パレットタウンもSTUDIO COASTも終了に追い込んだ定期借地権……それはワルモノなのか
都内新木場の「STUDIO COAST(スタジオコースト)」が2022年1月の営業をもって閉館することが発表された。先月には、お台場の「パレットタウン」が2021年より順次営業終了することが発表されたばかりで、都内有数のイベント会場・商業施設が相次いで閉館することに寂しさを感じている人が多い。
2つの施設に共通するのは「定期借地権」を利用した施設であること。土地を期限付きで借りて運営されているため、「定期借地権」の契約が終了しなければ、まだまだ活動を続けることができたのではないか、との思いが生じる。
営業終了は定期借地権のため……と考えたくなるが、「定期借地権」は決して理不尽な方式ではない。土地を貸す側にも、借りる側にもメリットがある方式として、利用が広まっている。
そして、マンション・一戸建てで採用される定期借地権と商業施設で利用される定期借地権は、中身が異なる。その内容をわかりやすく解説したい。
「借地」を利用しやすくする目的で生まれた定期借地権
「定期借地権」は、1992年(平成4年)にできた方式だ。それまでの借地権(普通借地権と呼ばれる)は借り手の権利が強く、地主にとっては「土地を貸すと、2度と帰ってこない方式」とされた。その結果、借地として土地を貸す地主が減ってしまった。
「借地」にはメリットもあるので、「地主が土地を貸してもよい」と思える方式を新たにつくろう、と考え出されたのが「定期借地権」の方式である。
その特徴は、借地期間を明確に定め、借地期間が満了したら、必ず土地が返還されること。これにより、地主は安心して自分の土地を借地として貸すことができるようになった。
定期借地権方式が生まれてから、地主が「この土地は手放したくない」と思っているような優良な土地も貸し出されるようになった。駅前の土地や幹線道路沿いの広い土地などが定期借地権で活用されることになり、便利なマンションや便利な商業施設が増えるようになったのである。
借りる側は、費用が抑えられ、税金面で有利というメリットも
定期借地権は、地主つまり貸す側の権利を強くした方式といえる。
が、それだけでなく借りる側にもメリットがある。まず、なかなか売りに出ない土地にマンションを建てたり、商業施設を建設できるので、居住者や利用者に喜ばれる。
そして、土地を購入する場合より、割安にマンションや商業施設が手に入る。さらに、土地を借りる費用(地代)を経費として計上できるため、商業施設にとっては土地を所有するよりも税金面で有利となる、といった長所も生じる。
貸す側、借りる側の双方に長所の多い方式として広まっているわけだ。
特に、商業施設の場合、期限を区切ったほうが経営計画を立てやすいし、転換もしやすい(集客力が落ちた場合、見切りをつけやすい)といった長所が好まれている。
双方にメリットがあるため、土地の売り物が減っている都心部では、特に定期借地権方式が増えている。それが実情である。
定期借地権の期間は、住宅用と事業用で異なる
定期借地権方式の場合、問題となるのは、契約期間の長さ、だ。
住宅(マンション・一戸建て)の場合、借地期間を50年以上と定めた一般定期借地権が適用される。
当初、一般定期借地権は借地期間50年のものばかりとなった。しかし、「50年」では短すぎるとの声が多かった。というのも、夫35歳妻30歳で定期借地権マンションを購入した場合、夫85歳妻80歳で借地期間が満了し、老いて家を失う可能性があるからだ。
そこで、今は50年より長く、60年とか70年の借地期間にするケースが増えている。住宅の借地期間は長く設定されているわけだ。
これに対し、多くの商業施設が利用するのは、借地期間が短い事業用定期借地権。その期間は、現在、10年以上50年未満となっている。
ちなみに、事業用定期借地権の借地期間は当初10年以上20年以下となっていた。「STUDIO COAST」は2002年の開業で2022年までの営業なので、定期借地期間が20年だったのだろう。
ただし、事業用定期借地権の場合、契約期間が満了しても、双方の話し合いで延長や再契約は可能だ。実際に大型商業施設やアウトレットでは、期間を延長したり、再契約で建物をリニューアルしているケースが多い。
今回、「STUDIO COAST」は延長などをせず、閉館の道を選んだ。その背景には、コロナ禍の影響があるのかもしれない。そうだとしたら、残念な話である。
一方、定期借地権を利用すれば、コロナ禍が終息した後、別の場所で「STUDIO COAST」のような事業を再開させやすい。それもまた、定期借地権のメリットなのである。