12月の韓国戒厳令事件は尹大統領による憲法違反の自己クーデター。10月の平壌無人機侵入事件も関連疑惑
12月3日23時に韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は突如として戒厳令の「非常戒厳」を宣布しました。しかし北朝鮮は一切何も特異な行動を起こしていませんでした。この戒厳令は韓国の少数与党による議会運営の停滞を打破するために、国会を武力を用いて制圧して野党の活動を禁止しようとした、信じ難い動機による行動です。
これは権力側からの「上からのクーデター」と呼ばれる行為であり、「自己(自主)クーデター」や「セルフクーデター」とも呼ばれる行為です。最近の事例では動機が異なりますが、2022年12月8日に弾劾されかかったペルーのカスティージョ大統領が自己クーデターを決行するも、軍も警察も同調せず僅か2時間で終結した事件が記憶に新しいでしょう。
韓国で起きた軍事政権時代を思い起こさせるようなこの暴挙もまた僅か数時間で頓挫しています。戒厳令について定めた韓国憲法第77条は5項で「国会が在籍議員の過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときには、大統領はこれを解除しなければならない」とあり、これが通ったので戒厳令が根拠を失ったからです。ですが、韓国憲法第77条をよく読めばそもそもおかしなことに気付きます。
国会を武力で制圧するのは戒厳令でも許されない憲法違反なのでは?
大韓民国憲法(和訳):戒厳令について
- 3項:国会の活動を禁止できるとは書かれていない。
- 4項:国会を開くことが戒厳令下で想定されている。
- 5項:国会を開くことが戒厳令下で想定されている。
韓国憲法の戒厳令に関する第77条を読む限り、明らかに戒厳令下で国会を開くことが想定されています。解釈の入る余地がありません。しかしそれなのに、戒厳司令部が2024年12月3日23時に布告した全6項のうち最初の1項目に「国会の政治活動を禁止する」とあり、明確に憲法違反となっています。
そして戒厳軍は実際に国会を兵力を用いて制圧しようと試みました。もはや言い逃れが出来ない憲法違反行為です。この戒厳令は一番最初の出発点から違憲であり違法であり、憲法の破壊行為です。よって大統領による自己クーデターです。
この2024年12月3日韓国戒厳令事件について発生して終結したばかりの当初に一部の有識者らが「憲法の枠内で行われて終結した」と解説していましたが、間違いです。この事件は憲法違反です。このため大統領への内乱罪の適用すら有り得るという大変な事態となっています。
自己クーデターは軍・警察の支持と民衆の支持が無ければ成功はおぼつきません。1992年4月5日にペルーでフジモリ大統領が起こした自己クーデター(アウトゴルぺ)は両方の支持があったので成功しましたが、2022年12月8日のペルーのカスティージョ大統領のアウトゴルぺはどこからも支持が無く失敗しました。2024年12月3日の韓国のユン・ソンニョル大統領の非常戒厳もまた、軍は真面目に動かず民衆は支持せず、成功する要素が何も無かったのです。
2024年12月3日韓国戒厳令事件では大統領と国防部長官、陸軍参謀総長や陸軍特殊作戦司令長官らが首謀者となっています。陸軍の一部が動いたわけですが、この事件は実はもっと以前から画策されていた可能性が疑われています。
北朝鮮が平壌無人機侵入ビラ撒き事件の証拠となる墜落機を提示、韓国軍の新型無人機と形状が完全に一致(2024年10月19日)
2024年10月11日に北朝鮮が「韓国軍の無人機が平壌に侵入して伝単ビラ(政治宣伝ビラ)を撒いた」と激怒して10月18日に回収した証拠の無人機の残骸の写真を提示した事件は、今から思えば、韓国側がわざと北朝鮮を挑発して攻撃を誘発して戒厳令を出す正当な根拠を得たかったのでは? そう疑われています。
まさか当時は韓国大統領と国防部長官と韓国陸軍の一部が戒厳令を出そうと暗躍していたとは露程にも思っておらず、韓国側が無人機を平壌に送り込む動機が分からず首を捻っていました。ですが戒厳令を出す根拠を無理矢理に作り出そうとしていた韓国陸軍の身勝手な陰謀の作戦だったと考えれば、何もかも綺麗に説明が付きます。ただしまだ疑いの段階です。
韓国陸軍は誰に指示されて平壌に無人機を飛ばしたのか、全てを明らかにする義務がある筈です。もしも自分たちの勝手な都合で隣国を挑発して攻撃させてその状況を利用しようなどという陰謀が行われていたのであれば、呆れるより他はなく、北朝鮮は単なる被害者ということになるでしょう。
しかも核武装している相手を挑発してわざと攻撃を誘発するなど、一歩間違えれば大変なことになります。北朝鮮が都合よく適度な武力行使に止めてくれる保障などは何も無いのです。
現状では韓国陸軍は何もまともに説明出来ていません。しかしこれでは疑われても仕方がないでしょう。国会で追及が続いて当然です。