて日本人)というのは存在するのでしょうか。

「日の丸」というのは幻想で、むしろ、すでに外国資本や外国人株主比率が高いのではないか。調べてみました。

”日本”メーカー等の外国人株主比率

もちろん、「日の丸」とは何か? 日系、外資系、ガバナンス、議決権、実質的支配……さまざまな問題があるものの、ここでは、単純に外国人の持株比率を調べてみました。

東洋経済新報社の方に、上場企業各社の外国人持株比率を訊いてみたり、いろいろ教えてもらったりした結果、代表的なものを抽出します。なお、3月4日時点となっています。

中外製薬は外国人持株比率76.45%

ドンキホーテHLDは外国人持株比率74%

ラオックスは外国人持株比率73.59%

日産自動車は外国人持株比率72.53%

すかいらーくは外国人持株比率67.83%

トレンドマイクロは外国人持株比率66.05%

昭和シェル石油は外国人持株比率65.85%

オリックスは外国人持株比率62.15%

HOYAは外国人持株比率61.47%

ミスミグループ本社は外国人持株比率60.51%

レナウンは外国人持株比率56.05%

ソニーは外国人持株比率55.81%

レオパレス21は外国人持株比率55.34%

大東建託は外国人持株比率55.3%

任天堂は外国人持株比率53.14%

アステラス製薬は外国人持株比率51.38%

ベルシステム24Hは外国人持株比率50.1%

花王は外国人持株比率49.17%

サイバエージェントは外国人持株比率49.02%

と、代表的なものを抽出しただけで、きわめて高い比率です。これは、ここにあげた企業がケシカランという意図はまったくありません。私としては、そういうものだろうな、ていどの感想で事実だけを述べておきました。

なお、強く日本イメージのあるトヨタ自動車も「株式の状況」では、外国法人等の持株比率が31.12%であると、高い比率を伝えています。

「日の丸」製造業?という幻想

調べていただけると、私があげた企業以外も、相当な株主比率が外国人であると示しています。

「いやいや、トップが外国人であるのが問題なんだ」とか「実質的に外国に利用されるのがダメなんだ」といった感情的議論もありうるでしょう。ただ、日本企業も、相当な数の外国企業を買収したり支配したりしていますので、日本企業の外国企業買収も究極的な意味ではダメということになるでしょうか。

なお、私は「いや日本企業は外国企業を買収したあとも、その企業を優しく扱い、搾取することはしない。買収された側も満足している」といった論について賛同したいところですが、それを統計的に指し示すデータ(アンケートやルポや記事ではなく定量的に示すデータ)が見つけられず、賛同できずにいます。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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