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「最も尊敬する男性」にトランプ氏 オバマ氏を初めて抜いて単独首位に立ったのはなぜか? 米調査

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏は初めて、米国人が「世界で最も尊敬する男性」となった。(写真:ロイター/アフロ)

 「世界に存命している男性の中で、最も尊敬している人物は誰か?」

 米調査機関ギャラップは、毎年、アメリカの人々にこの質問を投げかけて調査を行なっているが、今年も12月1日〜17日に、18歳以上の1018人の成人を対象に、2020年度調査が実施され、12月29日、結果が発表された。

トランプ氏がオバマ氏を抜く

 それによると、18%の回答者がトランプ氏を最も尊敬していると回答、トランプ氏が12年間首位に立ってきたオバマ氏を初めて抜いた。ちなみに、来年、次期大統領に就任するバイデン氏と回答した人は6%で、バイデン氏はオバマ氏に次いで3位となった。

 ギャラップは1946年から74回この調査を行なっているが、うち、60回、現職大統領が「最も尊敬する男性」に選ばれている。現職大統領が選ばれないケースは、その大統領の人気がない時。トランプ氏の場合は、2017年と2018年はオバマ氏に次いで2位、2019年は両氏ともに18%を獲得して首位を分け合い、今年初めてトランプ氏はオバマ氏を抜いて単独首位に立った。ちなみに、トランプ氏は政界入りする前に4回トップ10入りしており、今回トップ10入りするのは10回目だ。

「世界で最も尊敬する男性」2020年度版のトップ10。出典:GALLUP
「世界で最も尊敬する男性」2020年度版のトップ10。出典:GALLUP

なぜトランプ氏が単独首位に立ったのか?

 それにしても、支持率が下降を続けているトランプ氏が「最も尊敬する男性」となったのは意外だ。同氏がオバマ氏を凌駕することができたのはなぜなのか?

 ギャラップによると、その背景には、共和党支持者がトランプ氏を圧倒的に支持している状況があるからだという。実際、48%の共和党支持者が最も尊敬している男性はトランプ氏と回答。2%以上の共和党支持者から尊敬されていると指摘された公人はトランプ氏以外にいなかった。

 また、ギャラップの別の調査によると、共和党を支持している有権者の87%がトランプ氏を支持していることもわかった。

 一方、民主党支持者の場合、支持対象が分散しているため、オバマ氏だけに回答が集中することがなかったという。民主党支持者の間でオバマ氏と回答した人は32%と昨年の41%から低下する一方、13%が次期大統領のバイデン氏と回答したのだ。オバマ氏とバイデン氏で回答が割れたのは、それだけ、多くの米国民がバイデン次期政権に期待を寄せている証拠だろう。民主党大統領候補だったバーニー・サンダース氏も6回目のトップ10入りを果たし、根強い人気がある。

 また、今年大活躍した米新型コロナ対策チームのアンソニー・ファウチ博士は4位にランクインし、特に、民主党支持者の5%が同氏を尊敬している回答した。

「最も尊敬する女性」はオバマ夫人

 一方、「最も尊敬する女性」は、ミシェル・オバマ氏が3年連続でトップとなった。2位は初のトップ10入りを果たした次期副大統領のカマラ・ハリス氏、3位はファースト・レディのメラニア・トランプ氏である。過去の調査を振り返ると、「最も尊敬する女性」はファースト・レディがトップに立つことが圧倒的に多かったが、メラニア夫人の場合はトップ10入りはしても1位になることはなかった。

 また、ニューヨーク州のオカシオ・コルテス議員や米最高裁判事に選ばれた保守派のエイミー・バレット氏が初めてトップ10入り、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは2度目のトップ10入りを果たしている。

「最も尊敬する女性」2020年度版のトップ10。出典:GALLUP
「最も尊敬する女性」2020年度版のトップ10。出典:GALLUP

 ギャラップは、共和党支持者がトランプ氏以外に尊敬できる公人の名前をほとんどあげておらず、また、民主党支持者の尊敬する対象が分散している状況を考えると、トランプ氏が将来大統領選で勝利する可能性があると指摘している。

動画で大統領選出馬を暗示か?

 トランプ氏も2024年の大統領選出馬の可能性をにおわせ始めている。12月29日には、出馬を予感させるかのような以下の動画をツイートした。

 動画でトランプ氏は「アメリカのために闘う」「アメリカの人々の雇用のために闘う」「自由や正義、軍事力、平和、法と秩序のために闘う」と訴えている。トランプ陣営は、バイデン氏の大統領就任式に合わせて2024年の大統領選の選挙運動を開始する可能性があるとも報じられているが、この動画は、まるで選挙キャペーン用の動画のようにも見える。

 トランプ氏は共和党支持者からの狂信的支持を背景に、選挙運動を開始するのか? 2021年もトランプ氏の動向から目が離せない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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