ロシア飛行禁止の37の国と地域、世界の運航への影響
ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、欧米の各国がロシアの航空会社およびロシア人により運航される全てのフライトを対象に空域使用を制限している。NOTAMという航空当局が世界中の運航者に向けて運航に関連する情報を発出する仕組みがある。それによれば、2月24日(世界標準時)にイギリスが空域の飛行制限に関するNOTAMを発行した後、EU各国が続き、2月27日にはカナダが、3月3日にはアメリカが同様の内容でNOTAMを発行している。現時点におけるロシア航空機の飛行制限を実施中の37の国と地域は以下の通り。
アルバニア、アイスランド、アイルランド、アメリカ、アンギラ、イギリス、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、カナダ、ギリシャ、キプロス、クロアチア、ジブラルタル、ジャージー、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク(グリーンランド、フェロー諸島を含む)、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブリティッシュバージン諸島、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルク
対抗措置として、ロシア連邦航空輸送庁(Rosaviation)はEUおよび北米の36ヶ国に対し、Rosaviationまたはロシア外務省から許可を得た場合を除き、民間航空機によるロシア上空空域の飛行を制限する声明を発表した。アメリカについては、本記事の執筆時点ではこの対象とはなっていない。
通常、日本からのヨーロッパ直行便はほぼ全てロシア上空のいわゆるシベリアルートを通過しているが、今後は北回りまたは南回りで迂回する飛行経路を取ることになる。その影響は、飛行距離の増加に応じて所要時間が数時間増加するということだけではない。下図はロシア空域の航空路図の一例であるが、これらの航空路を一切使わずに東西を行き来する航空機を誘導することになる。
安全確保を最優先に、緊急時でも自社便の地上受け入れ体制のある主要国際空港に着陸できることを考えると、東アジア-ヨーロッパ間のフライトは、中央・南アジアや中東を経由するルートを選択せざるを得ないため、相当の過密状態が生じると予想される。各空域には、処理可能な機数に関する制限があり、機数が処理容量を超過することが予測されれば、空域への入域手前での上空待機や、出発空港における地上待機など、さらなる遅延が課せられる可能性がある。
コロナ禍で便数が少ないうちは影響は小さいが、復便後は情勢が落ち着くまで、日本とヨーロッパ間は乗り継ぎ便が得策となるかもしれない。