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ハリケーン・フローレンスの被災地を訪れたトランプ氏の“無神経発言”に、米国民が唖然!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
被災者の家の庭に流されてきたというボートを見て「ナイスなボートをゲットしたね」。(写真:ロイター/アフロ)

 米国の調査機関ギャラップが、トランプ大統領の倫理観について最新の世論調査を行った。それによると、50%を超える多数の人々が、トランプ氏の倫理基準は、過去50年間の6人の大統領たちの倫理基準よりも低いと回答。また、ウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたニクソン元大統領と比べた場合でも、43%もの人々がトランプ氏の倫理基準の方が低いと答えた。

多数の人々が、トランプ氏の倫理基準はこれまでの大統領たちと比べて低いと回答。棒グラフは左から、大統領名、トランプ氏の倫理観は(左の大統領より)高いと回答した人々の割合、トランプ氏の倫理観は(左の大統領より)低いと回答した人々の割合、トランプ氏の倫理観は(左の大統領と)同じくらいと評価した人々の割合、意見なし。(出典:Gallup)
多数の人々が、トランプ氏の倫理基準はこれまでの大統領たちと比べて低いと回答。棒グラフは左から、大統領名、トランプ氏の倫理観は(左の大統領より)高いと回答した人々の割合、トランプ氏の倫理観は(左の大統領より)低いと回答した人々の割合、トランプ氏の倫理観は(左の大統領と)同じくらいと評価した人々の割合、意見なし。(出典:Gallup)

 この結果は、元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんとの不倫疑惑やロシア疑惑が問題視されていることを考えれば、当然といえる。しかし、これらの疑惑以外に、トランプ氏がこれまでとってきた言動もこの調査結果に大きな影響を与えているに違いない。

 9月19日(米国時間)に、トランプ氏がハリケーン・フローレンスで洪水の被害を大きく受けたノースカロライナ州ニューバーンを訪問した際も、彼の口から倫理観を疑うような発言が飛び出し、米国民を唖然とさせていた。

ナイスなボートをゲットしたね

 トランプ氏は同地である被災者の家を訪ね、裏庭で、大きなボートを目にした。その家のポーチはそのボートが衝突したためにひどく破壊されていた。トランプ氏が家主に聞いた。「これは君のボートかね?」。家主が「違います」と答えると、トランプ氏は笑いながらこう言ったという。

「少なくとも、君はナイスなボートをゲットしたね」

 この発言について、米国民の間から「被害に苦しんでいる被災者にかける言葉か、無神経だ」、「思いやりが全然ない」など多くの非難の声が上がっている。中には、「トランプ氏は、落ち込んでいる被災者をジョークで笑わせて慰めようとしたんだよ」という見方をする者もいるが、こんなジョークに、果たしてどれだけの人が笑えるだろうか?  

 また、その家主が「保険会社が家の損害補償金を払ってくれないんだ」と言うと、トランプ氏は「その保険会社の名前を探すよ」と約束。しかし、具体的にどうするのかまでは言及しなかったと言うから、トランプ氏のその場限りの無責任な発言だったのだろう。

 トランプ氏の能天気な発言はさらに続いた。「誰のボートだかわからないって。法律ではどうなるんだ? この家主の物になるかもしれないね」

被災者に“Have a good time!”

 トランプ氏の“無神経発言”はこれだけに留まらなかった。被災者に食べ物を手渡す際に、"Have a good time"(楽しんでね)と口にしたというのだ。

 実は、この言葉は、被災地でトランプ氏が放つ常套句になっている。昨年、ハリケーン・ハービーの被災者たちが避難しているシェルターを訪問した時や、ハリケーンの被害を受けたプエルトリコを訪問した際にも、被災者たちに"Have a good time"と言ったために、米国民の大顰蹙を買っていた。プエルトリコでは、ペーパータオルを配布する時に、バスケットボールのコートにボールを投げ入れるように、被災者たちに向かってペーパータオルを投げたため、「人間扱いされていない」という怒りの声もあがった。

 時をわきまえず、苦しんでいる人々の気持ちを逆なでするような言動。トランプ氏には共感力というものがあるのだろうか? いや、共感力の有無以前に、ただ、子供のように、心に浮かんだことを深く考えもせずにそのまま口にしてしまうのだろう。

水は濡れている

 だからか、えっ?と思わせるようなことを口にして、人々を混乱させることも少なくない。例えば、トランプ氏が、被災地を訪問する前日の9月18日に、ツイッターに投稿した、以下の動画の中のある発言も嘲笑を浴びた。

 トランプ氏は、この動画で、ハリケーン・フローレンスを描写するにあたり「水の点では、これまでで最も濡れている」と話している。おかしな描写だからか、メディアは「アメリカの大統領は、水は濡れていると説明」(エスクワィア)、「ツイッター・ユーザーは、水は濡れているという(大統領の)発見に唖然とした」(ワシントン・ポスト)と皮肉った。トランプ氏としては、ハリケーン・フローレンスの降雨量が非常に多かったことを言いたかったのだろうが、間の取り方を間違えたためか、上記のように受け取られる発言になってしまったと思われる。

 ネット上でも、「大統領、水は濡れていると教えてくれてありがとう」、「9歳の娘に“水は濡れているのか?”と聞いてみたら、“ウン”と答えたよ。“水によっては濡れているものとあまり濡れていないものがあるのか?”と聞くと、娘に“冗談言っているの?”と言われたよ」、「小学4年生レベルのスピーチ能力しかない」と揶揄する声があがった。

 トランプ氏は大統領就任前に受けたあるインタビューでこう話している。

「今までは自分のために生きてきたが、これからは国民のために生きるように変わらなければならないな」

 残念ながら、被災地での言動を見る限り、トランプ氏が変わったとは思えない。

 トランプ氏が米国民の気持ちを理解し、共感できるような大統領に変わる日が、果たして来るのだろうか?

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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