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ロシア軍が89機もの長距離自爆ドローン攻撃を実施し、ウクライナ軍が全て撃墜に成功

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍より2024年7月31日のシャヘド136自爆無人機の撃墜

 7月31日の夜明け前から夜明け後にかけて(ウクライナ時間)、ロシア軍はウクライナに対し過去最大級の長距離自爆ドローン攻撃を実施し、89機ものイラン製のシャヘド136自爆無人機(ないし同系統でやや小型のシャヘド131)が飛来しましたが、ウクライナ軍は全機撃墜に成功しました。少なくともウクライナ空軍がレーダーで捕捉して把握した目標は全て撃墜したとしています。出典:ウクライナ空軍司令部

自爆ドローン89目標、空対地ミサイル1目標、全機撃墜

ウクライナ空軍より2024年7月31日の撃墜戦果
ウクライナ空軍より2024年7月31日の撃墜戦果

2024年7月31日ウクライナ迎撃戦闘

  • Kh-59空対地ミサイル×1飛来1撃墜
  • シャヘド136/131自爆無人機×89飛来89撃墜

 合計で90目標が飛来し全機撃墜しています。ほとんど全てがイラン製の長距離自爆ドローンのシャヘド136(ロシア名称:ゲラン2)で、巡航ミサイルや弾道ミサイルと組み合わせた複合攻撃ではありませんでした。

 ただし全機撃墜に成功したといっても墜落してきた残骸の弾頭が生きているケースがあるので注意するように、ウクライナ国防省から注意喚起されています。迎撃に成功し炎上し錐揉みしながら墜落するシャヘド136が、地上に着弾すると弾頭が爆発して大きな黒煙を上げる映像が報告されています。

撃墜されたロシア軍のシャヘド136自爆無人機

 ウクライナ空軍の報告した総合計では、2024年7月に飛来したシャヘド136自爆無人機は426飛来(373撃墜、17未到達)でした。この7月には一部のシャヘド136は目標に到達せず隣国のルーマニアに着弾したり、迷走してベラルーシに向かった後に行方不明になったものも報告されています。

シャヘド136自爆無人機の100発近い飛来規模は今年2回目

  • 2024年01月01日:夜明け前:シャヘド136自爆無人機×90飛来(87撃墜)
  • 2024年01月01日:夜明け後:シャヘド136自爆無人機×10飛来(9撃墜)
  • 2024年07月31日:一日分:シャヘド136自爆無人機×89飛来(89撃墜)

※1月1日の攻撃は第一波と第二波の間隔が空いていたのでウクライナ空軍司令部からの集計報告は2回。7月31日の攻撃は夜明け前から夜明け後まで連続しており集計報告は1回のみ。

※1月1日のシャヘド136以外の長距離攻撃はS-300が4発(0撃墜)、7月31日のシャヘド136以外の長距離攻撃はKh-59が1発(1撃墜)のみで、どちらもほぼシャヘド136単独に近い数量の攻撃内容。

 2024年7月31日のシャヘド136自爆無人機×89飛来(89撃墜)は、1月1日以来の大規模なシャヘド136自爆無人機の大量投入です。ただしどちらの大規模攻撃も「鈍足のシャヘド136自爆無人機のみを大量投入してもほとんど撃墜されてしまい効果があまり無い」という結果に終わっています。

【低速目標】自爆ドローン発射数の推移 

  • 2024年07月:426発(373撃墜、88%) ※17未到達を抜くと91%撃墜
  • 2024年06月:328発(309撃墜、94%)
  • 2024年05月:355発(347撃墜、98%)
  • 2024年04月:287発(258撃墜、90%)
  • 2024年03月:596発(511撃墜、86%)
  • 2024年02月:361発(276撃墜、76%)
  • 2024年01月:334発(271撃墜、81%)
  • 2023年12月:598発(490撃墜、82%)
  • 2023年11月:380発(303撃墜、80%)
  • 2023年10月:285発(229撃墜、80%)
  • 2023年09月:503発(396撃墜、79%) 
  • 2023年08月:162発(145撃墜、90%)
  • 2023年07月:238発(201撃墜、84%)
  • 2023年06月:199発(166撃墜、83%)
  • 2023年05月:399発(362撃墜、91%)

※ほぼ全てシャヘド136

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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