グローバル化を日本が目指すなら、受験条件の緩和にとどまらず、もっと本気になるべきだ
公立高校における外国人生徒の実態を示す公表データは少ない、のだそうだ。さかんにグローバル化を唱え、外国人労働者を国内に入れようとしているにもかかわらず、教育面での外国人への対応は冷たいのが日本の実態のようだ。外国人に期待しているのは労働力だけ、というのがグローバル化の本音だったりもするのだろうか。
ともかく、日本にやってくる外国人は増えている。あらゆるところで外国人が働いているし、彼ら抜きには日本経済はすでにまわらない状況になっているのかもしれない。
在留外国人の増加とともに、「外国にルーツのある子ども」の数も増えている。家族とともに来日するケースも多くなっているからだ。さらに両親の在日期間が長く、日本で生まれた子も増えている。
そうした子どもたちにとって最大の問題となっているのが日本語である。親の仕事で来日することになった子は当然だが、日本で生まれた子も家庭では母国語での生活になるために日本語の能力という点ではじゅうぶんとはいえないのが現実のようだ。
日本学術会議の地域研究委員会多文化共生分科会が8月11日に、外国人の児童生徒に対する支援の拡充を求めた文科省への政策提言を公表している。それによれば、外国人生徒の高校進学率は2018年でも6割台にとどまっているという。前述のように実態を示す公表データが少ないため、この数字も多文化共生分科会による「推計」にすぎない。
それにしても、日本全体の高校進学率の全国平均が98.8%なのにくらべれば、かなり低い。そこには経済的な問題もあるし、先述した日本語の問題が大きい。
今回の提言は、外国人生徒の高校進学率を高める内容もふくまれている。高校入試における特別枠・特別措置の拡大、多言語運用能力を評価する学力検査の実行、「来日後3年以内」といった受験資格の緩和などを提言している。
しかし、受験条件を緩和しただけでは問題が解決することにはならない。多文化共生分科会の推計では、日本語教育が必要な生徒の公立高校の中退率は9.61%と、全国の公立高校生の中退率(1.27%)にくらべて大幅に高い。
中退はしていなくても、「外国にルーツのある子ども」のどれくらいが公立高校の生活に満足しているかどうかも疑わしい。学力の問題で、いわゆる「底辺校」への進学を余儀なくされてしまう例も珍しくないからだ。
多文化共生分科会は、高校進学後も外国人生徒が孤立感を抱かずにすむ「居場所」の確保や、外国人生徒の悩みや問題の解消に努める「多文化共生コーディネータ」や「多文化共生担当教員」の創設なども提言している。必要な内容ではあるが、どれも対症療法という印象でしかない。
問題は、じゅうぶんな日本語能力を身につける機会がなく、それによる学力の遅れをサポートする体制が整っていないことである。日本語での学力に劣るのは個人の努力が足りないからだという自己責任にしてしまっていることである。
グローバル化を口にし、外国人労働者を積極的に受け入れていくのであれば、「外国にルーツのある子ども」に対する教育サポート体制を早急に整えなければならない。ボランティアに頼るような現状で口を濁すのではなく、グローバル化を目指す国として恥ずかしくない予算を割いて取り組むことである。