新型コロナ“戦時下”のパリから ー外出制限2週目のレポートー
外出制限14日目の本日、3月30日月曜のパリは快晴。気温は10度まで上がらず冷たい風が吹いているが、窓から眺める光は春そのものだ。
そんなのどかな眺めとは裏腹に、ウイルスとの“戦争”は続いていて、「まだ始まったばかり」と、首相の表情は固く、連日300〜400人ずつ死者が増えている。
前回に続き、外出制限2週目の様子を、パリのひとりの生活者の視線からレポートしたいと思う。
3月24日(火曜) 外出制限8日目 快晴
東京オリンピック延期決定のニュース。外出規制下で思うような練習ができないフランスのアスリートたちの安堵の表情がテレビ画面に映る。
パリのマルシェはほぼ閉鎖に。散歩やジョギングなどもある程度認められていたが、自宅から1キロ以内、最長1時間と規制が厳しくなった。
老人ホームでの感染拡大が明るみに。パリのロスチャイルド財団の老人ホームでも複数の死者が出ていることが報告された。
【感染者数22300/死者数1100】F2
※以下、その日までに確認された感染者と死者の数字を【感●/死●】で表す。数字はSP(公衆衛生局)、F2(フランス国営放送20時のニュース)等で発表された数字に基づいている。
3月25日(水曜) 外出制限9日目 快晴
マクロン大統領が、最も深刻な状態にあるミュールーズ市を慰問し、野営病院前から夜のテレビ演説。
最前線(医療従事者)を筆頭に、“戦時下”の生活を支えてくれている人たち(物流、食料品店やスーパー、農業従事者など)、そして外出制限生活に耐えている国民全員への感謝の気持ちを述べ、さらなる連帯を呼びかけた。
この日、日本では小池百合子東京都知事が感染拡大の重大局面として外出自粛要請。
チャールズ皇太子、志村けんさんが感染のニュース。
世界の人口の3分の1が外出制限下に。
【感25233/死1331】F2
3月26日(木曜) 外出制限10日目 快晴 カルカッソンヌなど南フランスの地方で降雪がみられた。
医療用に改装されたTGV(フランス高速鉄道)で、事態が深刻なグラン・テストから医療施設に余裕があるロワール地方に重篤患者20名を移送。また医療施設が脆弱な海外県(インド洋の島々)に向けて、患者を収容可能な軍艦(空母)が出発。
憲兵隊からも死者が。
医療従事者らにボーナスを支給する発表。
【感29155/死1696】F2
3月27日(金曜)外出制限11日目 快晴
外出制限が4月15日まで延長に。
グラン・テスト(ミュールーズ)から軍用機(A 330)で6人の患者がヌーヴェルアキテーヌ(ボルドー)へ。軍用機での移送はこれで4回目。
16歳の女性が死亡。既往歴なし、最年少の犠牲者。
女子ゴルフ大会エヴィアン選手権を8月6〜9日に延期(オリンピックでの試合日2週前、7月23日〜26日に開催予定だった)
イギリスの首相ジョンソン氏が陽性の報道。
アメリカの感染者数が世界最大に。
【感32964/1995】F2
3月28日(土曜)外出制限12日目 快晴
イルドフランス(首都圏)の病院がすでに飽和寸前。グラン・テストからドイツへの患者移送。
日本では東京の病院、千葉の施設での集団感染の報道。
【感37575/死2314】F2
3月29日(日曜)外出制限13日目 快晴 東京では雪
グラン・テストからの患者移送先はフランス各地だけでなく、ドイツなど近隣の国にも広がった。
サルコジ政権時代の大臣(75歳)の感染死が大きく報じられる。
パリの主要空港2つのうちの1つ、オルリー空港が翌週火曜日23時30分をもって閉鎖予定。通常、日曜は600便の発着があるところ、この日は20便のみ。
パリから日本への直行便がなくなった。
【感40174/死2606】SP/F2
3月30日(月曜) 外出制限14日目 快晴
政府が先週10億枚注文したマスクのうち、中国からおよそ1千万枚のマスクが医療器具と一緒に航空機で到着(前日にも500万枚到着)。国内運搬用のトラックは憲兵隊の先導で移動。
動物病院の呼吸器も徴用されて重症患者治療に応用するというニュース。
日本からは志村けんさんの訃報。
【感44550/死3024】F2
筆者の周りには幸いにして感染発症した人はいないが、近親者が感染したという友人、隣人の話がちらほらと聞こえてくるようになってきた。ウイルスとの戦いは油断禁物。と同時に長期戦を覚悟しなくてはならない。
外出制限2週間ともなると、最初の興奮状態は鎮まって、このリズムに人は慣れてくる。今のところ食料の不足が問題になることはなく、というより前週までにしっかり買い込んだ食材で普段はしない料理に勤しむ人が多いと聞く。ある電子書籍のサイトは2週間で10倍のダウンロード数を記録したというニュースからも、人々はそれぞれに有益な過ごし方を編み出しているようだ。
日曜日から夏時間にシフトして、それまでは暗がりの中だった20時の拍手が、まだ明るい時間にスライドした。お向かいの窓の顔がしっかりとみえる、つまりこちらもみられているというのが妙に気恥ずかしいけれど、拍手は今夜も続いている。
朝には毎日ゴミ収集車の音がして、街は清潔に保たれている。それもまた人々が引きこもっている間でも感染のリスクを負いながら仕事を続ける人たちがいてこそ。我が家の界隈では聞かれないが、ゴミ収集車が通る時に拍手の波がわく場所もあるという。