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ワイヤレスイヤホンは泣けるパーソナライズオーディオが次の進化

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー
パーソナライズオーディオを実現するNuraLoop(著者撮影)

もともとヘッドホン・イヤホンというのは需要が高い時代がずっと続いてきましたが、AirPodsに代表されるようなスマホ連携・フルワイヤレスの時代となって、さらに機能面での強化が加速しています。

フルワイヤレスなんていうのは、AirPods登場からもう4年になりますから、もはや当たり前。ノイズキャンセリングも当然装備されるべきものですし、ノイキャンもアクティブノイズキャンセリングへと進化してきています。

すると、残る牙城はどこか?という話になってきます。さらなる高音質化というのは、当然各メーカーやってきているわけですが、そもそもスマホでワイヤレスということで、どうしても音質向上の天井があるのもやむを得ないところです。

そうなってくると、残るのがカスタマイズの領域です。なぜでしょうか?

AirPodsがフルワイヤレスイヤホンとして、大きく普及した際に、ちょっとした問題となったのが、落下とかなくしたりする問題でした。なにしろ、AirPodsはフルワイヤレスですから、ケーブルがなく、耳にひっかけるだけですからね。そして、この構造上仕方がないのですが、どうしても耳に合わない人というのが出てきてしまいます。つまり、AirPods以前は耳の形が多少違っていても、大きな問題はなかったのですが、AirPods登場以降、それが落下というデメリットとして表面化したわけです。

そして、この問題が表面化したときに、改めて思ったことは「人は個人個人意外と耳の形が違う」という当たり前のことでした。そして、例えばスピーカーの形状が違ってしまえば、音も変化するように、それぞれの人の耳の形の違いにメーカーが注目しはじめたのです。

先に出てきたのは、要するにイヤホンの形をその人の耳の形に完全チューニングするというハードウェア的な手法でした。

こういったアプローチは、そもそもイヤホンメーカーというのは、商品を開発する際に耳の型どりをやってきていたことと関連があるでしょう。

中でもソニーは、独自のブランドを立ち上げており、試聴→注文→耳型採取→音質調整(製品による)→製作→お渡しというところまで完成されています。

これはなにしろ専門の音響エンジニアが耳の形から最適な形を導き出してくれるわけですから、とにかく自分の耳にフィットします。イヤホンの世界では自分の耳に合わないものは、当然音質低下になりますからね。そしてその装着感も格別なものなるでしょう。

ただ、この商品は1人1人カスタマイズして作られる製品ですから、当然20万から30万円程度というかなりの高額商品です。私も正直欲しいですが、悩み続けて早何年です。

そして、次に出てきたのが、耳に合わせて音を変えるというソフトウェア的な手法です。そう、耳の形が違うのであれば、聞かせる音をそれにマッチする形で変えてしまえばいい結果になるのではないか?ということです。

それが2019年のCESで登場して話題となったNuraphoneです。ただ、これはいわゆるオーバーヘッドのヘッドホンタイプで普段使いにはちょっと厳しいかなと思って見送っていました。

でもですね。その後継機というか系列機として、ワイヤレスタイプのNuraLoopが登場し、かつ日本でも正式に取り扱いが開始されるというアナウンスがありました。

https://nura.jp/

そんなわけで、さっそくモニターをお願いしたところ、こころよくモニター機を貸し出しいただいたので、そのご紹介というわけです。なお、価格は2から3万円程度になるはずです。

NuraLoopパッケージ(著者撮影)
NuraLoopパッケージ(著者撮影)
NuraLoop本体(著者撮影)
NuraLoop本体(著者撮影)

先に結論めいたものを言っておきますと、NuraLoopすごいです。

でも、そのすごさの方向がいわゆる高音質方向ではなく、自分の好きな音楽とマッチするという意味ですごいんです。これは、つまりイヤホンなどの今までの高音質方向とは違う評価軸で考えないといけないイヤホンが出てきたということなんです。

▼NuraLoopのハードウェア

NuraLoopはワイヤレス・アクティブノイズキャンセリングイヤホンです。まさにいまどきのデザインですね。

NuraLoop本体(著者撮影)
NuraLoop本体(著者撮影)

そして、NuraLoopは左右が独立しているフルワイヤレスでないのは少し残念ではありますが、ケーブルに工夫があるので、あんまり気になりません。耳にひっかける部分の形状を自分の耳に合わせて曲げることができるので、フィットできるように調整可能になっています。

NuraLoopの曲げても位置が変わらないケーブル(著者撮影)
NuraLoopの曲げても位置が変わらないケーブル(著者撮影)
NuraLoop装着(著者撮影)
NuraLoop装着(著者撮影)

また、イヤホンのフィット感に影響が出るのが、イヤーチップです。

NuraLoopに付属するイヤーチップはS・M・L・XLの4種類
NuraLoopに付属するイヤーチップはS・M・L・XLの4種類

音に没入するには、このイヤーチップは大事。だからS・M・L・XLと3つのサイズ(デフォルト装備はM)が用意されています。そして、後述しますが、自分の耳にパーソナライズする際にも、このイヤーチップは大事なパーツになります。

さらに、小さなことなんですが、感心したのが充電ケーブル。この充電ケーブル、一見天地がわかりにくそうなんですが、マグネットが仕込まれており、正しい方向でしか刺さらないようになっています。こういうのすばらしく大事。素敵。

NuraLoop充電ケーブル・この方向だとピタっとはまる(著者撮影)
NuraLoop充電ケーブル・この方向だとピタっとはまる(著者撮影)
NuraLoop充電ケーブル・この方向はマグネットの反発ではまらない(著者撮影)
NuraLoop充電ケーブル・この方向はマグネットの反発ではまらない(著者撮影)
NuraLoop充電ケーブル・充電はじまると光ります(著者撮影)
NuraLoop充電ケーブル・充電はじまると光ります(著者撮影)

▼NuraLoopのアプリ

NuraLoopはスマホ対応のワイヤレスイヤホンですから、アプリ必須です。というか、アプリを起動するとそのままチュートリアルになっているのも、実に今どきです。もろもろの細かい設定もアプリの指示にしたがってすすめればいいだけです。

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

普通はここからアクティブキャンセリングの設定とか、(イヤホン本体の)タップの設定とかをして終わりなのですが、NuraLoopの場合はここから先が真骨頂です。具体的なパーソナライズはここからです。

まず、静かなところにいきなさいときます(笑)。

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

そして、フィットテストがあります。ここ、すごく大事なポイントです。このフィットがうまくいっていないと、次のパーソナライズがちゃんと機能しないんです。

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

フィットテストをクリアすると、ついにパーソナライズの調整がはじまります。

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

これはなにをしているのかというと、パーソナライズのための音を実際のユーザーの耳の中で鳴らし、内耳の反響音をマイクで検出して、それぞれのユーザーの聴力を測定しているのです。このNuraLoopの技術は、もともとは赤ちゃんの難聴を測定する技術だったものを応用したものだそうです。

サンプルとして、私の聴力プロファイルの結果をお見せします。

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

この形は、左上がHi、右上がLow、下がMidということになっています。つまり、私の場合、Hiがよく聞こえて、Lowがやや弱くて、Midがいちばん聞こえにくいという形ということになります。

つまり、この聴力プロファイルのデータが、実際に聴く音楽の音をパーソナライズする根拠となっているわけです。

さらに、ここから反響モードというのを調整していきます。私はとりあえず真ん中にしてみました。

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

ということで、パーソナライズと聞いて、ややこしい設定でもあるのかと思いきや、1回テストするだけで、あとは反響モードの具合を調整するだけなんです。なんか簡単だ、、、

NuraLoopのアプリより
NuraLoopのアプリより

肝心のNuraLoopの音がですが、ニュートラルの状態ではけっこうすかすか感があります。でも、いざパーソナライズ済にすると、音がまさに一変します。

私はあたらしいヘッドホン・イヤホンを入手すると、自分のお気に入りの曲をひと通り再生して楽しむのですが、このNuraLoopのときは、その作業を気づけば90分ぐらいやり続けていました。ということで、NuraLoopを聞いてのインプレッションはこんな感じになります。

  • いろんな音がつまっている音楽がマッチしやすい
  • 今まで聞こえていなかった音が聞こえる
  • アニソンが基本的に超よくなる
  • アコースティックもけっこういける
  • 古い楽曲だってよみがえってしまう
  • なぜかティンパニ最高

で、90分ほど作業をしている中で、1曲異次元の反応をしてしまった曲がありました。それはあるアニメ作品のサントラだったのですが、イントロが終わって、オケが入ってきた瞬間にもう涙が止まらない。なんだ、これは、、、

ああ、パーソナライズって、こういうことなのかと。音楽で感情がゆさぶられる部分が、NuraLoopで聴くと、さらにがつーんがつーんとくるんです。この日、この曲で何度も泣きました。すごかった、こんな体験をイヤホンですることになるとは、、、

それを体験して、一度作ったNuraLoopに合う音楽リストをさらに精査していくと、その途中で気づきます。これ、ほぼ自分のオールタイムベストと同じじゃん、、、

そして、ここから先は半分妄想です。

パーソナライズされた音楽に感情をゆさぶられるということは、もともと自分は自分の耳に合う音楽を好んでいたのではないか?ということです。

すばらしいアーティスト、すてきな曲、それも大事だけど、その前に実は自分の耳にどうしてもその耳の形から好きになってしまう音楽があるのではないかという疑いですよ、これは。

最新型のイヤホンの話をしていたはずが、こんなことになっていますが、とにかく自分の好きな曲をかたっぱしから聞きまくるという体験をNuraLoopは提供してくれます。もちろんアクティブノイズキャンセリングとかバッテリー16時間再生とか、今どきのワイヤレスイヤホンで求められる機能はちゃんと入ってもいます。

でも、とにかく自分用にチューニングされた音を聴くというのはどういう世界なのか、それをまずは体験するのがいちばんでしょう。まずは、そこが十分にすさまじく価値のあるイヤホンだと思います。ぜひ、お試しを。

▼NuraLoopが体験できるところは以下

  • 渋谷PARCO 1F「BOOSTER STUDIO」

https://booster.studio/

  • 港区麻布台「R-StartupStudio」

https://r-startupstudio.com/

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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