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新朝ドラ「虎に翼」の第1回を出演者はどう見たか。伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかしの声

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「虎に翼」会見より 猪爪親子勢揃い。写真提供:NHK

「今の変わりつつある時代の日本にもぴったりくるような気がしませんか」(石田)

2024年4月1日、朝ドラこと連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)がはじまった。

“日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。困難な時代に立ち向かい、道なき道を切り開いてきた法曹たちの情熱あふれる姿を描く””極上のリーガルエンターテインメント”とNHKの公式サイトにはある。

ここでは、放送に先駆けて行われた会見の模様をお届けする。これから見続ける参考になれば、と思う。

出席者は、主人公・猪爪寅子役の伊藤沙莉さん、母・はる役の石田ゆり子さん、父・直言役の岡部たかしさん、制作統括の尾崎裕和さん。

初回の放送4月1日(月)がエイプリルフールであることにちなみ、「この日どんな風に第1回8時の放送をご覧になるつもりですか」という、ある記者からの質問に3人は和やかに回答した。

伊藤「X(旧Twitter)を開いて、#虎に翼 で構えて、テレビを見届けて、ある程度エゴサしたらリハーサルに向かいます(朝ドラでは月曜日はリハーサルや本読みの日)」

岡部「わたくしごとですが初回オンエアの夜、鶴瓶さんの『家族に乾杯』に出演させていただきますので、『たかし祭り』と言っております。その祭りにふさわしい格好をして、テレビの前で1日過ごしたいと思います」

石田「お風呂入って身を清めて、風も窓も開けて風通しを良くして、いい感じになった自分で見たいです」

とてもいい感じの親子役3人である。

会見では、まず尾崎さんが「胸を張って皆さんに見ていただけるものができたと思います」と挨拶したあと、伊藤さん、石田さん、岡部さんが第1週を見ての感想を述べた。

伊藤「すごくテンポが良くて、猪爪家の楽しい雰囲気も伝わって、気持ちのいいスタートが切れました。これから寅子が法律と出会い、第2週に向けて、続きが気になるものになっているのではないかと思います。私自身も今後が楽しみだと感じました」

石田「第2週まで拝見しまして。本当にとても素晴らしいドラマになっています。何よりも沙莉さんが演じる寅ちゃんが本当にチャーミングで可愛くて。彼女のお母さん役が演じられることがとても幸せなことだと改めて思いました。法律をテーマにした朝のドラマは28年ぶりだそうで(96年の『ひまわり』以来)、とても新鮮な切り口でいろんな方に楽しんでいただけると思います」

岡部「第1週の冒頭、河原で寅子が憲法14条を読んでいるシーンにグッときました。あえて後ろ姿で表情を見せないにもかかわらず、これまでこの権利を勝ち取るために戦ってきたというようなことや、寅子が信念をもって歩んできたことが見えて心を掴まれました。すごく引き込まれるはじまりで、ほどよく笑いもあって、緩急のある作品だと思います」

以下、記者からの質問に対する回答

◯第1週の猪爪家のシーンの撮影で一番印象に残っていること

伊藤「猪爪家だけでリハーサルや本読みをしていて、そのときも含めて印象的なことが多すぎるのですが、とくに、お兄ちゃん・直道(上川周作)のキャラづくりがさすがです。いつも少し意味不明なことを言っている役なので、何この人?と思われそうなところもありながら、上川さんの思いがけない切り口によって、なんやかんやで、すごく愛されるのではないでしょうか。台本に書かれた口癖をすぐに自分のものにし、意外とさらりといけなくもないところをちゃんとキラーワードのように扱っていたことが素晴らしいと思いました。猪爪家の個性豊かな楽しい雰囲気の中でお兄ちゃんも凄く欠かせない存在にもかかわらず、こういう場にいつもいないから……お兄ちゃんも忘れないでいただきたいなと思います」

石田「家族なので、みんなでご飯を食べるシーンがたくさん出てきます。ドラマのなかでは、私の役・はるが作っている設定ですが、当然、実際はスタッフのかたが作っていただいているわけでして(笑)。そのご飯がものすごく美味しいんです。味のみならず盛り付けも美しくて。撮影が終わると、みんな真面目にそのご飯を食べるというこういうことが毎回続いていて。その繰り返しが家族の絆を作ってくれているような気がします」

岡部「オンエアではカットされることが多いのですが、会話場面をアドリブで繋いでいくこともあるんです。そういうノリを続けていくことが現場をいい雰囲気にしていくと、僕は思っていて。住み込みの書生・佐田優三役の仲野太賀さんは、はじめましてにもかかわらず、僕のアドリブ芝居にすごく応えてくれました。乗ってくれるというか返してくれるんです。太賀さんに限らず、みんなでお互いを信じて演じられたかなと思います」

◯オンエアを前にどんなことを思っていましたか

伊藤「最初はやるぞ!と思っていて、でも、やっていくなかではたしてこれは合っているのか、ほんとにこれでいいのかなとか思うことがあります。もちろん監督に相談に乗っていただいてやっていますが、ちょっと不安になりかかったとき、第1週を見たら、あらためてやる気がでました。おもしろくて、このまま突き進めばいいんだと自信になりました。放送がはじまってたくさんの人が見てくれた暁には、いろんな感想が生まれると思いますが、それらもすべてパワーにできる気がしています」

石田「このドラマで法律を扱っていることが、ちょうどこの今の変わりつつある時代の日本にもぴったりくるような気がしませんか。世の中の感想がとても楽しみです」

岡部「僕自身が楽しんだことは、絶対に届くはずだと思っていて。第1週を見てもそういうふうに思いましたので、たぶん皆さん、面白がってくれるんじゃないかというワクワクの方が強いかもしれません」

◯それぞれの共演してみて

伊藤「どのシーンを撮っていても、石田さんと岡部さんのお2人から愛を感じています。すごく寅子としてとても愛されている安心感の中でのびのびと撮影させていただきました。第1週のお見合いシーンでは、なかなか見合いがまとまらない寅子に、今度こそ!と心配しているお2人の演技は本当に可愛い夫婦に見えました。岡部さんはいつもアドリブが面白いのですが、その時のゆり子さんの反応もすてきで、その空気感がとてもいいです。このお2人の子供だったらあたたかい家庭で幸せに暮らすだろうなと思いますし、本当に自慢の両親という感じです」

石田「初期の取材でも同じことをお話ししているのですが、沙莉さんは弾むボールのようで、球体の中に夢や希望がぎゅっとつまっていて、それがもうそのまま直球でこちらに飛んでくるような人なんですよ。受け取る人の気持ちを素直に動かすパワーが本当に素晴らしいと思います。私もそれに助けられました。私はこれまでたくさんの母親を演じてきましたが、その中でもはるは、たぶん一番強いと言うか、厳しいお母さんで、自分自身とは違うところがありますが、岡部さんと沙莉さんとの演技のなかで、自分にとって新たな役が自然に出来上がっていくのを感じています。才能のある方々がたくさんいる現場で、私も幸せな時間をたくさん過ごさせていただきました」

岡部「沙莉さんは、宣伝ポスターを初めて見たときめちゃくちゃかっこいいと思ってきました(伊藤「うれしい」と喜ぶ)。小柄ながら、表情がすごくかっこいい。一方で、学生時代の演技では本当に可愛いらしいですよね。石田さんには箸の持ち方を教わりました。僕は子供の頃、箸の持ち方をしっかり教わってこなかったもので、この歳になって初めて石田さんに箸の持ち方を教えられのが、とても幸せな時間でした」

◯寅子の多彩な弾けた表情はどのようにして生まれたか

伊藤「完パケを見て、こんな顔をしていたんだと思いました(笑)。私はあらかじめ考えることが苦手で、まずやってみようととにかく体当たりでやっていますが、チーフ演出の梛川善郎さんが、まず全力で見本をやってくださるんですね。まるで落語家のような身振り手振りで。梛川さんとのしごとは2回目だという岡部さんに、あのままやるべきなんですかね?と伺ったら、監督は、このシーンのテンションのレベルを提示しているだけであって、このぐらいまでやって大丈夫という意味で捉えれば、演技のヒントが見つけやすく、やりやすいかもしれないね、というような話をしてくださって。確かにやりやすいんです。そもそも、朝ドラは順撮りではないので、状況や心境が飛び飛びになるので、丁寧に説明してくださるのでそれもすごくやりやすいです。意外と自分から仕掛けるタイプでは私はなくて、周りの方々から与えてもらったものに素直に反応していたらいろいろな顔になってしまったという感じでした」

世界には苦しんでいる人や困っている人たちがいる。その人たちの思いを背負って法曹界に入っていく

◯昭和のはじめ、女性の立場が低く見られていたことについてどう思ったか

伊藤「驚きの連続です。今でこそ、みんなが当たり前に疑問に思うことや、なんで?と発言できることが言えないだけでなく、もともとそういうものと思って育っているから疑問にすら思わない環境下で、寅子は意外と現代的で、『なんで?』と素直に言える人物です。それを寅子は『はて?』と言っていて、彼女の『はて?』はとても貴重なものです。寅子の『はて?』は私自身の『はて?』の代弁でもあるという気もして、共感しています」

◯たくさんの女性の姿が意識的に描かれていることをどう感じましたか

伊藤「第1週目の終わりの橋の上の場面の撮影のとき、いろいろな世代の女性たちがいることに気づいたときとても感動しました。寅子の成長を軸に描かれた物語ですが、彼女をとりまく世界には苦しんでいる人や困っている人たちがいる。その人たちの思いを背負って法曹界に入っていくのだということを、演出で見せてもらって、身も気も引き締まりました。掲げたメッセージがしっかりあることが素敵だなと思いました。完パケを見たら、撮影では気づかなった細かいところにメッセージがちゃんとあることにも気づきました。そういうところも今後、大事に見ていただきたいと思います」

会見では親子役の3人がいいチームワークを感じさせた。

伊藤さんは出席してない兄役の上川さんに気遣い、石田さんは撮影はいつからだったかや自分の役の説明などの基本情報や法律のドラマと現代とのつながりを自ら語り、岡部さんは第1話の冒頭に描かれたことの重要性を端的に語り、あとはほのぼのした話題で笑わせてくれた。

ドラマのタイトルバックも米津玄師の声に合わせて踊るアニメーションの人たちがやがて生きた人間に変わっていく、その姿も素敵だった。

すてきな俳優たちによる寅子の物語を、これから半年間、楽しみたい。

連続テレビ小説 「虎に翼」
4月1日(月)放送開始
毎週月~土曜 午前 8時00分(総合) ※土曜は一週間を振り返ります
毎週月~金曜 午前 7時30分(BS・BSプレミアム4K)
【作】 吉田恵里香
【出演】伊藤沙莉 ほか

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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