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ラストシーンにぞわぞわ。意味深な終わり方の名作3選!【エンディング後にすぐ再視聴した作品】

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

映画を見終わってから「えっ、あれって、どう言う意味だったの?」と引っかかりを覚える作品ってありますよね?
印象的なセリフやシーンが頭に残ってつい考え込んでてしまう。
そんな時間も映画を見る醍醐味でしょう。

そこで今回は、ラストシーンが謎めいていて、見終わってからぞわぞわする作品を3つ紹介します。内容はそれぞれ「戦争ミステリー」、「アニメ」、「ホラー」です。どれも筆者がエンディング後に気になって再視聴してしまった作品なので、ラストにぞわっとすることうけあいです。

連休最終日の今夜、レンタルや配信を利用してお家でじっくりと楽しむのにもオススメの作品ですので、興味を持たれた方はチェックされてみてはいかがでしょう?

※ネタバレ控えめで書いておりますが、気になる方は鑑賞後にお読みください。

この先、若干のネタバレあり。特にラストシーンの項目は結末部分に言及しておりますのでご注意ください
この先、若干のネタバレあり。特にラストシーンの項目は結末部分に言及しておりますのでご注意ください

戦争映画としても、ミステリ映画としても上級品

ブラックブック

2006年の映画。『ロボコップ』(1987)や、『エル ELLE』(2016)でも高い評価を受けているポール・バーホーベン監督の作品で、第二次世界大戦でナチス・ドイツ占領下にあるオランダが舞台。主な出演はカリス・ファン・ハウテン、セバスチャン・コッホ、トム・ホフマンなど。ミステリ色の強い戦争・スパイ映画、戦時下の敵同士の禁じられた恋愛を描いたロマンスの要素も楽しめる。

第二次大戦後、主人公のラヘル(演:カリス・ファン・ハウテン)はイスラエルで暮らしており、そんな彼女が戦時中を回想する形で物語は始まります。
ラヘルはユダヤ人女性であったため、戦時中はナチスから隠れて暮らしていました。あるとき、ラヘルの身に危険が迫り、彼女はドイツ軍の占領下に無い地域へと逃れようとしますが、敵に見つかってしまいます。
家族を失いながらもなんとか生き残ったラヘルは、レジスタンスに加わり、エリスと名を変えてスパイとしての活動を始めます。

みどころ

ラヘルはとても強く賢い女性で、特殊な訓練は受けていないにもかかわらず、スパイとしてドイツ軍に潜入し、数々の危険を潜り抜けていきます。しかし、ラヘルの周囲ではつぎつぎに悲惨な事が起こり続けます。

ラヘルの運命は余りにも過酷で、疲れ果てた彼女は「自分はいつまで苦しみ続けなければならないのか」と涙を流します。

重たい内容なので元気がないときに見るのはちょっとしんどいかもしれませんが、戦争映画というだけでなくミステリやロマンス的な面白さもあります。
「ラヘルを陥れたのは誰なのか」という点に注目しながら見ると、より映画を楽しめることでしょう。

ラストシーン

戦後イスラエルに移住し、幸せそうな笑顔を浮かべるラヘル。その姿にほっとしますが、最後の最後に慌ただしく走り回る軍人の姿が描かれ、砲撃か銃声らしき音が鳴り響きます。

いったい何が起きたのかと映画を見直してみたところ、映画の冒頭には1956年10月とありました。また、ラストシーンの直前まで、ラヘルは海岸のような場所に佇んでいました。「1956年」、「イスラエル」、「海辺」をキーワード調べれば、ラストシーンの意味はすぐに分かりました。そして、それが分かってから映画を見直すと、苦しみが続く人生を嘆いていたラヘルの言葉がより深く胸に刺さります。

第二次世界大戦終結は1945年。その後、1956年には第二次中東戦争が勃発する
第二次世界大戦終結は1945年。その後、1956年には第二次中東戦争が勃発する

重厚なストーリーの劇場アニメ

屍者の帝国

2014年の映画で、原作は小説家の伊藤計劃氏と円城塔氏による同名作品。原作はそもそも伊藤計劃氏による長編小説となるはずだったが、序盤を書いた段階で伊藤氏が病により亡くなり、続きを円城氏が執筆した。19世紀のロンドンから始まり、世界を旅する形式の、スチームパンク風な物語。屍者を蘇らせる技術(ただし、人間味はない操り人形のような状態)のある世界観で、主人公は技術の探求や、魂を持った人間を蘇らせる技術を模索する。

フランケンシュタインの開発した「屍者を蘇生して労働力として使う技術」が普及した世界で、主人公のワトソンはかつて友人だったフライデーの屍体とともに、ザ・ワンという人の言葉をしゃべる唯一の屍者と、フランケンシュタインの残した手記を追う諜報活動のために世界を旅しています。
ワトソンは仕事としてザ・ワンや手記を探しているだけでなく、言葉も感情も持たない屍者となったフライデーに魂が残っていることを確かめたいという願いも持ちつつ、屍者を蘇生する技術を探っていきます。しかし、その裏では、秘密や陰謀が怪しくうごめいているのでした。

みどころ

本作には、さまざまな名作をオマージュした人物が登場します。屍者を蘇らせる技術を開発したヴィクター・フランケンシュタイン(『フランケンシュタイン』より)や、主人公のジョン・H・ワトソン(『シャーロック・ホームズ』より)、エイブラハム・ヴァン・ヘルシング(『吸血鬼ドラキュラ』より)、アレクセイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ(『カラマーゾフの兄弟』より)など。それらの作品のさわりだけでも知っていると、本作をより楽しめるでしょう。あるいは、鑑賞後に調べてみても面白いかもしれません。

また、本作はアニメ作品ながら、重厚な作風で映像も非常に綺麗です。
ワトソンとフライデーは、イギリス、日本、ロシア、アメリカなど世界を旅しているため、訪れた国ごとに違った景色やキャラクターを見られるのも魅力です。

冒険、アクション、エキゾチックさ、ミステリアスな展開。少し複雑なストーリーなので気軽に見るには疲れる作品ですが、どっぷりと世界観に浸って楽しみたいときにはオススメできる内容でした。

ラストシーン

ワトソンと旅をするフライデーは基本的にしゃべらず、感情も感じられません。ワトソンが命じればその通りの行動をしますが、自発的な行動もしていません。いくらフランケンシュタインの技術で蘇らせたとしても、魂は失われてしまっているのでしょうか。

ところが最後の一瞬、「気のせいかな」と思う程度ですが、フライデーの表情に生気があるように見える瞬間があります。そこで本編は終わり、エンドロールに切り替わります。でも、まだ見るのをやめてはいけません。エンドロールもじっくり鑑賞しましょう。エンドロール中にも物語のピースが隠されています。

本作を配信やレンタルでご覧になった方の中には、このピースに気づかなかった方もいるかもしれません。しかし、このピース一つで本作に対する印象は大きく変わってくるはずです。エンディングが始まっても見るのをやめたり早送りしたりしないように気をつけましょう。

物語の舞台は、イギリス、アメリカ、ロシア、そして日本
物語の舞台は、イギリス、アメリカ、ロシア、そして日本

その笑みにぞわっとする

ミッドサマー

2019年のホラー映画で、R15+に指定されています。現在公開中の映画『ボーはおそれている』のアリ・アスター監督の作品で、主演はフローレンス・ピュー。スウェーデンのある村で白夜の時期に行われる夏至祭の奇習や人身御供の儀式を描いている。映画は全体的に明るくカラフルに描かれているのに、非常に不気味で陰惨な雰囲気をまとっており、明るいホラーとしても有名。

主人公のダニー(演:フローレンス・ピュー)は、恋人やその友人の男性たちとともに、スウェーデンのホルガ村で行われる夏至祭に行きます。当初はのどかなお祭りを見物していた主人公たちですが、徐々に不穏な空気が漂い始めます。この夏至祭では、無残な方法で人を殺害する人身御供の儀式が行われていたのです。主人公たちは目の前で行われる死の儀式に怯えます。それでも夏至祭は淡々と続いていきます。

みどころ

冒頭から悲惨なシーンで始まる本作。主人公たちの行動も常に不吉な雰囲気をまとっています。夏至祭が始まってしばらくは主人公たちは楽しそうにしているのですが、映画を見ている側はもう不安しかないはずです。

多くのホラー作品では危険は暗闇の中から襲ってきますが、本作は明るい中で全てが起きるので、不安の要素がはっきり見えてしまいます。分からないから怖いではなく、分かっているから怖い。
ありきたりなホラーに飽きてしまった方には強くオススメしたい作品です。ただし、この手の作品が苦手な人にはただ不快な作品に感じられると思うので、ホラー嫌いな方や、ゾンビ映画のような激しい展開をお好みの方には合わないと思います。

ラストシーン

最後のシーンは燃え盛る建物と苦痛に満ちた悲鳴、壊れてしまったかのように叫ぶ村人たちが印象的です。そんななか、主人公のダニーは嬉しそうな笑みを浮かべます。彼女はそこまでにいくつもの酷い目に遭っており、笑うような場面ではないにもかかわらずです。この笑顔が何を意味しているのかは映画公開当初から議論になっています。

さらに、その笑顔を見た後で本作を思い返すと、いくつも気になる場面が思い出されることでしょう。これからのダニーの運命や夏至祭の本当の意味などが気になって、もう一度じっくりと見直してみたくなる人も多いはずです。

白夜は何となく不気味な感じもする。一説によると、白夜のある北欧では精神を病む人も多いのだとか…
白夜は何となく不気味な感じもする。一説によると、白夜のある北欧では精神を病む人も多いのだとか…

今回は見終わってからぞわっとする洋画2作品と国内のアニメ映画を1作品紹介しました。

なるべくネタバレをしないように書いているのでピンと来ない部分もあることと思いますが、映画を見ればきっと納得するはずです。「みどころ」や「ラストシーン」が気になった人は、レンタルや配信をぜひチェックしてみてください。

今回紹介した映画・アニメは、どれもシリアスで重めの作品でしたが、もっと気楽に見れるものも記事やX(旧Twitter)にて紹介しています。興味のある方はそちらもぜひご覧ください。
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作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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