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33年前に起きていた羽田事故と類似の航空機衝突事故

タワーマン元航空管制官
LAXで行われた航空事故対応訓練の様子(写真:ロイター/アフロ)

1991年2月1日、ロサンゼルス国際空港で航空機同士が地上衝突する大事故が発生しました。夜間の滑走路上で離陸待ちのため待機する航空機に着陸機が追突し炎上した事故で、2024年1月2日に発生した羽田空港地上衝突事故と類似する点が見られます。

ロサンゼルス国際空港地上衝突事故の概要

USエアー1493便(ボーイング737型機)とスカイウェスト航空5569便(フェアチャイルドメトロ小型機)が滑走路24Lで衝突し、ボーイング737型機が小型機を押しつぶしながら引きずる形で両機は滑走路脇に建っていた旧消防庁舎に激突し炎上しました。この事故で、両機の乗員乗客計34人が死亡し、30人が負傷する惨事となりました。

同年10月22日にとりまとめられた事故調査報告書によれば、事故は複数の要因により生じた管制ミスにあるとされています。管制官がスカイウェスト航空5569便が滑走路24Lの中に入り出発のため待機していることに気付かず、USエアー1493便に着陸許可を出し、到着させてしまったと結論付けられています。

事故機の移動と空港レイアウト(引用:NTSB航空事故調査報告書AAR91/08)
事故機の移動と空港レイアウト(引用:NTSB航空事故調査報告書AAR91/08)

事故要因と考察

この事故は、以下の要因が複合的に重なり発生したものと考えられています。

通信障害:

24Rに着陸した機体が24L横断前に周波数を変えたため、交信不能になり、管制官の負担が増加

類似便の混同:

管制官がウィングスウェスト5072便とスカイウェスト5569便を混同

地上レーダーシステムの不具合:

事故当日、地上面探知レーダーが機能しておらず、管制官が滑走路上の航空機や他の航空機位置を目視でなければ把握できない状況

視認性の問題:

夜間のため視認性が悪く、管制官と着陸するUSエアー1493便の両方が滑走路上で待機する小型の出発機を見つけるのが困難な状況

運航票の取り違え:

事故の直前、滑走路担当をしていた当該管制官にウィングスウェスト5072便からの呼び込みがあった際に、本来であれば手元にあるはずの運航票(便情報を表すもの)がなく、管制塔内で他の管制官と確認やり取りをしていた

事故後の対応

この事故を受け、航空管制システムの安全対策が強化されました。具体的には、地上レーダーシステムの更新、管制官の訓練強化、無線周波数の変更ルールの見直しなどが行われています。

羽田空港の衝突事故との類似点

ロサンゼルス国際空港地上衝突事故は、航空史上最悪の事故の一つとして記憶されています。この事故と、まだ記憶に新しい2024年1月2日に発生した羽田空港地上衝突事故は、下記の類似点が見受けられます。

  • 夜間に滑走路上で発生
  • 滑走路上の出発待機に着陸機が追突
  • 出発機はインターセクションデパーチャー(滑走路末端からではなく途中の交差点から滑走路に入ること)
  • 管制塔からも到着来からも視認しにくい小型機
  • ヒューマンエラーが要因の一つ

羽田事故では管制官が滑走路に入るための指示を出しておらず、またパイロットも滑走路に入るための指示は復唱していない点で、ロサンゼルス空港の事故とは異なりますが、運用環境や管制官の業務負荷に影響を及ぼすこれらの類似点は、航空管制システムや仕組みにおける課題を浮き彫りにしているといえるでしょう。

引用:NTSB航空事故調査報告書AAR91/08

元航空管制官

元航空管制官で退職後は航空系ブロガー兼ゲーム実況YouTuberとなる。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験を基に、空の世界をわかりやすく発信し続ける。

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