なぜバルサはシャビの“続投”が決まったのか?カンテラーノの台頭…厳しい財政と補強の事情。
指揮官続投、という流れができている。
バルセロナはシャビ・エルナンデス監督が今季限りでの退任を明言していた。だが、ここにきてプランに変更がなされ、2025年夏までの契約が全うされる運びとなっている。
「質問を受ける前に、私から言いたい。6月30日以降、私がバルセロナの監督として続けることはない。会長やフロントの人たちと話し合って、そういう決断を下した」
「この状況で、クラブは変化を必要としている。一人のクレ(バルセロナファン)として、このように続けていくのは容認できない。我々は非常に負荷が懸かる中でプレーしてきた。この決断で、選手、スタッフたちは解放されるだろう。私がクラブを去ることがベストだと思った」
これは1月27日のビジャレアル戦後(3−5)のシャビ監督の言葉だ。
■退任宣言から一転
シャビ監督の“退任宣言”を経て、バルセロナは調子を取り戻した。以降、13試合で10勝3分け。シーズン終盤、連勝街道に乗っていた。
しかしながらチャンピオンズリーグ準々決勝セカンドレグでパリ・サンジェルマンに1−4、リーガエスパニョーラ第32節でレアル・マドリーに2−3と敗れ、今季のタイトル獲得が難しくなった。
シャビ監督が続投に傾いた理由は、2つだろう。ひとつ目は、選手たちからの信頼が厚かったこと。ふたつ目は、フロント陣からの支持があったことだ。
いや、もうひとつ、理由がある。クラブの財政だ。
切実な問題として、バルセロナの財政は厳しい。また、現在のマーケットの情況がある。
ハンジ・フリック監督(フリー)、ラファエル・マルケス監督(バルセロナB)といった監督を呼ぶ分には、それほど資金は必要ない。
だがロベルト・デ・ゼルビ監督(ブライトン)、チアゴ・モッタ監督(ボローニャ)ルイス・エンリケ監督(パリ・サンジェルマン)、アンドニ・イラオラ監督(ボーンマス)らを考えた時、お金が必要になる。例えば、デ・ゼルビ監督は2026年夏までブライトンと契約を残しており、契約解除金は1500万ユーロ(約24億円)に設定されている。
■補強の問題
一方、バルセロナがシャビ監督を続投させるとして、次は補強の問題が生じる。前述の通り、財政は厳しいのだ。
現にこの夏、バルセロナはシャビ監督の要望を叶えられなかった。ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、フアン・フォイト(ビジャレアル)、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ)、ジョシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)といった選手の到着はなかった。
代わりに、オリオル・ロメウ、イニゴ・マルティネス、ジョアン・カンセロ、ジョアン・フェリックス、イルカイ・ギュンドアンが加入した。このうち、主力級の選手になり、シーズンを通じて安定したパフォーマンスを見せたのはギュンドアンだけである。
■カンテラーノとプロジェクトの続行
塾考すれば、バルセロナが来季に向けて大型補強を行う可能性は低いと分かる。ただ、それを含めて、クラブはシャビ監督に“賭ける”と決めた。
シャビ監督の下、バルセロナはカンテラーノが台頭してきている。ラミン・ヤマル、フェルミン・ロペス、パウ・クバルシはすでにチームの中核を担う存在になり始めている。
彼らだけではない。エクトル・フォルト、マルク・ベルナウ、アンドレス・クエンカ、ギジェ・フェルナンデス、マルク・ギウ…。ヤング・プレーヤーが、虎視淡々とチャンスを窺っている。
ラ・マシア(バルセロナの育成寮)にベットするーー。そのプロジェクトの中心に、シャビ監督を据えたいというのがクラブの本音だった。
「シャビは我々のプロジェクトに希望を抱いている。その希望が、彼を続投に向かわせた。私は常にバルサのモデルを守りたいと考えている。この監督を信じることが、未来の結果につながると思った」と語るのはラファ・ジュステ副会長だ。
「デコ(スポーツディレクター)は100%、シャビを信じている。今シーズンが悪いものだったかという質問には、どの角度から検証するかによると答えたい。確かに、我々はタイトルを獲得できなかった。だがクレに希望を抱かせることには成功したと思う」
この5年で、バルセロナは3つのタイトルを獲得した。リーガ、コパ・デル・レイ、スペイン・スーパー杯のタイトルだ。
最後にチャンピオンズリーグで優勝したのは、2014−15シーズンだ。折しも、その頃、キャプテンを務めていたのがシャビだった。
個人的には、シャビの続投を支持していない。シャビは、よくやった。だが彼は役目を終えたという気がしている。とはいえ、これはクラブの決断だ。テンポラーダ・エン・ブランコ(無冠のシーズン)を経て、バルセロナにどのような変化が生じるのか、注目したい。