攻撃の効率と得失点から検証。最もいい野球はしたのは日本ハム?
1イニングに安打が4本出ているのに1点しか取れない攻撃と2安打で2点を奪う攻撃では、後者の方がいい野球をしたと評価される。他球団と比べて得失点差の面で優れているわけでもないのに勝率が高ければしぶとい、隙が無いと評価される。RC(Runs Created)は打撃成績からどれぐらいの得点を生み出したかを示す指標。見方を変えればこれぐらいの打撃成績ならこれぐらいの得点が期待出来ると見ることもでき、チームRCに総得点が近いほど効率のいい攻撃が出来た(チームRCは実際の総得点よりやや大きくなる性質があるため)と考えることが出来る。(得点の2乗)÷(得点の2乗+失点の2乗)で計算されるピタゴラス勝率は得失点から妥当な勝率を計算した指標。ピタゴラス勝率以上の勝率を挙げられれば投打が噛み合ったと言えるだろう。この2つの視点から見た時に今季最もいい野球をしたのはどこなのだろうか。
チームRCを100とした時の実際の得点の割合(以下、得点割合)
セリーグ平均 91.96%
ヤクルト96.46%、DeNA92.99%、広島91.81%、巨人91.77%、阪神89.33%、中日88.81%
パリーグ平均95.49%
日本ハム98.45%、ロッテ98.43%、ソフトバンク95.73%、西武94.86%、オリックス94.63%、楽天90.08%
ピタゴラス勝率と実際の勝率による勝利数の差(以下、勝率差異)
+11 阪神
+6 楽天
+4 日本ハム
+3 DeNA
+2ロッテ
+1ソフトバンク
-2 ヤクルト
-3 巨人、中日
-6 広島、オリックス
-7 西武
得点割合が高く、勝率差異でもプラスだった・・・日本ハム、ロッテ、DeNA
日本ハムとロッテの得点割合は98%を超える。共に打率や本塁打数を見てもリーグ平均に近いか下回る程度だが、飛び抜けた数字が無い中で効率のいい攻めが出来ていたようだ。勝率差異でもプラスを記録しており力でねじ伏せるというよりはしたたかに勝っていた印象だ。一方で数字上善戦しているDeNAだが肝心の順位には結び付かず。チームとして機能しているはずなのに18もの借金を抱えるのは不運の一言で片付けるにはやや苦しい。個人の技量アップ必須だ。
得点割合は低いが、勝率差異はプラスだった・・・阪神、楽天
辛勝大敗の多かった阪神がピタゴラス勝率以上に積み重ねた勝利数はなんと11。楽天もソフトバンクには33.5ゲーム差をつけられたがピタゴラス勝率よりも6つ多くの白星を稼いでいる。ただし両球団共に得点割合は高くない。得失点差の割りによくやっている、どころか驚異的に勝っていたのは間違いないが、もう少し得点が取れたかも。
得点割合は高いが、勝率差異はマイナスだった・・・ヤクルト
得点割合のセリーグ平均は91.96%、ヤクルトは96.46%と非常に高くダントツのリーグトップ。打線の強力さを示すデータが1つ加わった。勝率に関してはマイナス評価となっているが、ピタゴラス勝率による勝利数が77.7勝で実際は76勝だから十分妥当だと言える。今季は開幕前の評判を覆し見事リーグ優勝を果たした。来季は追われる立場だが強力打線は健在だ。
得点割合も勝率差異も計算上の数字より少し上だった・・・ソフトバンク
「誰がやっても優勝出来る」巨大戦力のチームを率いる監督が結果を残しても一部でそんな声があることも事実。しかし自らの腕前で普通の食材を見事な料理に仕立てるのが得意なシェフもいれば、高級素材の味をケンカさせることなく活かすのが得意なシェフもいる。豊富な戦力を預かった工藤監督はプレッシャーもあったに違いないが就任1年目で見事日本一を達成。選手が能力を最大限発揮出来るチームを作ったという点で間違いなく名将だと言えるだろう。
得点割合は平均に近いが、勝率差異でマイナスだった・・・巨人、オリックス、広島、西武
これらの球団はもうひとつ勝ち切れなかった印象が強い。巨人、広島、西武はピタゴラス勝率通りなら順位が上がるためCS戦線に大きな影響を与えていた。区分上4球団が一括りになっているが、巨人とその他3球団の間には開きがある。4球団とも得点割合はリーグ平均とほとんど変わらずだったが、勝率差異は巨人がマイナス3で3球団はマイナス6以上と大きかった。
得点割合が低く、勝率差異でもマイナスだった・・・中日
ワンヒットで1点を奪い接戦をものにするというしぶとい野球のイメージがある中日だが今季に関しては”らしい”野球が出来なかった。若手の起用が増えベテラン勢が引退した今季を経て、来季はどんな野球を見せるのか。2016シーズンは今後の大きなターニングポイントになるかもしれない。