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大相撲初場所、夢への思い胸に奮闘の一人大関・貴景勝 幕下では期待の落合が活躍、史上初の快挙は?

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
2敗目を喫すも優勝争い先頭に立つ大関・貴景勝(写真:毎日新聞社/アフロ)

大相撲初場所はいよいよ終盤戦に突入した。昨日11日目終了時点で、トップは一人大関の貴景勝と平幕の阿武咲。3敗の琴勝峰、玉鷲が2人を追う展開となっている。

貴景勝に土 阿武咲が星を伸ばす

2敗で貴景勝を追う阿武咲と琴勝峰が11日目に直接対決。どちらが勝ってもおかしくない一番だったが、立ち合い当たって押し込んできた琴勝峰を阿武咲が抱え込んですくい投げ。今場所は阿武咲らしさ全開の元気な相撲が見られていて喜ばしい。特に序盤の取組は、見ていて気持ちのいいものばかりだった。琴勝峰は1歩後退となったものの、持ち前の体の柔らかさを生かして食らいついていけるか。

注目の結びの一番。貴景勝は新三役・琴ノ若の挑戦を受けた。これまでの対戦成績は5対1と、大関が有利かと思われた。しかし――。

立ち合いで琴ノ若が当たり勝った。大関も懸命に応戦するが、琴ノ若が冷静に我慢し続ける。そして、大関が思わず引いてしまったところを琴ノ若が思い切って前に出ると、そのまま土俵下に勢いよく押し倒した。好調だった貴景勝に二度目の土。優勝争いの行方はまだまだわからなくなってしまった。

夢に届くか、貴景勝

今場所、好成績・好内容での優勝ならば綱取りの可能性があるとされる貴景勝。ちょうど3年前に彼を取材したときの言葉が脳内を反芻する。

「押し相撲一本ではプロに入っても関取にはなれないと言われ、関取になったら幕内には入れないと言われ、幕内に入ったら三役は無理、三役になったら大関は無理、大関になったら横綱は無理だと、土俵人生でずっと言われ続けてきました」

嫌でも耳に入ってきてしまう雑念をはねのけ続け、強い反骨精神でここまでのし上がってきた。上り切ろうとしているその最後の壁は高い――。

照ノ富士が横綱に上がったときは、「支度部屋で、隣で照ノ富士関が綱を締めているのを見て、あらためて自分もなりたいなと強く思いました」とも語った大関。長く見てきた夢を、自らの手で現実のものにできるか。本人は「一日一番」を大切に考えているだろう。今日を含めてあと4日。見る側も一日一番、期待を込めて見守りたい。

幕下・落合が史上初の快挙なるか

また、毎場所のことながら幕下上位も面白い。なんといっても注目は幕下15枚目格付出でデビューしたばかりの落合(宮城野部屋)だ。名門・鳥取城北高校出身で、2020・2021年の高校横綱。プロに入ってからは、デビューしたてとは思えないほど堂々とした相撲っぷりで見る者を魅了する。昨日は同じく5戦全勝だった颯富士を相手にすることなく立ち合いから前に出て圧勝。“元高校横綱対決”を制し、史上初の1場所通過での十両昇進が見えてきた。

1横綱1大関で初場所を迎え、不安の声も多かった2023年だが、その憂いをかき消すような若手の台頭。角界の未来は、きっと明るい。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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