イージス・グアム・システムが迎撃試験に成功、車載移動式ではなく地上固定式イージス・アショア
12月10日、アメリカのミサイル防衛局はグアムでの弾道ミサイル大気圏外迎撃試験FEM-02に成功したと発表しました。新型のAN/TPY-6レーダーおよび垂直発射システムと統合されたイージス・グアム・システムは、SM-3ブロック2A迎撃ミサイルを発射し、グアムのアンダーセン空軍基地沖で準中距離弾道ミサイル標的(空中発射型のMRBM級)の迎撃に成功しています。
In A First, Ballistic Missile Intercept Successfully Conducted From Guam (FEM-02) | Missile Defense Agency (MDA)
イージス・グアム・システムのAN/TPY-6レーダー
驚いたのは地上固定式イージス・アショアであることです。2021年に当時のヒル米ミサイル防衛局長が「移動可能が望ましい」と発言しており(関連記事)、その方向で検討されていた筈でしたが、実際に姿を現して見せたのは地上固定式でした。
ただし従来の欧州イージス・アショア(ルーマニアのデベセルとポーランドのレジコヴォ)や計画中止された日本イージス・アショア(秋田県秋田市の新屋演習場と山口県萩市むつみ演習場)、およびハワイのカウアイ島のイージス・アショア実験施設などではレーダーはイージス艦の艦橋とよく似た形状の構造物をそのまま地上施設としていました。しかしイージス・グアム・システムのAN/TPY-6レーダーは球形のレドーム(レーダー・ドーム)の内部に収納されています。レドームの内部はまだ公開されていません。
なおAN/TPY-6レーダーはロッキード・マーティン社のイージス艦向けAN/SPY-7レーダーの派生型です。AN/SPY-7は日本海上自衛隊も建造中のイージス・アショア代替艦「イージス・システム搭載艦」の2隻に搭載予定です。この系統のレーダーの大元はアラスカ配備用のLRDR(長距離識別レーダー: Long Range Discrimination Radar)という早期警戒レーダーです。
垂直発射システム(VLS)については従来型のイージス・アショアと同じく地上設置式です。やや斜めに傾けているのは、発射失敗時に空中に中途半端に打ち上がったミサイルが発射システムの上に落ちて来ないようにするためです。
垂直発射システム(VLS)へのミサイル装填中の様子
※発射時にはやや斜めに傾けてある