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東京は大雪になりにくい低気圧のコースで大雪 しばらくは路面凍結に注意

饒村曜気象予報士
宇宙から見た関東地方の積雪(円内、1月7日9時)

クリスマス寒波と年越し寒波

 令和3年(2021年)は、11月後半になると西高東低の冬型の気圧配置の日が多くなり、週間的にやや強い寒気が南下してきました。

 日最低気温が氷点下となる冬日が増え始め、11月末から12月のはじめにかけて、気温を観測している全国920地点のうち460地点以上(半分以上)が冬日となっています(図1)。

図1 今冬の冬日と真冬日の観測地点数の推移
図1 今冬の冬日と真冬日の観測地点数の推移

 12月中旬になると、強い寒気が南下するようになり、最高気温でも氷点下という真冬日を観測する地点が増え始め、クリスマス寒波では真冬日を観測した地点が全国の40パーセントを超えています。

 クリスマス寒波後、一時的に冬型の気圧配置は弱まったものの、年末には年越し寒波が南下し、真冬日を観測した地点が再び全国の40パーセントを超えています

 令和4年(2022年)は、年越し寒波の襲来でほぼ全国的に寒くなり、日本海側では雪、太平洋側では晴れ、沖縄では曇りという冬特有の天気分布で始まりました。

 その寒波が少し北へ後退した1月6日も、本州の南岸を低気圧が東進し、東京で4年ぶりに大雪警報が発表となるなど、関東南部では大雪となりました

 タイトル画像は、大雪の翌日朝の関東地方の衛星画像ですが、白く映っているのは雲ではなく、積雪です。

 この画像から、今回の大雪は、海岸沿いを除く関東南部で積雪が多かったことを示しています。

東京で大雪にならない低気圧のコース

 シベリアから強い寒気が南下してくると、日本海側を中心に大雪となり、太平洋側では晴れます。

 強い寒気が南下中は、大陸に中心を持つ大きな高気圧が日本を覆いますので、本州の南岸を低気圧が通過することはありません。

 シベリアからの寒気の南下が峠を越すと、南岸低気圧と呼ばれる低気圧が本州の南岸を通過するようになります。

 令和3年から4年(2021年から22年)も、クリスマス寒波や年越し寒波が南下しているときは南岸低気圧が通過することはなく、これらの寒波が少し弱まった1月6日に南岸低気圧が八丈島の少し南を通過しました(図2)。

図2 地上天気図(1月6日15時)
図2 地上天気図(1月6日15時)

 昔から、南岸低気圧が八丈島の真上を通る時には、関東地方で大雪の可能性が高くなるといわれてきました。

 南岸低気圧が八丈島より北を通過するときは、南から暖気が入りやすくなるため雨の可能性が高くなります。

 逆に、南岸低気圧が八丈島より南を通過するときは、北から寒気が入りやすくなるため雪の可能性が高くなりますが、低気圧から離れていることから雪の量は少なく、場合によっては降らないからです。

 1月6日の南岸低気圧は、八丈島の少し南を通過していますので、これまでの例からすれば、寒くはなるものの、大雪にはなりにくいものです。

 東京で寒くなって大雪となった理由の一つは、雪が強まってきた1月6日15時頃に、南岸低気圧渦巻の北東側、関東の陸地に近い海上で小さな渦巻が発生したことがあげられます(図3)。

図3 南岸低気圧の渦巻の北東にある小さな渦巻(1月6日15時)
図3 南岸低気圧の渦巻の北東にある小さな渦巻(1月6日15時)

 この小さな渦巻が、海上にある雪雲を東京などの上空に送り込んだのですが、この天気図に現れていない小さな渦巻の動向を予測することは、現在の予報技術では難しく、「小さな渦巻や風の収束ができることで大雪の可能性がある」というのが精一杯です。

 気温が低い時の大雪の特徴として、電線や樹木へ着雪しにくいこと、踏み固められた路面にはすぐに凍ってアイスバーンができるというものがあります。

 1月6日の大雪は、気温が低い状態での大雪で、すぐにアイスバーンができ、車のスリップ事故や歩行者の転倒事故が相次いでいます。

 そして、1月7日の朝も夜の冷え込みによって強化されたアイスバーンによって、車のスリップ事故や歩行者の転倒事故が相次いでいます。

 首都圏では大雪で1300人以上が負傷し、ノーマルタイヤで走行不能となった車が多数でているとの報道もありました。

 同じ大雪と言っても、日本海側の大雪に比べれば、太平洋側の大雪と呼ばれているものは量が少ないのですが、雪に対する備えがないために大きな影響がでます。

 今回の南岸低気圧は、多くの年の南岸低気圧のように、暖気を持ち込んでいませんので、気温はなかなか上がらないという特徴もあります。

 1月7日の日中は、日射によって積雪が減っていますが、日陰などでは消え残っている所もあり、地面が完全に乾いてはいません。

 1月8日の朝も、夜の冷え込みによって、車のスリップ事故や歩行者の転倒事故が起きやすい状態は続いています。

 三連休にサマータイヤのまま積雪・凍結道路を走行するのは非常に危険で論外です。

 路面が凍結していると考え、スタッドレスタイヤの車に乗り、「急発進」「急加速」「急ハンドル」「急ブレーキ」をできる限り避けて運転し、「スリップさせない運転」を心がけて走行してください。

 また、転倒防止のため、「小さな歩幅で」「靴の裏全体をつけて」「余裕をもって」歩くことが大事です。

成人の日も南岸低気圧

 三連休の最終日の成人の日、1月10日(月)の関東南部には低気圧が近づきます。

 このため、関東南部では一部で雨や雪の降る可能性があります(図4)。

図4 成人の日(1月10日)の天気予報(数字は下が降水確率、右上が最高気温、右下が最低気温)
図4 成人の日(1月10日)の天気予報(数字は下が降水確率、右上が最高気温、右下が最低気温)

 この低気圧の進路や発達度合いによっては太平洋側で再び広く雪となる可能性がありますが、1月6日の大雪の時より気温が高い予想ですので、雪ではなく雨になるかもしれません。

 最新の予報をこまめに確認し、雪の場合は、早めに備えをお願いします。

タイトル画像、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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