シリアのイドリブ県でアル=カーイダと自由シリア軍が完全統合に向けた連携を強化か?
「シリア革命」最後の牙城とされるイドリブ県の「解放区」。この地で軍事・治安権限を掌握するシリアのアル=カーイダのシャーム解放機構と、トルコの支援を受ける国民解放戦線が統合軍の結成に向けた連携を強めているとするニュースがインターネットで話題となった。
特別教練キャンプ
最初に報じたのは、米ワシントンDCでアラブ諸国の民主化を支援するための中立的な報道をめざしているというStep Newsだった。
同サイトは7月1日、複数の軍事筋から独自に得た情報だとして、国民解放戦線の司令部が、所属諸派のメンバー全員に対して、来週土曜日(7月4日)から開始される40日間の特別教練キャンプに参加する準備を行うよう告知したと伝えたのだ。
この軍事筋によると、特別教練キャンプは、イドリブ県北部のカフルタハーリーム町とハーリム市に設置されており、前者は、シャーム解放機構が、後者は国民解放戦線を傘下に置き、シリア北部のトルコ占領地で活動する国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army:TFSA)の支配下にある。
トルコが諸派の解体を指示
国民解放戦線を主導するシリア・ムスリム同胞団系の武装集団であるシャーム軍団のアブー・アリー・ジャバリーを名乗る司令官は、Step Newsに対してこう述べている。
アル=カーイダが自由シリア軍を教練
ジャバリー司令官の発言で注目すべきは、こうした動きがシャーム解放機構と連携して行われていると述べた点だ。彼は次のように続けている。
アル=カーイダを懐柔しようとするトルコ
この発言が事実だとすると、シリアのアル=カーイダが自由シリア軍を教練していることになる。ジャバリー司令官はさらに次のように述べ、トルコがシャーム解放機構を懐柔する動きを強めていると主張する。
国民解放戦線は否定
しかし、当の国民解放戦線は、ジャバリー司令官の発言内容を否定した。
国民解放戦線の公式報道官を務めるナージー・ムスタファー大尉は報道声明を出し、特別教練キャンプに関して「国民解放戦線諸派にとって通常どおり続けられている集中キャンプ」に過ぎないと述べた。
声明によると「キャンプは戦闘員の…戦闘能力を向上させ、軍事的な枢軸を再設定し、想定し得るすべての戦況に対処する訓練を受けた特殊部隊にこれを提供する準備を推し進めるためのものだ」という。
また、反体制系サイトのNedaa-syは、サイフ・アブー・ウマルを名乗る国民解放戦線広報責任者の話として、ジャバリーなる人物は実在せず、Step Newsへの情報提供者によるでっち上げだと伝えた。
シャーム解放機構と国民解放戦線は、「決戦」作戦司令室を結成し、イドリブ県の「解放区」で共闘を続けている。それゆえ、両組織が統合軍の結成に向けて連携を強めていたとしても不思議ではない。事実、こうした動きはこれまでにもたびたび報じられてきた。
だが、仮に両者の完全統合が実現すれば、それはシャーム解放機構がアル=カーイダから自由シリア軍への「変態」を完了し、ロシアとトルコが主導するイドリブ県の秩序再編の動きのなかで、生存の場を得たことを意味するだろう。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)