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王者イタリア、「鉄の掟」でEURO2024初戦へ レジェンドも信頼の監督に期待される統率力

中村大晃カルチョ・ライター
(写真:ロイター/アフロ)

26人もの集団を管理するのは、決して容易ではない。だが、チームスポーツにグループの団結は不可欠だ。指揮官には組織を統率する力が求められる。

手法は様々だ。主要な国際大会では、チームマネジメントのやり方が話題となる。

6月14日、EURO2024がドイツで開幕する。連覇を目指す王者イタリアは、ルチアーノ・スパレッティ監督が「鉄の掟」を課しているそうだ。『La Gazzetta dello Sport』紙が13日に報じた。

■各種の禁止・制限

集団を律していくのに、ルールは欠かせない。『La Gazzetta dello Sport』によれば、スパレッティは規律を重んじ、以下を命じているという。

遅刻厳禁

12時からのミーティングや12時45分からの昼食、20時からの夕食に遅れることは許されない。朝食については、練習が午後のため、11時までと自由がある。

ヘッドホン禁止

団結には「バーチャル空間」への没頭を回避すべきと考えられている。ヘッドホンで音楽を聞きながら、気を抜いたような目で公の場を歩く姿を見せてはいけない。

スマホ使用制限

家族との交流はリラックスのために必要だ。そこで、昼食や夕食の前は使用が認められる。だが、それ以外は「電源オフ」。食事やミーティングの最中にスマホを使うことはできない。

ゲームの場所限定

「鉄の掟」があるとはいえ、消灯後の点呼まで行われるわけではない。ただ、選手がそれぞれの部屋でテレビゲームに夢中になる心配はなさそうだ。息抜きとして、ホテルのプレイルームには、卓球、ビリヤード、テーブルサッカー、いくつかのゲーム機が用意されているという。

おふざけ禁止で仕事に集中

「アッズーリ」の愛称で知られる青のユニフォームは名誉であり、その重みは計り知れない。イメージダウンにつながるおふざけは認めないという。ジョークや“笑顔”の禁止だ。

もちろん、常に仏頂面で良い仕事はできない。だが、『La Gazzetta dello Sport』は「『楽しみながら仕事する』が、あくまで『仕事』だ。最大限の集中が求められる。練習で爆笑はない」と報じた。

ちなみに、同紙は力の源となる食事について、パスタ(トマト、ペスト、ラグー)、ブレザオラ、ターキー、チキン、温野菜、アボカド、パイナップル、メロン、タルトなどが用意されていると伝えた。試合後はピッツァやジェラートも許可。アルコールはないが、ラザーニャは許されるとのことだ。

■スパレッティを信頼する偉人たち

『La Gazzetta dello Sport』はこの日、アッズーリの歴代レジェンドたちのインタビューも掲載した。そうそうたる先人たちが賛辞を寄せたのが、指揮官スパレッティの手腕だ。

  • 「非常に優秀な監督」(ディノ・ゾフ)
  • 「プラスアルファの存在」(ファビオ・カンナヴァーロ)
  • 「(若手招集で)勇気を見せた。正しい」(マルコ・タルデッリ)
  • 「スパレッティを信じる。選手のベストを引き出せる」(ジュゼッペ・ベルゴミ)
  • 「チームで確実なのが監督。非常に明確な考えを持つ」(アントニオ・カブリーニ)
  • 「グループは団結しており、スパレッティという最高の手にある」(レオナルド・ボヌッチ)
  • 「保証。イタリアにとって正しい。代表への愛が見える。魔法の夜をプレゼントするための正しい雰囲気をつくれる。彼を信頼しなければ」(ジョルジョ・キエッリーニ)

前回大会の優勝監督ロベルト・マンチーニの電撃退陣に揺れたイタリアを踏みとどまらせたスパレッティの功績は大きい。偉人たちも信頼を寄せているようだ。

■極めて大事な初戦へ

しかし、王者とはいえ、イタリアを優勝候補の筆頭と予想する人はいないだろう。

ベルゴミはベスト8が「ユートピア」ではなく「良い目標」だと述べている。キエッリーニはイタリアより強いチームは複数あるとし、「どの大会も拮抗しており、サプライズがある」と話した。

それでも、ゾフは「このイタリアを信じている」と楽観的だ。ジャンルイジ・ブッフォンは現代表が「軽んじられているがとても競争的」と評した。王者ゆえの自信、重圧をはね返す胆力が期待される。

絶対に許されないのは、アルバニアとの初戦を軽視することだ。

フランコ・バレージは「誰かを軽んじる過ちを犯してはいけない」と助言した。ボヌッチも「アルバニアにとても気をつける必要があると強く言いたい」と警鐘を鳴らしている。

グループBのそのほかの2チームは、スペインとクロアチア。そのためアルバニアは格下と見られがちだ。しかし、イタリアをよく知る彼らが“安パイ”でないのは言うまでもない。

最大限の集中で極めて重要な初戦に臨めるか。スパレッティの統率力が試される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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