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NHK朝ドラ「あさが来た」”五代さまロス”に悶絶するあなたに、ディーン藤岡インタビュー

渥美志保映画ライター

NHK朝ドラ「あさが来た」で、ついに五代さまがいなくなってしまいました!ドラマを通じて大ブレイクした彼の日本でのデビュー作は、2年前に『I am ichihashi』という映画。なんと監督もやっていて、その際に、あの「週刊FRIDAY」でインタビューさせていただきました。結構ヘビーな映画なんですが、現場に行ったら映画と全く違う印象のものっすごい甘いイケメンで、編集者がすっごい困っていた(雑誌のカラーと合わなくて (^^;) )のを覚えています(笑)。今回はそちらのインタビューを転載いたします。彼の男っぽさがビンビン伝わってきますよ~。

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イギリス人女性英語教師殺害事件の犯人、市橋達也の逃亡記を映画化した『I am Ichihashi』で、監督・主演を努めるディーン藤岡は、台湾をベースに活躍する人気俳優。これまでは映画やドラマで「王子様」のような役を演じてきたイケメンだが、日本デビューを飾るのは物議を醸すこの作品になった。

「自分にリミットを作りたくないし、オファーをもらった時点で何かの縁。そうであれば見送りたくはない、来た球は打ち返す。“テレビCMが来なくなる”とか“俳優として色がつく”とか、いろいろ忠告もされました。ましてや監督として関われば、僕自身もこの一連の騒動の一部になってしまう。自分が映画化されることを、市橋はトロフィーのように思うかもしれないわけです。ならば僕はその自己陶酔に、カウンターパンチを入れてぶっ壊すつもりやろうと。それが被害者への追悼になる唯一の方法だと思って」

オファーをもらったのは市橋が逮捕され、原作となる手記が発表された直後。海外で暮らすディーンは事件についてはまったく知らず、役者として引き受けた後に情報を集め勉強したという。

「手記を読んで感じたのは、生きることに対する執着や、驚くほどの身勝手さ。それが市橋を描く上での核になりました。それ以外の部分では、例えば一度も働いたことがないとか、家でマンガを読みふけるニートのような生活を送っていたとか、様々な情報をもとに、自分なりのプロファイリングのようなことをしましたね。オファーをもらってからプロジェクトが動き出すまでの半年間は、市橋のことばかり考えていました。本当は誤って殺したのか、それとも最初から殺す気だったのか。四国でお遍路していたのは罪の意識か、それとも単なる賽銭目当てか。頭の中の市橋と対話するような感じで」

逃亡の足跡を辿って、青森県の大間や大阪の西成、沖縄にも足を運んだ。最も印象に残ったのは最長で3ヶ月も潜伏していた沖縄の無人島、オーハ島だ。

「電気もなく真っ暗で、波と風の音だけが異様に大きく聞こえる、頭がおかしくなりそうな場所なんですよ。そこで彼の張り詰めた精神状態を想像しながら過ごすうち、ヘンなものでもひきつけちゃうのか、闇の中から不思議なうなり声が聞こえるような気すらして。精神的にはそれくらいのめりこんでいました」

手記を読んで強く印象に残った部分は、すべて映画のシナリオに反映させた。手術で顔を変えていた市橋だが、糸を通した針で小鼻を小さくぬつけたり、頬のほくろをカッターで切り取ったりと、そのほとんどが自分でやったものだ。特に映画の冒頭で強烈なインパクトを残す「唇をハサミで切り取る」場面は、撮影も困難を極めたらしい。

「“捕まるか、顔を変えるか”というサバイバルのための消去法ですよね。自分なら考えられないけど、やっぱりその様子はリアルに表現しなきゃいけない。あの場面は、いろんな事情で一発で撮らなければいけなかったので、血が出るタイミングや角度や表情など、鏡の前で何度もイメージを確認しました。いざ本番では役の興奮状態に入り込みすぎて、特殊メイクの部分とその下のプロテクターのギリギリ、自分の唇を切るくらいまでえぐっちゃって。まあ監督の立場で見ると、リアルに写ってる、よくやったって思いましたが(笑)」

高校まで日本で過ごして渡米、アメリカの大学を卒業後は様々な国を渡り歩き、仕事も生活もずっと海外だった。今回の作品はようやく訪れた日本との接点で、母国のために何か意味のあることをしたいという気持ちもあったという。

「特に若い世代に見てもらいたい。あんな生き方をすれば因果応報で、ろくな死に方しないってことを描いたつもりなんで。ある意味では、自分へのリマインドでもあります。僕だって目の前の現実から逃げ続けていたら、殺人犯にはならないにしろ、今の場所にはいなかったと思う。逃げ続けた市橋が、結局は逃げ場のない檻に入ったことは、そういう象徴にも思えます」

プライベートでは昨年の12月に結婚。困難と苦労の連続だった撮影を終えて台湾に帰国して久々に恋人に会い、「そんな気は全然なかったのに」プロポーズしてしまったらしい。お相手はインドネシア人、「ジャカルタのトラ」と呼ばれる、なんかちょっと強そうな女性だ。

「普通の人ですよ(笑)。体中に刺青があり、首筋に干支の“寅”という文字が入っているので、仲間内でそう呼ぶ人がいるんです。ゆくゆくはこの女性と、と思ってはいましたよ。でもあまりに辛くて厳しい逃亡生活だったので、感極まっちゃったのかもしれない」

今後は日本で活躍する場面も多くなりそうだ。本作品の主題歌でのCDデビューに加え、実は「お笑い」にも興味があるらしい。

「日本って“お笑い”のレベルが高いじゃないですか。まだ他の国でやったことないし(笑)。快適なところばかりに閉じこもらず、チャレンジし続けて、変わり続けたいですね」

【FRIDAY 2013年11月1日号より】

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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