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NVIDIAの死角とは? AI半導体シェア70〜95%、粗利益率78%が意味するもの

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米NVIDIA(エヌビディア)は、AI(人工知能)向け半導体の需要増に支えられ快走が続く。一方、クラウドサービス大手が独自AI半導体の開発に注力しており、今後顧客がライバルになる恐れも出てきた。

AI半導体市場で圧倒的優位性

みずほ証券の分析によると、米オープンAIの「GPT」のようなAIモデルに使われる半導体の市場で、エヌビディアは70〜95%のシェアを持つ。

同社の強力な価格決定力を裏づけるのは、78%という高い売上高総利益率(粗利益率)だ。これはネット上のサービスではなく、モノを販売するハードウエア企業として、驚異的に高い数字だ

米CNBCによると、エヌビディアはAI半導体市場で圧倒的な優位性を持ち、一部の専門家から「堀に囲まれた城」といわれている。

主力のGPU(画像処理半導体)「H100」とソフトウエア「CUDA」によって大きく先行しており、代替製品への切り替えが考えにくい状況だ。CUDAはCPU(中央演算処理装置)からエヌビディアのGPUに命令を送り、実行処理するためのソフトウエア開発環境である。

NVIDIAの大口顧客はITビッグ3

しかし、エヌビディアにとって今後課題になるのは、最大の顧客と競い合わなければならないことかもしれないと指摘されている。

米アマゾン・ドット・コムや米グーグル、米マイクロソフトなどクラウドサービスを手がける企業は、自社サービス向けAI半導体を独自開発しており、エヌビディアへの依存を減らそうとしている。今後これら企業の半導体開発が進めば、エヌビディアにとって顧客はライバルと化す。

現在、これらIT(情報技術)ビッグ3に米オラクルを加えた4社がエヌビディアの大口顧客である。この4社から得ている収益はエヌビディアの売上高の4割以上を占める。

エヌビディアの事業別売上高/直近はQ1FY2025=2024年2〜4月期(グラフ出所、独Statista)
エヌビディアの事業別売上高/直近はQ1FY2025=2024年2〜4月期(グラフ出所、独Statista)

 米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Service、AWS)は、2018年にAI専用プロセッサー「Inferentia」を開発した。機械学習(マシンラーニング)の推論に特化しており、処理コストを大幅に削減できるというものだ。AWSは2021年に機械学習のトレーニング専用半導体「Trainium」を発表し、23年には、その第2世代版「Trainium2」を発表した。

マイクロソフトは2023年、データセンターで生成AIを動かすための半導体「Maia」と、クラウドサービス用半導体「Cobalt」を発表した。

グーグルは機械学習のトレーニングや推論に特化した「Tensor Processing Unit(TPU)」を自社のクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」で提供している。2024年5月には第6世代のTPU「Trillium」を発表した。

AI処理はサーバーから端末へ

エヌビディアのデータセンター向け半導体事業に対する最大の脅威は、処理が行われる場所の変化かもしれないとCNBCは指摘する。

オープンAIが開発したような大規模モデルは、推論のためにGPUの巨大なクラスターを必要とするが、アップルやマイクロソフトのような企業は、より少ない電力とデータで動作し、バッテリー駆動のデバイス上で動作する「小規模モデル」を開発している。

これらモデルの能力は最新の「Chat(チャット)GPT」のようなレベルには達しない。しかし、テキストの要約や画像検索など、日常生活の様々な用途に利用できる。こうしたIT大手の新たな動きもエヌビディアにとっての潜在的な脅威だと指摘されている

筆者からの補足コメント:
エヌビディアが5月に発表した2024年2〜4月の決算は、売上高が260億4400万ドル(約4兆800億円)でした。前年同期の3.6倍となり、前四半期に続き200億ドルを超えました。過去3四半期、同社売上高の前年同期からの伸びは、3倍、3.7倍、3.6倍と推移しており快走が続いています。純利益は148億8100万ドル(約2兆3300億円)で、7.3倍。売上高、純利益ともに過去最高を更新しました。エヌビディアのジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は、「次の産業革命が始まった。当社の顧客は新しいタイプのデータセンターであるAIファクトリーを構築して、新しい商品である人工知能を生産している」と自信を示しています。

エヌビディアの売上高推移/直近はQ1FY2025=2024年2〜4月期(グラフ出所、独Statista)
エヌビディアの売上高推移/直近はQ1FY2025=2024年2〜4月期(グラフ出所、独Statista)

  • (本コラム記事は「JBpress」2024年6月7日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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