七十二候の虹蔵不見と朔風払葉、東京地方で「木枯らし1号」の吹かない可能性も
七十二候(しちじゅうにこう)の虹
11月22日は、七十二候の虹がかくれて見えなくなる日とされる「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」です。
七十二候は、古代中国で考案された季節を表す方式のひとつで、二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた期間のことです。
月の運行をもとにした太陰暦で生活していた昔の人にとって、実際の季節とはずれないことから、農業等を行う目安でした。
昔の日本は、月の運行をもとにした太陰暦で生活をしていたといわれますが、二十四節気や七十二候を用いて暦と季節のずれを正していた太陰太陽暦が使われていたのです。
しかし、大陸の中国で生まれた言葉を、海で囲まれた日本でそのまま使うと、大陸の方が早く季節が進むため、実際の季節とはほとんど一致しません。
ただ、昔の日本人の知恵として、例えば、二十四節気の「小雪(雪が降り始める頃:11月22日~12月6日)」であれば、「これから雪が降り始める季節になるので雪対策の準備を始めよう」など、準備を始めるタイムラグを考えて、暦の上の季節と、実際の季節との差を利用していたのではないかと思います。
七十二候の名称は、古代中国のものがそのまま使われている二十四節気に対し、何度か日本の風土にあうように変更されています。
ただ、虹蔵不見は、4月14日頃の「虹初見(にじはじめてあらわる)」などとともに、中国の名称がそのまま使われています。
虹は空気中に浮遊する水滴によって太陽からの光が屈折して現れます。
条件さえ整えば、いつでも見られる現象ですが、空気中に多くの水滴が浮遊し、強い日差しの時にはっきりと見えます。
つまり、虹は冬よりは夏のほうが多く出現し、はっきりと見えます。
虹が夏の季語の所以です。
七十二候によれば、虹初見が始まる4月14日頃から虹蔵不見が終わる11月26日頃までが虹の綺麗に見える季節と言うことができ、これは、中国も日本も同じといえそうです。
周期的に雨の天気
11月20日の日曜日に雨をもたらした低気圧が日本の東海上に去り、大陸から南東進する移動性高気圧に覆われ、晴れる所が多い週明けとなっています。
このため、22日の火曜日は、西~北日本の太平洋側では概ね晴れますが、移動性高気圧の北側に位置する北陸や北日本では午前中を中心に所により雨や雷雨となるでしょう。
北海道では雪の混じる所もある見込みです。
また、移動性高気圧の南縁にあたる中国大陸から東シナ海では前線が顕在化し、前線上に低気圧が発生しそうです(図1)。
このため、西日本は午前中は晴れる所が多いものの、午後は西から次第に雲が広がり、夕方以降は九州~中国・四国で雨が降る見込みです。
南西諸島も日中は晴れますが、夜には所によりにわか雨があるでしょう。
そして、11月23日の勤労感謝の日は、低気圧が日本列島を通過しそうです。
晴れることが多いとされる勤労感謝の日ですが、今年は北海道を除いて雨の所が多そうです(図2)。
そして、週末にかけて太平洋側を中心に晴れるものの、来週の週明けは、再び低気圧の通過によってほぼ全国的に雨になる見込みです。
北海道は寒気が南下し、曇りや雪の日が続く見込みです。
令和4年(2022年)の冬の指標
令和4~5年(2022~23年)の冬は、10月25~27日の寒気南下で始まったといえます。最低気温が氷点下となる冬日が、全国の約20パーセントで観測されました(図3)。
数日前には、最高気温が25度以上の夏日が、全国の20パーセント以上で観測されていますので、10月下旬の寒さは、実際の温度以上に寒く感じた人が多かったのではないでしょうか。
その後、しばらくは冷え込まなかったのですが、立冬の少し前から冬日の観測地点数が増えています。
順調に冬に向かうと見られていた日本列島ですが、ここへきて、冬への歩みが止まっています。
冬の訪れをつげる指標に、冬日などの他に、初冠雪、初雪、初霜、初氷という初の字がつくものがあります。
令和4~5年(2022~2023年)冬の初冠雪は、9月30日に甲府地方気象台が富士山の初冠雪を観測したのを始め、これまでに初冠雪を観測する44山のうち、27山で観測しています。
これまで平年より早いのは富士山など12山、遅いのは(平年を過ぎているのに未観測の山を含む)15山、同日が4山となっていますが、最近では、ほとんどが平年より遅く観測しています。
初冠雪からみると、冬の季節の訪れは早かったのですが、その後、急ブレーキがかかったといえるでしょう。
また、初霜も10月7日に札幌市で観測するなど、平年より早く観測されていましたが、最近では仙台で平年より遅い11月18日に観測するなど、急ブレーキがかかっています。
さらに、初雪は稚内で11月3日と平年より遅い発表となり、その後、11月16日に札幌と盛岡で観測するなど、平年より遅い観測が続いています。
初の字のつく冬の指標からは、今年の冬の訪れは平年より遅くなっているといえそうです。
朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)
虹蔵不見が終わると、11月27日からは、七十二候の北風が木の葉を払いのけるとされる「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」です。
これは、日本での名称で、中国では天地の寒暖の差が逆になるとされる「天地上騰地気下降」という名称でした。
日本では、七十二候の名称のうち、分かりにくいものや、実際にありえないと思えるものは、実際に体感できる(できると思われる)ものに変更していった一環かと思います。
木枯らしは、晩秋から初冬の間に吹く風で、冬の季節風の走りの現象です。
名称の由来は、諸説ありますが、吹くたびに紅葉を吹きとばし林を枯れ木立にしていくので、木枯らしと呼ばれているとされます。つまり、朔風払葉です。
気象庁では、東京地方と近畿地方(2府4県をまとめて)について、木枯らしが最初に吹く日(木枯らし1号)の情報を発表しています。
これは、気象庁は、天気に関する問い合わせが多い東京と大阪に天気相談所を設置しており、そこで調査をしたという経緯と関係があります。
東京地方の「木枯らし1号」の定義は、「10月半ばから11月末において、西高東低の気圧配置で、東京都心の風向が西北西から北、風速が毎秒8メートル以上のとき」です
また、近畿地方の「木枯らし1号」の定義は、「霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)において、西高東低の気圧配置で、総合判断で、近畿地方で風向が北よりの風、風速が毎秒8メートル以上のとき」です。
令和4年(2022年)の近畿地方の「木枯らし1号」は、11月13日の夜に吹きましたが、東京地方では、まだ吹いていません。
東京で木枯らしが最初に吹く日(木枯らし1号)の平年日は、朔風払葉より約20日前の立冬の頃です。
七十二候でいうと、日本の名称では「山茶始開(サザンカが咲き始める)」、中国の名称では「水始氷(水が凍り始める)」の頃です。
気象庁が11月21日に発表した早期天候情報によれば、全国的に向こう2週間の気温は、寒気の影響を受けにくいため平年より高い日が多く、特に、27日(日)ごろからは平年よりかなり高くなる見込みです(図4)。
つまり、冬型の気圧配置となって寒気が南下することなく12月を迎え、東京地方の「木枯らし1号」の定期から、「東京で木枯らし1号が吹かなかった年」と言うことになりそうです。
図1、図4の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:ウェザーマップ提供。
図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。