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キム・ヨンギョンらメンバー詳細も紹介。東京五輪の女子バレーボール日韓戦に挑む韓国の状況とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

本日行われる東京五輪・女子バレーボールの一次リーグの日本代表対韓国代表の一戦。

日本は初戦のケニア戦で勝利するも、続くセルビア戦、ブラジル戦と2連敗を喫して追い込まれた中で今日を迎えるが、逆に勢いに乗っているのが韓国だ。

初戦こそブラジル相手に3-0のストレート負けを喫したが、続くケニア戦では3-0の勝利。ドミニカ共和国線でもセットスコア3-2で勝利し、プールAの3位にある。

五輪の舞台は前回の1964年五輪から数えて12回出場の常連とはいえ、これまでの善戦は意外だったというのが正直なところだ。

というのも、東京五輪の前哨戦的な位置づけもあったFIVBバレーボールネーションズリーグ(VNL)では大苦戦。わずか3勝しかできない連敗続きで、出場16か国中15位という無残な結果だった。VNLではブラジルはもちろん、ドミニカ共和国にも勝てなかった。

敗因はさまざまだが、もっとも大きかったのはエース格だったイ・ジェヨンとその妹でセッターを務めたイ・ダヨンら双子姉妹が、今年2月に学生時代のいじめ問題発覚で韓国Vリーグの無期限出場停止および韓国代表資格はく奪となってしまったことだった。

ふたりは韓国バレー界の美人双子姉妹としてテレビのバラエティ番組やファッション誌でも取り上げられるスター選手だっただけにショッキングだが、痛手を被ったのは韓国代表チームのほうだ。

(参考記事:写真】「この世の美貌じゃない」韓国女子バレー“美人双子”が雑誌で見せた圧巻ビジュアル

ふたりのことは2019年1月から韓国代表を指揮するイタリア人のステファノ・ラバリニ監督も重用していただけに、戦力ダウンは明らか。

一部のメディア関係者たちの間では、「その穴を埋めることができなければ東京五輪では惨敗もありうる」と懸念されていたほどでもあった。

では、何が女子バレー韓国代表を変えたのか。

ひとつは頼れるベテラン、キム・ヒジンの復帰だろう。左膝骨片除去手術でVNLを欠場したが、オポジットとしてだけではなくライトもできる彼女が戻ったことで、選手活用の幅が広がったと言われている。

ブラジル戦では沈黙気味だったキム・ヒジン本人も、ケニア戦では20得点、ドミニカ共和国戦では16得点と、重要な瞬間に得点を決める老練さを見せている。

また、“美女アタッカー”と知られるパク・ジョンアの復調もある。

2009年に韓国代表入りを果たし、ロンドン五輪やリオデジャネイロ五輪では不安定なレシーブで非難される苦しい時期も過ごしたが、2018年世界選手権での活躍で評価一変。一躍、スター選手になったが、2019年4月に左足首を手術して以降は好不調の波が激しかった。

だが、東京五輪では安定的。特にドミニカ共和国戦では韓国がピンチを迎えるたびに得点を記録し、計16点を挙げた。彼女の活躍で相手に的を絞らせない多彩な攻撃が可能になったと言われている。

そして、絶対的エース、キム・ヨンギョンの存在だ。ブラジル戦では12得点、ケニア戦では16得点、ドミニカ共和国戦では両チーム合わせ最多の20点を記録し、ブロック3点、レシーブ22回と守備でも活躍。ディグも計19回とチーム最多で、攻守にわたって圧倒的な存在感を見せた。

イ・ジェヨン(レフト)、イ・ダヨン(セッター)で新たな才能が出現したわけではないが、前回リオデジャネイロ五輪はもちろん、ロンドン五輪にも出場した3人が、女子バレー韓国代表の復調に繋がっていると言えるだろう。

つまり、日本の立場で逆に言えば、この3人をいかに抑えるがポイントになる。3人は過去に行われてきた日韓戦でも数多く出場してきたので、日本にとってその特徴は把握済みのはず。前出のVNLでは日本が3-0のストレート勝ちも収めた。

ただ、そのときの韓国とは異なる。VNLのときはキム・ヒジンもパク・ジョンアもいなかった。

まして今日の対決は決勝トーナメント進出がかかった大事な一戦。苦手とするセルビア戦(8月2日)をグループ最終戦に残す韓国としては、日本に勝って3勝目を挙げて決勝トーナメント進出を確実にしたいところだが、はたして。

いずれにしても今日の日韓バレーボール対決が白熱した好勝負になることを期待したい。

■女子バレー韓国代表

―レフト

1 イ・ソヨン(26、KGC人参公社)

13 パク・ジョンア(28、韓国道路公社ハイパス)

10 キム・ヨンギョン(33、上海ブライトユーベスト/中国)

19 ピョ・スンジュ(29、IBK企業銀行アルトス)

―ライト

4 キム・ヒジン(30、IBK企業銀行アルトス)

16 チョン・ジユン(20、現代建設ヒルステート)

―センター

8 パク・ウンジン(21、KGC人参公社)

11 キム・スジ(33、IBK企業銀行アルトス)

14 ヤン・ヒョジン(31、現代建設ヒルステート)

―セッター

3 ヨム・ヘソン(30、KGC人参公社)

7 アン・ヘジン(23、GSカルテックス・ソウルKIXX)

―リベロ

9 オ・ジヨン(32、GSカルテックス・ソウルKIXX)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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