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ミラン、ダービーの“戦犯”ドンナルンマとの再婚は正解だったか 批判に「狂気」と擁護の声も

中村大晃カルチョ・ライター
10月21日、セリエA第9節のミラノダービーで致命的ミスを犯したドンナルンマ(写真:ロイター/アフロ)

ひとつのミスが、命取りになった。それも、ミラノダービーという大一番での致命的なミスだ。批判の嵐にさらされるのは避けられない。

ミランは10月21日のセリエA第9節、インテルとのダービーマッチで0-1と敗れた。初の枠内シュートが80分という苦しい展開をしのぎ、スコアレスドローが見えてきた終了間際の92分、マウロ・イカルディの一発に泣いた

ただ、イカルディの決勝点は、ミランが献上したものだった。特に戦犯として酷評されたのが、クロスの軌道を読み違え、ゴールをがら空きにしてしまった守護神ジャンルイジ・ドンナルンマだ。

◆厳しい目を向けるミラニスタ

試合後、ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督はドンナルンマを擁護した。だが、SNSではミラニスタから「史上最も過大評価されているGK」「移籍を望んだときに売り飛ばさなかったのはこの10年で最大の過ち」など、手厳しい批判が相次いでいる。

『スポーツ・メディアセット』のアンケートでも、1万人を超えるユーザーのうちの約8割が指揮官の意見に反対。試合翌日のアンケートでも、1万3000人近いファンの85%が、失点の責任はマテオ・ムサッキオやアレッシオ・ロマニョーリよりもドンナルンマにあると答えた。

◆デビューしてからの成長は?

弱冠16歳でセリエAデビューを飾り、名門ミランでレギュラーの座をつかみ、すでに100試合以上をこなして、アッズーリ(イタリア代表)の正守護神にもなりつつある。ドンナルンマがGK大国イタリアで確固たる地位を築いているのは確かだ。

ただ、デビュー時のインパクトが大きかったこともあり、近年は成長が止まっているとの見方もある。元ユヴェントスのマッシモ・マウロは、『レプッブリカ』のコラムの中で「非常に優れたGKであることは変わらないが、この2年でまったく向上していない」と指摘した。

しかし、ミランの元GKコーチ、ヴィリアム・ヴェッキは『ガゼッタ・デッロ・スポルト』で「彼は怪物だったし、今もそれは変わらない。ダービーを見てもそう確信している」とコメント。「ミスから学び、成長するはず」と、ダービー後の批判は過剰と訴える。

ヴェッキは「今季は飛び出しが増えて良くなった。キャッチや足を使ったプレーは成長した」と、パフォーマンスは向上していると主張。「エデルソンの代わりにマンチェスター・シティに、ケパの代わりにチェルシーにいることもあり得る」と、ビッグクラブの守護神とそん色ないと述べた。

◆高額年俸は批判に値するのか

一方で、ヴェッキは「2017年の契約延長以降、彼は何も許されなくなった」とも話している。ミーノ・ライオラを代理人とするドンナルンマが、契約延長を巡り、当時中国資本だったミランと衝突したのは記憶に新しい。一度は交渉が破談したが、その後一転して“再婚”に至った。

それまで、ドンナルンマはファンと相思相愛だった。だが、クラブとのゴタゴタの末に、600万ユーロ(約7億7000万円)という破格の年俸をゲットしたことで、一部サポーターから冷たい視線を向けられるようになり、ドンナルンマ自身もそれに対する不満が報じられるようになった。

しかし、セバスティアーノ・ヴェルナッツァ記者は、『ガゼッタ』で「給料のことで非難すべきではない。君らは18歳で年俸600万ユーロにサインしないのか?」と指摘。「ダービーでのミスで『使えない』『期待外れ』『過大評価』と言うのは狂気」と、ドンナルンマを擁護している。

アルベルト・ポルヴェロージ記者も『コッリエレ・デッロ・スポルト』で、ミスするまでのプレーは悪くなく、ミスそのものは許されないが、精彩を欠いたチームも同様に「有罪」と指摘。ドンナルンマはジャンルイジ・ブッフォンほどのGKではないとしたうえで、「それならマヌエル・ノイアーも、ダビド・デ・ヘアも、アルフォンス・アレオラも、ティボ・クルトゥワもブッフォンじゃない」と主張した。

◆スタメン起用を後押しする声

今季からミランにはペペ・レイナという経験豊富で優れた守護神が控えている。それだけに、『コッリエレ・デッロ・スポルト』でフランコ・オルディネ記者が指摘したように、ここで一度ベテランGKに頼るべきとの声もある。

だが、ポルヴェロージ記者は「信頼すべき」と主張。インテルで活躍した元ブラジル代表のジュリオ・セーザルも、『ガゼッタ』で「GKのターンオーバーは好きじゃない」と反対する。J・セーザルはドンナルンマが「非常に強い選手」で「まだ大きな成長の余地がある」と賛辞を寄せた。

また、インテルでもミランでもプレーしたクリスティアン・ヴィエリは、『Italia 1』の番組「Tiki Taka」で、「飛び出すのは簡単じゃない。クロスがとんでもなかったし、あれは素晴らしいゴールだった。それだけだ」と、決めたイカルディを称賛すべき場面との見解を示している。

◆奮起して指揮官を救えるか

それでも、ドンナルンマへの風当たりは強い。ダービー敗戦を機に、ガットゥーゾ監督解任も噂されるようになっただけに、なおさらだ。もしも指揮官交代という事態になれば、引き金となったダービーでの致命的ミスの“罪”はさらに重くなる。

GKは、ひとつのミスが命取りになるポジションだ。それだけに、タフな精神力が必須となる。そして、年齢を忘れさせる胆力こそ、ドンナルンマの大きな武器のひとつだったはずだ。ヴェッキは「ここでこそ耐えなければ。そして私は、今回も彼がそうすると確信している」とエールを送った。

セリエAデビューから3年。19歳になったドンナルンマは、この難局を乗り越え、契約延長が自身とミランの双方にとって正しかったと示すことができるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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