【語彙力】日本語教師が教える!「さっぱり」と「あっさり」似ている言葉の使い分け
お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。
7月に入り、そろそろ真夏という時期。すいかとかそうめんとか、さっぱり・あっさりとしたものが食べたくなります。
この「さっぱり」「あっさり」、実は外国人に「何が違うの?」と質問されがちな類義語です。みなさんだったら違いをどう説明しますか?すいかやそうめんだったら、「さっぱり」も「あっさり」もどちらを使ってもおかしくないですが、例えばお寿司だったらどうでしょう?「あっさり」しているとは言えるけど「さっぱり」だと少し変…?それに性格だったら?「彼はさっぱりした性格だ」「彼はあっさりした性格だ」どちらも言えるけどニュアンスが違う気がします。
今回は、上手に説明しにくい類義語「さっぱり」VS「あっさり」の違いに注目して語彙力UPしてみましょう!
「さっぱり」「あっさり」を使う場面
「さっぱり」と「あっさり」が共通して使用される場面には、大きく分けて食べ物や飲み物の味について言及するときと、人の性格や気分を表すときがあります。
味にも性格や気分にも、どちらにも共通しているのは広く「くどくない・しつこくない」という意味合いです。
味に関する「さっぱり」「あっさり」
味に関して表現するとき、「さっぱり」と「あっさり」は共通する部分とニュアンスの違う部分があります。
それぞれの言葉の意味が持つ傾向としては、大まかにこのような感じです。
【さっぱり】
さわやか、味がしつこくない、脂っぽさがない(脂を洗い流す感覚も)
【あっさり】
調味料や油が控えめで味が濃くない、淡白、味覚に刺激がない
「さっぱり」はさわやかさや、脂っぽくなさがクローズアップされ、「あっさり」は味が薄く淡白なニュアンスが強調されます。
そう考えると、わかりやすく分けてみると「さっぱり」は、酢の物や酸味のあるもの、また洗い流してくれる感覚のあるキレのあるビールを飲んだあとなどが適切な使い方と言えます。それに対し「あっさり」は、薄味のうどんなどや、体調のよくないときに食べるようなやさしいものがイメージでしょう。
冷奴やお茶漬け、すいかやきゅうりのようなみずみずしく甘味が強くない瓜系などは、「さっぱり」「あっさり」どちらでも共通して使えるグループではないでしょうか。
それに対し、例えば冒頭で話したお寿司などはどうでしょう?確かに味わいは繊細で淡白ですが、さわやかで脂っぽくないか?と言われると少し違和感がありますね。どちらを使うか選ぶなら「あっさり」を使うべきかと考えます。
また、味の濃い「こってり」に対して使われるのは、味が薄いにフォーカスした「あっさり」のほうが多いようです。「こってりラーメン」の対極では「あっさりラーメン」が使われやすい、ということになります。
性格・気分に関する「さっぱり」「あっさり」
人の性格や気分に関して「さっぱり」「あっさり」を使う場合は、おおよそ以下のようなニュアンスで使われます。
【さっぱり】
喜怒哀楽の感情を隠さないが、一時的に感情を爆発させても後々までものごと
にこだわらない。気持ちがすぐに切り替えられ、嫌なことなどをすぐに忘れる。
【あっさり】
喜怒哀楽の感情を出さず、浅く淡白。いつまでも後悔したり執着したりしない。冷静沈着で、冷淡さや物足りなさを与えることも。
「さっぱり」は付き合いやすさを感じさせ、「あっさり」は気楽な一方で少し希薄さを感じさせるようです。味でも性格でも「あっさり」のポイントは「淡白」にあるようですね。
試しに似た例文で考えてみましょう。
A:彼女は先週離婚して、さっぱりとしたようだ。
B:彼女は先週離婚したが、あっさりしたものだ。
「さっぱり」は清々しさを感じさせ、「あっさり」は心の動きがなく淡白な様子を感じさせますよね。
「さっぱり」は「無」「ゼロ」を表す意味も
また「さっぱり」は「無」を表す場合もあります。
◆汗だくになって帰ってきたが、シャワーを浴びてさっぱりした。
◆この問題は難しすぎて、さっぱりわからない。
◆商品の価格を見直したら、さっぱり売れなくなってしまった。
このような文のときはどれも「無」を表しています。「シャワーを浴びてさっぱり」は不快感がゼロになり、さわやかで清々しいという意味。「さっぱりわからない」や「さっぱり売れなくなった」は「全然」という同じくゼロのニュアンスを持っています。「さっぱり」はこの点も特徴と言えますね。
語彙力は「違い」を知ることで上がる
今回は、どちらでもいい気がしながらもやっぱり違いのある類義語「さっぱり」VS「あっさり」の解説でした。みなさんもより適切な使い方をしたいときや、子どもや外国人に質問されたときなど、さまざまな場面でお役立てください!