「40代が薄い」と嘆く社会に未来はない
先日、旭化成トップの「2000年前後に採用数を抑えたため40代前半の層が薄く困っている」というインタビューが話題となりました。
【参考リンク】「40代前半の層が薄い」人手不足に危機感 旭化成社長
採用数を抑えたのだからそうなるのは当然だろうと多くの氷河期世代の指摘を集めたわけですが、同時にこんな疑問を持った人も多かったはず。
「氷河期世代を中途採用すればいい」
「採用数の少ない氷河期世代は出世しやすいのでは?」
「40代じゃなく大勢いるバブル世代を使えばいい」
日本企業が氷河期世代の少なさに悩む背景を紐解いていくと、日本企業が抱え込む様々な課題が浮かび上がってきます。
40代が少ないと困るわけ
一般的な日本企業の人事制度は、年功序列に基づいてデザインされています。何歳でこれこれの経験を積んでいき、勤続年数に相応しい人材に成長するという考えで、大企業のイメージする「あるべき40代前半の人材像」というのはだいたいこんなものです。
MARCH以上の大卒でポテンシャルがあり、20代のうちに泥臭い現場を3か所くらいローテして会社のイロハを吸収済み。そこで一定の成果を上げ30代になってから東京本社に異動、付加価値の高いプロジェクトに参加して成果を上げ、数年間の海外赴任後に30代後半で課長昇格。常に査定成績で同期の上位2割内に位置し、現在42歳で部長昇格待ち。
というわけで、残念ながら2000年くらいに希望するような大企業に行けなかった人はかなり厳しいです。ずっと非正規雇用でやってきた人はまず無理です。同業同規模の正社員だったとしても、ヒラでくすぶっている人は絶対無いとは言えませんけどやはり厳しいと思います。なぜか?彼らはみんな「あるべき40代前半の人材」ではないからです。もちろん、ヒラで滞留しているバブル世代も「あるべき40代前半の人材」ではなかったわけだから対象外です。
数が少ないのに必ずしも出世できていない理由は、やはり世代内で上位2割といった具合にセレクションが行われるためですね。100人採って30人が部課長に昇格する会社があったとすると、氷河期に30人採った中で部課長に昇格できるのはせいぜい十数人でしょう。他社で「あるべき人材像」に育成された数少ない人材を中途で採ろうとしても、なかなか思うようには採れないでしょう。
筆者自身は10年以上前から「卒業した年度で人生が大きく左右される新卒一括採用+終身雇用制度は、個人にとっても組織にとってもデメリットが大きく後で必ず問題化する」と主張し続けてきましたが、それが現実化してしまった形です。
実はこの問題の陰にはもう一つの大きな問題が隠れています。「使いものになる40代前半の管理職が少ない」ということは、裏を返せば「使えない40代前半以降のヒラ社員はそれなりにいる」ということでもあります。バブル世代を筆頭に(採用数が少ないから目立たないものの)氷河期世代にもいます。そして今の20代30代の中にもこのまま行けば半数くらいは誕生するでしょう。彼らのモチベーションをどう維持していくのか。それには年功賃金を廃し、ポストではなく担当する職務で処遇を決める流動的な人事制度に切り替えるしかありません。
「しっかり正社員としての職歴を積んだ40代が足りない」と言われても、多くの人は諦めてうつむくしかありませんが、「〇〇が出来る人材が足りない」と言われたら、きっと努力して手を上げようとする人が大勢現れることでしょう。それこそが今の日本にもっとも必要な成長戦略だというのが筆者のスタンスです。