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空の危機?毎年起きている過去の滑走路誤進入事案

タワーマン元航空管制官
羽田空港(写真:アフロ)

日本国内で過去に起きた重大インシデントのうち、2010年以降の主要空港における滑走路誤進入事案は以下の通り。

(発生日、空港名、運輸安全委員会が結論付けた原因の要約、重大インシデントの概要、の順に示す。)

2019年11月30日 羽田 作業車両の理解の不足

ピーチ・アビエーション株式会社所属エアバス式A320-214型JA806Pが、令和元年11月30日(土)、着陸許可を受けて東京国際空港滑走路34Lに着陸進入中、作業車両が同滑走路に進入した。

2019年7月21日 那覇 パイロットの思い違い

令和元年7月21日(日)、那覇空港において、アシアナ航空株式会社所属エアバス式A321-231型HL8256は、日本トランスオーシャン航空株式会社所属ボーイング式737ー800型JA01RKが着陸許可を受けて最終進入中の滑走路18に管制許可を得ないまま進入した。

2019年6月15日 羽田 管制官の訓練中に起きた指示失念

令和元年6月15日(土)、東京国際空港において、スカイマーク株式会社所属ボーイング式737ー800型JA73AB(以下A機という)が着陸許可を受けて滑走路34L(以下A滑走路という)へ最終進入中、全日本空輸株式会社所属ボーイング式787ー9型JA885A(以下B機という)が管制許可を受け、同滑走路を横断した。

2018年10月27日 羽田 無線電波の不具合

平成30年10月27日(土)、東京国際空港において、岡山航空株式会社所属セスナ式510型JA123Fが着陸許可を受けて滑走路22へ最終進入中、誘導路上の同滑走路手前で待機するよう指示されていた上海金鹿公務航空株式会社所属ガルフストリーム・エアロスペース式GーVI型Bー3276が、管制許可を得ないまま同滑走路へ進入し、横断した。JA123Fは管制官の指示により復行した。

2018年6月14日 那覇 パイロットの思い違い

平成30年6月14日(木)、那覇空港において、航空自衛隊所属Fー15J型52ー8850及び32ー8818は、琉球エアーコミューター株式会社所属ボンバルディア式DHCー8ー402型JA84RCが着陸許可を受けて滑走路36へ最終進入中、管制許可を得ないまま誘導路から同滑走路へ進入した。

2018年3月18日 那覇 コクピット内のミスコミュニケーション、思い違い

上海吉祥航空株式会社所属エアバス式A320ー214型B8236は、平成30年3月18日(日)那覇空港滑走路18において、先に着陸した海上保安庁所属ダッソー・ブレゲー式ミステール・ファルコン900型JA8570が同滑走路を離脱する前に、離陸許可を得ないまま離陸滑走を開始し、離陸した。

2017年2月14日 成田 パイロットの不注意

タイ・エアアジアX株式会社所属エアバス式A330ー343X型HSーXTCは、平成29年2月14日(火)、成田国際空港の滑走路34Rから離陸するため飛行場管制所から滑走路手前で待機を指示されたが、停止位置標識を越えて滑走路に誤進入したため、着陸許可を受けて進入中であった中華航空公司所属エアバス式A330ー302型Bー18361が飛行場管制所の指示により復行した。

2016年12月22日 羽田 パイロットの事前準備不足

ピーチアビエーション株式会社所属エアバス式A320ー214型JA811Pは、平成28年12月22日(木)、同社の定期1028便として、東京国際空港滑走路16Lへの進入中の00時39分、閉鎖中であった滑走路23へ向けて誤って進入しようとした。これに気付いた航空管制官は、同空港から約9km東の地点で、同機に復行を指示した。同機は、その後レーダー誘導されて、視認進入により、00時55分に滑走路16Lに着陸した。

2015年6月3日 那覇 パイロットの管制指示の誤認

日本トランスオーシャン航空株式会社所属ボーイング式737ー400型JA8938(JTA機)は、平成27年6月3日(水)、同社の定期610便として、那覇空港の滑走路18に着陸のため、進入中であった。 全日本空輸株式会社所属ボーイング式737-800型JA80AN(ANA機)は、同社の定期1694便として、新千歳空港に向かうため、飛行場管制所飛行場管制席から離陸の許可を受け、同滑走路から離陸滑走を開始したが、航空自衛隊所属CHー47J型57ー4493(自衛隊機)が誘導路Aー5から離陸してANA機の離陸経路に接近してきたため、ANA機は離陸を中止した。

2013年9月10日 関空 パイロットの管制指示失念

平成25年9月10日8時32分ごろ、関西国際空港の滑走路06R手前での待機を指示されていた朝日航洋株式会社所属ベル式430型JA06NRが同滑走路に入ったため、同滑走路への着陸の許可を得て進入中であった全日本空輸株式会社所属ボーイング式767ー300型JA605Aが、管制官の指示により復行した。

2012年7月8日 福岡 管制官の着陸許可失念

平成24年7月8日(日)17時24分ごろ、個人所属セスナ式172RG型JA4178が管制官から着陸許可を受け福岡空港滑走路34に進入中、同滑走路から出発を予定していた日本エアコミューター株式会社所属ボンバルディア式DHCー8ー402型JA847Cが同社の3635便として、管制官から滑走路上で待機するよう指示を受け、同滑走路に進入した。管制官は、JA4178に復行を指示した。

2012年7月5日 那覇 パイロットによる管制指示聞き間違い

中国東方航空株式会社所属エアバス式A319ー112型B2332は、平成24年(2012年)7月5日(木)、同社の定期2046便として上海(浦東)国際空港へ向け出発するため、那覇空港の滑走路18に向かって地上走行していた。一方、エアアジア・ジャパン株式会社所属エアバス式A320ー214型JA01AJは、事業運航開始前の飛行試験を実施する便として那覇空港の滑走路18への着陸許可を得て最終進入中であった。航空管制官は、B2332に滑走路手前での待機を指示したが、同機が滑走路へ入ったため、航空管制官の指示によりJA01AJは復行した。

2011年10月12日 関空 パイロットによる管制指示聞き間違い

ハワイアン航空株式会社所属ボーイング式767ー300型N588HAは、平成23年(2011年)10月12日(水)、同社の定期450便としてホノルル国際空港(米国ハワイ州)へ向け離陸するため、関西国際空港の滑走路06Rの手前で待機していた。一方、全日本空輸株式会社所属ボーイング式767ー300型JA8356は、同社の定期8519便(貨物便)として関西国際空港の滑走路06Rに向けて最終進入中であった。航空管制官は、待機していたN588HAの前方を到着機が通過したときに改めてN588HAに待機を指示し、JA8356に着陸を許可した。しかし、N588HAが滑走路へ入ったため、21時36分ごろ、JA8356は航空管制官の指示により復行した。

2011年5月10日 福岡 管制官の着陸許可失念

日本エアコミューター株式会社所属ボンバルディア式DHCー8ー402型JA844Cは、平成23年5月10日(火)11時59分ごろ、同社の定期3626便として、管制官から着陸許可を受け福岡空港に進入中であった。一方、全日本空輸株式会社所属ボーイング式767ー300型JA602Aは、同社の定期487便として離陸許可を受け、誘導路E2を経由して滑走路16に進入した。JA844Cは管制官に着陸許可を確認し、管制官は同機に復行を指示した。

2010年12月26日 福岡 パイロットの管制指示の誤認

エアプサン株式会社所属ボーイング式737ー400型HL7517は、平成22年12月26日(日)、同社の定期141便として福岡空港から金海国際空港(釜山)へ向け離陸のため、滑走路34に向かって地上走行していた。 一方、株式会社ジャルエクスプレス所属ボーイング式737ー400型JA8998は、同社に運航の管理を委託していた株式会社日本航空インターナショナルの定期3530便として、滑走路34への着陸許可を受けて福岡空港へ進入中であった。 JA8998は、HL7517が同滑走路内に進入したため、11時34分ごろ管制官の指示により復行した。

2010年8月30日 関空 パイロットの滑走路取り違え

カタール航空所属ボーイング式777ー300型A7BAEは、平成22年8月30日(月)20時59分に成田国際空港を離陸し、21時55分ごろ着陸のため関西国際空港に進入中、閉鎖中であった滑走路24Rに着陸しようとした。その後、当該機は復行し、22時07分、滑走路24Lに着陸した。

その他の滑走路、誘導路への誤進入事案の集計

なお、重大インシデントには当たらないものも含む滑走路・誘導路への誤進入事案は、国が毎年発表する「安全指標・目標値の検証及び安全目標値」にて件数が公表されている。直近7年間の件数は下記の通り。

(航空機の滑走路・誘導路誤進入/車両又は人の滑走路・誘導路無許可進入の件数)

令和4年 9件/22件

令和3年 11件/14件

令和2年 8件/15件

令和元年 18件/21件

平成30年 11件/20件

平成29年 4件/23件

平成28年 7件/17件

引用:

国土交通省運輸安全委員会HP

R5年度航空安全プログラム実施計画

安全指標・目標値の検証及び安全目標値R4

安全指標・目標値の検証及び安全目標値R3

安全指標・目標値の検証及び安全目標値R2

安全指標・目標値の検証及び安全目標値H31

安全指標・目標値の検証及び安全目標値H30

元航空管制官

元航空管制官で退職後は航空系ブロガー兼ゲーム実況YouTuberとなる。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験を基に、空の世界をわかりやすく発信し続ける。

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