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JR北海道、GWでも空気輸送続く札幌―室蘭間「特急すずらん」 利用者軽視、自社都合優先の結果か!?

鉄道乗蔵鉄道ライター
785系特急すずらん号(写真AC)

GWでも空気輸送の特急すずらん号

 JR北海道はこの3月のダイヤ改正で特急列車の指定席化を拡大し、窓口での往復割引切符の販売を廃止した。その結果、特に札幌から室蘭や旭川を結ぶ特急列車の著しい客離れを招き、連日、空気輸送の特急列車の様子を伝える投稿がSNS上をにぎわせている。

 特に、札幌―室蘭間を結ぶ特急すずらん号の著しい客離れの様子については、2024年4月26日付記事(JR北、特急割引切符廃止と指定席化で深刻な客離れ えきねっとへの誘導、試みるも顧客ニーズの本質掴めず)で詳しく触れている。繁忙期であるはずのゴールデンウイーク期間中でも特急すずらん号の空気輸送状態は変わっておらず、高速バスの混雑が続いている。

 札幌―室蘭間で、特急すずらん号を利用した場合、所要時間は1時間43分で運賃・料金は5,220円。これに対して高速むろらん号の所要時間は2時間45分で、片道運賃は2,500円、往復だと4,680円だ。

料金変動のえきねっとは利用に不安!?

 札幌ー室蘭間は、えきねっと割引であれば、14日前までの申込であれば2,860円、前日までの申込であれば3,380円を最大の最安値として乗車できるが、えきねっと割引は割引率が時期によって変動する。例えば、前日までの申込の場合、札幌―室蘭間の特急指定席は片道最大4,690円まで価格が変動することから、利用者にとっては、結局はいくらで特急列車に乗れるのかはっきり分からず、JRの利用に対して不安を覚えた利用者も多いのではないだろうか。

 ICカード乗車券利用可能エリアである札幌―苫小牧間については、チケットレス特急券の設定もある。しかし、チケットレス利用でも、札幌―苫小牧間では、所要時間48分程度で運賃1,680円とチケットレス特急券1,420円の合計3,100円が必要となり、正規の運賃・料金3,360円と比較してもお得感はそれほど感じない。対して、高速とまこまい号は、所要時間1時間40分に対して片道運賃は1,580円、往復だと2,990円だ。

適正な値付けとチケットの買いやすさで利用者は戻る

 利用者にとっては、JR北海道のサービスがたとえ高速バスよりも速達性があったとしても、高速バスとの価格差を埋めるだけの価値がないと判断されたことが今回の著しい客離れに結び付いた結果ではないだろうか。JR北海道としては既存の利用者から多くの収益を上げたいという思惑があったのかもしれないが、そうした自社都合と利用者のニーズとの乖離が明らかとなった形だ。

 しかし、定時制と速達性においては、鉄道のほうが高速バスよりも圧倒的な強みがあることは事実だ。今回の、JRの特急利用者の減少については鉄道自体にサービスの価値がないということではなく、その価値を適正な価格で、かつチケットを買いやすい方法で利用者にサービス提供をする努力を怠ったJR北海道の失態である。

 JR北海道は、国土交通省からの監督命令を受けさらなる経営改革を押し進めるとしている。しかし、本来、札幌都市圏を結ぶドル箱路線であっても顧客ニーズの本質を正しく把握できず、客離れを招く組織体が北海道の鉄道経営を担うことが本当に適切なのか。一般的に、独占企業は、潜在的な存在も含めた競合相手や利用者のニーズの変化といった社外の環境に意識が向きにくく、内向きな志向に陥りやすい傾向がある。

 JR北海道が北海道の鉄道インフラの運営を独占した状況の中で、地域や利用者にとって有用な鉄道経営が出来ないということであれば、現在のJRの線路を使って都市間列車を運行できる民間事業者の新規参入を認めるなどの制度改革をし、適正な競争環境の中で鉄道サービスレベルの向上を図れるような環境を構築することも一つの策である。

GW中の特急すずらん号の実情は【北海道】乗り物大好きチャンネルさんでも詳しく紹介されています。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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