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最悪のお辞儀、場違いネクタイ… Zホールディングス事業方針発表会の演出の拙さ

石川慶子危機管理/広報コンサルタント

誰もが憧れるウォーキングプレゼンテーション。Zホールディングスの事業方針発表会(2021年3月1日)でもみられました。LINEとYAHOO!が経営統合した新会社の姿を見せる重要な場でしたが、基本的なマナー不足が目立つ残念な演出でした。川邊健太郎代表取締役社長Co-CEO、出澤剛代表取締役Co-CEO共に、個性的かつ笑顔が素敵な経営者ですが、それを台無しにした演出の拙さはどこにあったのかを詳しく解説します。

全体の組み立ては工夫がありました。リアルの会場に記者を集め、最初にプロモーション動画。30分で動画が終了。その後リアルでの記者説明会を30分。合計1時間でした。この最初の30分間動画は意欲的。最初の数分は通常のプロモーション動画、両社の歴史、写真の意気込みコメント。ここまではいいのです。しかし、それが終わると、今度は、川邊健太郎代表取締役社長Co-CEO、出澤剛代表取締役Co-CEOが画面に登場、お二人揃っての立ち姿。ここで残念ながら、悪目立ちしたネクタイとだらしのない立ち姿に、しばし目を疑い、唖然としてしまいました。

美しい歩き方やボディランゲージを指導しているスマートアクトディレクターの鷹松香奈子氏は、「最初に人前に立つ時には、足を揃えて立つのがマナーです。最悪だったのは足を開いたままのお辞儀です。さすがにこれはないでしょう、と思いました。お辞儀は日本の文化でありながら、なかなか美しいお辞儀ができる人は少ないと言えます。それにしても足を開いたままのお辞儀はマナーから外れすぎです」と厳しく指摘しました。「手もずっと組み手でした。これは男性でよくありがちですが、マナー上避けた方がよいでしょう。全体通じてほぼ棒立ち状態で体を上手に使えていませんでした。歩く時も下を見ていましたし、手を上げた時も体よりも後ろにいってしまい不自然でした。ウォーキングプレゼンテーションへの挑戦はとても素晴らしいのですが、これに振付をする人がいなかったのでしょう。残念で仕方ありません」

そして目立ったのがストライプのネクタイ。生地の光沢感と色のコントラストが強いため、目がちらついて気になって仕方がありませんでした。そもそもZホールディングスという新会社としての発表会なのですから、LINEとYAHOO!のロゴカラーにこだわるストライプのネクタイをする必要があったのか疑問です。それよりは、「Z」カラーを新しく打ち出し、Co-CEOがもっとも魅力的に見えるスタイルにした方がよかったのではないかと思います。

ビジネススーツに詳しいスタイリストの高野いせこ氏は、ストライプのネクタイは公式の場では避けるのが国際的マナーだと説明しています。「日本人は知らない方が多いのですが、ストライプのネクタイの起源や歴史を紐解くとわかります。いろいろな意味を持ってしまうため、一種のリスクとなります。服装にはメッセージ性があるということです。それゆえ、公式の場では避けるのがビジネススーツにおける国際的な着こなしマナーとなります」と、リスクの観点を指摘。「カンパニーカラーに合わせたネクタイを選ぶ会社や社長は多いのですが、ネクタイだけでなく、チーフとの組み合わせなどで演出は可能です。まずは、ビジネススーツの歴史やマナーを知った上で服装演出を工夫されたらよいのではないでしょうか。髪型、髭も一考する必要がありますね。お二人とももっと魅力的になるはずです。もったいない」

一番気になったのが、事前の練習方法。そもそも舞台に立つ場合はしっかりしたリハーサルが大切。舞台での俳優経験がある自己演出プロデューサーの山口和子氏は、練習方法が悪いと指摘しました。「段取りだけしたのではないでしょうか。このスライドでこの位置に移動する。ここで手を上げるといった確認のみだったのでは。カンペの位置も悪いですね、上にあるので、目線も上、顎も上がってしまい声が出しにくい。舞台演出全体がプロフェッショナルではありません」

ウォーキングプレゼンテーションでは、力を抜いて余裕を見せることが大切です。間違えないようにすることにこだわりすぎていたといえます。言われた通りにセリフを言う、言われた通りに移動することばかりに注意が払われ、肝心の主役二人はカチカチで笑顔さえありませんでした。その緊張がそのまま見ている人に伝わってきてしまうのでこちらもハラハラして見てしまいました。もっとリラックスして、新生を楽しんでいる演出ができたらよかったのだろうと思います。新会社の知名度向上、ブランディングのためには、演出を担当する広報、秘書、プロジェクトチームの知識、努力も欠かせません。私達の厳しい指摘に懲りず、これからもウォーキングプレゼンテーションには挑戦してほしいと思います。

【メディアトレーニング座談会 Zホールディングス 事業方針説明会】

1回目:全体の印象と課題

https://www.youtube.com/watch?v=R-JAz3HqRNo&t=0s

2回目:ウォーキングプレゼンテーションにおける注意ポイント

https://www.youtube.com/watch?v=ryC7MPYZkeQ&t=17s

3回目:ネクタイの国際的マナー

https://www.youtube.com/watch?v=acApHzWYfgg

【ウォーキングプレゼンテーション成功物語ブログ】

https://ishikawakeiko.net/2019/12/30/1230/

<参考サイト>

●Zホールディングス事業方針説明会

https://www.z-holdings.co.jp/ir/20210301bisb/

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

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