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ロシア軍が北朝鮮製KN-23弾道ミサイルの使用を再開した可能性、キーウ攻撃で4飛来2撃墜

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍司令部より2024年8月6日の撃墜戦果(赤枠は筆者の追記強調)

 8月6日のウクライナ迎撃戦闘では、ロシア軍が発射した弾道ミサイルや長距離自爆ドローンなど22発が飛来しウクライナ軍は19目標を撃墜しました(阻止率86%)。このうち弾道ミサイルはイスカンデルM(ロシア製)ないしKN-23(北朝鮮製)とされています。出典:ウクライナ空軍司令部

 これに先立ち昨日の8月5日にウクライナ軍事誌「ディフェンスエクスプレス」が「7月31日の攻撃でロシアは北朝鮮製KN-23弾道ミサイルを使用したが目標には届かなかった」と報道し、発見されたKN-23の残骸らしき部品の写真を掲載していました。出典:РФ під час удару 31 липня використала балістичну ракету КN-23 з КНДР, яка не долетіла до цілі | Defense Express

 7月31日の攻撃はシャヘド136自爆無人機が89機も飛来した時で(過去記事)、この日には弾道ミサイルは報告されていませんでした。ディフェンスエクスプレス誌によると7月31日のKN-23らしき飛翔体は迎撃していないのに目標に届いていなかったので、当日には正体がはっきりしていなかったので未報告だったようです。そして後から残骸の部品が発見されました。

 今日のミサイル攻撃で、ウクライナ軍は公式にロシア軍が北朝鮮製KN-23弾道ミサイルの使用を再開した可能性を示唆しました。ウクライナ側の認識では2024年2月27日以来の使用再開ということになります。ただしKN-23はイスカンデルMを模倣した設計で同じ地上発射式なので、レーダーで観測した飛行特性からでは見分けは付きません。残骸の部品を回収した後に調査分析してKN-23かどうか確定することになります。

※KN-23はアメリカ軍のコードネームであり、北朝鮮での正式名称は火星11カ(화성-11가)。ロシア製イスカンデルM弾道ミサイルを模倣した設計だが、イスカンデルMは直径95cmに対しKN-23は直径110cmとやや大きくなっている。

2024年8月6日ウクライナ迎撃戦闘・撃墜戦果

ウクライナ空軍司令部より2024年8月6日の撃墜戦果
ウクライナ空軍司令部より2024年8月6日の撃墜戦果
  • イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×4飛来2撃墜
  • Kh-59空対地ミサイル×2飛来2撃墜
  • シャヘド136/131自爆無人機×16飛来15撃墜

 合計22飛来19撃墜(阻止率86%)

キーウ東部近郊ブロヴァルイ地区に着弾する撃墜されたミサイル

 細長く燃えている物体が回転しながら着弾して爆発しています。正常な姿勢のミサイルの突入ではなく、迎撃されたミサイルが姿勢を乱して回転しながら落下してきたものと思われます。撃墜には成功していますが空中での弾頭の破壊は出来ていません。

 燃えながら回転しながら落ちて来て弾頭が生きており地表で爆発したという時点で迎撃ミサイルの可能性は低く、ウクライナ空軍司令部から報告されている限り8月6日にキーウ方面に飛来したロシア軍のミサイルは弾道ミサイル4発だけなので、これは撃墜された2発の弾道ミサイルのうちの片方である可能性が高いでしょう。

 なお非常に高速な弾道ミサイルであっても、迎撃されて姿勢を乱して回転を始めると空気抵抗の増大で急激に落下速度が低下することが知られています。

※追記:8月6日にウクライナ軍事誌「ディフェンスエクスプレス」が「ブロヴァルイ付近に落下した北朝鮮のKN-23のうち1発が空中分解」と報告、発見された残骸の部品の写真を掲載。出典:Одна з північнокорейських KN-23, що впала під Броварами, розвалилась у повітрі | Defense Express

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軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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