なぜ燃やす?2兆円超、8割が水の生ごみも 焼却ごみ量・焼却炉数ともに世界一の日本
2021年3月30日、環境省は、令和元年度の全国の一般廃棄物の排出及び処理状況の調査結果を発表した。毎年3月末に発表される、一般のごみ処理にかかった費用やごみ量、ごみ焼却施設の状況である。
一般のごみ処理にかかる税金は2兆円超
令和元年度のごみ処理事業経費は2兆885億円。前年度の2兆910億円より若干減っているが、それでも、貴重な税金と思えば大金であることに変わりはない。
焼却施設の数は世界一
日本は、ごみ=焼却処分 という考え方がある。2008年のOECDのデータによれば、世界の焼却炉のうち、半分以上が日本にある。
今回、環境省が発表したデータによれば、ごみ焼却施設の数は、1,067施設。2008年当時から減ってはいるが、それでも、まだ1,000を超えており、他の高所得国と比べても桁違いに多い。
燃やすごみ量も世界一の日本
焼却施設の数だけでなく、燃やして処理するごみの量も、日本は世界で最も多い。2017年のOECDのデータによれば、アメリカの値を超え、3,500万トン近くになっている。
なぜごみを燃やして処分するのか?
なぜ、日本はごみを燃やして処分するのだろうか。
神奈川県横浜市が制作した、ごみ焼却工場の紹介動画によれば、ごみを燃やす理由の2つの理由として
- 悪臭や病気などを防ぐ衛生のため
- 最終処分場を長く使うため(燃やすと体積が40分の1に減る)
としている(下記動画、1分20秒より)。
この動画の説明によれば、1960年代、人口増加や高度経済成長により、ごみ量が爆発的に増え、ごみ問題が社会問題化した。1970年代から1980年代にかけてごみ焼却場の整備が進み、すべてのごみを焼却処分するようになったという(注:「1970年代から1980年代」は、横浜市制作動画の1分12秒での表現による。実際には、1960年代から1970年代に既に焼却施設の整備は整っていたという主張もある)。
生ごみの80%は水分、水を燃やすようなもの
『生ごみは可燃ごみか』の著者、福渡和子氏は、生ごみの重量中、80〜90%が水分を占めており、「生ごみを燃やすのは水を燃やすのに等しい」と指摘している。
多くの自治体で「燃えるごみ」「燃やすごみ」と呼んでいるごみのうち、40%前後が生ごみである。京都市のデータ(平成30年度)では、38.3%が生ごみとなっている。80%が水分の生ごみである。
生ごみの50%近くが手つかず食品
京都市のデータ(平成29年度)では、生ごみのうち、45.6%が「手つかず食品」となっている。つまり、食べられるのに食べていない、食品ロスである。
京都市は20年かけてごみを半減
京都市は、人口140万人の大都市で、年に修学旅行生が110万人訪れる観光都市である。必然的にごみは増えるし、全国の観光都市では、周囲の自治体と比べてごみの排出量が一桁多い土地もある。
だが、京都市は、2000年に82万トンだったごみ量を、20年かけて41万トンまで半減した。
この達成には、京都市や京都大学をはじめとした、全ての事業者や市民の協力があった。拙著『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)にも9ページ割いて京都市の取り組みを詳しく書いた。
全国ごみ少ないランキング自治体
今回、環境省が発表した、リデュースの取り組み上位の自治体のうち、人口50万人以上の部門で京都市はランクインしている。
このランキングは、他に、人口10万人未満と人口10万から50万人未満の区分がある。
上位に入っている自治体のうち、いくつかの市町村の詳しい取り組みは、山谷修作氏の著書『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』(丸善出版)にも書かれている。
福岡県柳川市は「燃やすしかないごみ」に名称変更
2020年秋、福岡県柳川市は、可燃ごみを「燃やすしかないごみ」に名称変更した。とことんまで分別し、もう燃やすしかないところまで分別して減量を図るのが目的である。
環境先進国の取り組みや、焼却ごみ量・焼却炉数の各国比較を見ると、日本はもっと燃やすごみを減らせると期待している。そのためには食品ロスを減らすことが大きな役割を果たすはずだ。
参考資料
一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について(環境省 2021年3月30日発表)
東京ドーム115杯分!全国ごみ少ないランキング発表 新型コロナで生ごみ増 減らすための10ポイント(井出留美、2020.4.6)
あなたの住む街はランキングに入ってる?環境省が最新(H29年)ごみ排出量発表、八王子市の優れた取組み(井出留美、2019.3.29)
愛媛県松山市が全国1位!1人1日当たりごみ排出量全国最少 10年連続1位達成ならずの昨年から返り咲き(井出留美、2018.4.4)
旧指定ごみ袋は4月から使用できません(2021年4月からは新指定ごみ袋で出してください)(福岡県柳川市)
『生ごみは可燃ごみか』福渡和子著、幻冬舎ルネッサンス新書
『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』山谷修作著、丸善出版