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海で浮き具にのると流される恐ろしさ #専門家のまとめ

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
浮き輪(左)と浮き具(右)(写真:イメージマート)

7月19日午後、兵庫県淡路島のビーチで5歳の男の子が浮き具にのって流されました。同じ時間に筆者は、浮き具が風に流される実演を他の海岸で行っていました。浮き具は穏やかな風でも驚くくらいの速さで流されます。

ココがポイント

▼Yahoo!ニュース欄に掲載された速報の時点では、「浮き輪」にのって遊んでいた

【速報】5歳男の子がビーチで遊泳中に溺れ死亡 一緒に泳いでいた父親 深みにはまり子どもと離れたか 兵庫・淡路島 室津ビーチ(MBSニュース 7/19(金) 16:22配信)

▼幼児が流された時にのって遊んでいたのは「浮き具」と、時間経過とともに表現が変わった

5歳児が海で流され死亡、浮き具に乗って遊んでいたか 兵庫県淡路市(朝日新聞 7/19(金) 18:07配信)

▼「浮き具」が椅子型と判明。写真を見ると穴が閉じられた浮き輪状で背もたれがある遊具だった

父親と遊泳中に流されたか 淡路市の海水浴場で5歳の男の子が沖合に流され死亡(サンテレビニュース 7/19(金) 22:18配信)

▼「浮き具」の直径が約1メートル。風は南の風で風速約4メートル。淡路島ならではの事故か

・海水浴で浮き具を持つ父の手が離れ、5歳男児が沖に流され死亡…兵庫県淡路市のビーチ(読売新聞 7/20(土) 0:20配信)

エキスパートの補足・見解

 筆者が行った実験そのものの事故でした。淡路島・室津ビーチは北西向きの浜なので、南風が吹くと海岸から沖に向かう風を受けることになります。浮き具は風で流されやすいので、風速4メートルの穏やかな風でも驚くほどの速さとなります。流されるとどうやっても自力で、あるいは救助に泳ぎに行った人の力でも、元の場所に戻ることは極めて難しいのです。海で浮き具は使わないように、浮き輪は足の届くところで使いましょう。実演の様子は来週のどこかでテレビにて報告します。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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