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新バットのセンバツを制したのは健大高崎! 上位進出校に共通していた甲子園で勝てる戦い方とは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
健大高崎が報徳を破って初優勝。新バット初の大会を制した戦い方とは?(筆者撮影)

 センバツは健大高崎(群馬)が報徳学園(兵庫)に3-2で勝って、甲子園初優勝を飾った。群馬勢のセンバツ制覇は初めて。新基準の低反発バットでの最初の甲子園大会は予想通り、投手優位の試合に終始した。同時に、上位に残ったチームの傾向は、新バット戦法の方向性も示している。

2年生両輪が実力通りだった健大

 健大はレベルの高い関東勢でも最強の呼び声高く、打線も大会終盤にかけて上向きで、投打の歯車がかみ合っていた。佐藤龍月(タイトル写真)と石垣元気の2年生左右両輪が実力通りの働きを見せ、捕手の箱山遥人(3年=主将)が、両者の持ち味を存分に引き出していた。攻撃面でも箱山に当たりが出始めると上位打線がつながり、準々決勝で指を負傷した佐藤を強力に援護した。また石垣は準決勝、決勝で先発の役割を果たし、青柳博文監督(51)の思惑通りの継投機で、佐藤にバトンを渡すことができた。

ディフェンス力抜群だった報徳

 準優勝の報徳は、マウンド経験豊富な間木歩(3年=主将)と今朝丸裕喜(3年)の二枚看板が真価を発揮し、バックの堅守にも支えられてディフェンス力で相手を上回った。大ヤマとみられた大阪桐蔭との準々決勝では、秋に打たれた今朝丸が別人のように力強い投球を披露し、強力打線を圧倒した。4番・齋藤佑征(3年)が要所で打点を挙げるなど、こちらも投打がうまく噛み合い、接戦での強さを発揮した。決勝も一打逆転の好機を迎えたが、相手投手を攻めきれず逃げ切られた。悔いの残る試合だったかもしれないが、報徳らしい試合の連続だったことは間違いない。

上位進出校には共通点があった

 このほか、星稜(石川)が県勢初のセンバツ4強に勝ち残ったし、甲子園未勝利だった中央学院(千葉)が一気にベスト4という大健闘を見せた。中央学院は今大会で最もチーム打率が高く、試合内容も打ち勝った印象が強い。新バット導入後、初の甲子園大会で上位に進んだチームには、ある共通点があり、これが今後の高校野球の戦い方の方向性になるのではないだろうか。

本塁打の減少を機動力でカバーした上位校

 このバットで、外野手の頭を越すのは至難の業だ。特に高いフライは大きく失速する。本塁打が金属バットになって以降、最少の3本。うち1本がランニング本塁打だったことからも明らかで、それでも1試合平均の得点が極端に減ったわけではない。上位校は、単打を積み重ね、そこに機動力を絡めて得点していた。1死(無死)3塁で内野ゴロの間に鮮やかな生還を見せた健大は、迷いのないスタートを普段から磨いている。また報徳は5試合で10盗塁、星稜は4試合で11盗塁と、相手バッテリーを揺さぶった。

徹底した守備で失点を防ぐ

 さらに、1点を失わない守備も徹底されていた。特に内野はいわゆるボテボテの当たりに備えて極端な前進守備になったり、外野手も後ろの打球に備えつつ、従来よりも前に守ったり、打者によってさまざまな守備位置をとったりしていた。失策は数で判断できない。少ないに越したことはないが、どの場面で出さないかだ。と言うより、要所でいかにしっかりと守れるかだ。報徳の大阪桐蔭戦での勝因が「守備力」だったと、観戦した人は全員が感じただろう。

2戦目以降、打者が対応し始めた

 大会での平均打率は.233で、昨年より2分3厘下がった。特に気温の低かった1回戦が低調だった印象で、初戦敗退の16校で二けた安打だったのは作新学院(栃木)だけ。打てずに負けたチームが多かった証で、大会が進み、試合を重ねて攻撃側が対応していったとも言える。4強以上のチームの打率は、全て.250を超えていた。本塁打以外の長打、つまり二塁打、三塁打の数は減っていない。外野の間を抜ける当たりは多く、甲子園のグラウンドがいかに広いかを物語る。

機動力と守備力はおろそかにできない

 以上を総括すると今後、甲子園のような広い球場では、犠打を含めた機動力と失点を防ぐ守備力はおろそかにできないという結論にたどり着く。さらに大会前に、芯に当たらないと飛ばないとされるバットへの対応で述べた、将来的な高校生の打撃技術の向上にも結び付いていく。都道府県単位でも、今大会の青森山田のように、木製バットで活躍する選手も出てくるだろう。華やかな本塁打は減っても、高校生にとっては決して後ろ向きではなく、むしろ明るい未来の扉を開く新バット元年だったのではないだろうか。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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