なぜ「パソコンでメモ」をしていると頭が悪くなるのか?
「どうして社長はパソコンでメモをとらないんですか?」
あるIT企業のクライアントと打合せしていたときのこと。目の前に座っている社長がA4サイズのノートにメモをとっていた。
社長の両隣にいる部長は2人ともパソコンを使ってメモをとっているにもかかわらず、である。
すると社長は、私の質問に
「よくぞ聞いてくれました」
と答えた。予想通りの反応だった。
「パソコンでメモをとっていると、本質を見抜く力がつかないからです」
両隣の部長はバツが悪そうな表情をし、同時にパソコンを閉じた。
「なぜ本質を見抜けなくなるのでしょうか?」
「パソコンでメモをすると、聞いたことすべて記録したくなります」
「ええ、そうですね」
「それだと、相手が話している内容のどこが論点なのか、それを探すことができなくなるんです」
まだ20代の社長がアナログ派で、両隣にいる40代の部長がデジタル派なのが面白い。そう思った。
「IT企業の社長仲間は多いですが、だいたい紙のノートやメモ帳を使ってますね」
「私も紙派です」
「存じ上げてます。横山さんは、いつもロディアを使ってますよね」
それからこの社長とは、どんなノートがいいか。ペンは何を使うべきかで話が弾んだ。シチュエーションによってメモをとるノートを変える話はとても興味深かった。
パソコンを使ってメモをとる人の気持ちはわかる。社長が話したとおり、パソコンでメモをとると【10】聞いて【10】メモできる。聞いたことをすべて記録できるのだ。
しかし、これが大きな落とし穴だ。
紙でメモをとると【10】聞いても【2~3】しかメモができないが、だからこそ相手が話している内容の論点、本質はどこにあるのか。頭がフル回転する。
それによって脳に負荷はかかるが、その分思考が鍛えられる。稲盛和夫氏が語ったとおり、「賢いヤツほど複雑なことを単純に考える」ものだ。
複雑なことを単純に捉える訓練のためにも、紙のノートにメモをとるほうがいい。パソコンでメモをとるよりも。